年上とのキス・1

2013.09.18(23:21)

 小学生も高学年になっていくにつれ、体がどんどん変化していく。
 まだ一年や二年の頃は男か女か分からなかったクラスメート達は、五年にもなるとだんだん男女の区別がついていく。
 そうなると保健の授業も別々になり、オレ達は担任の女の先生からではなく、他のクラスの男の先生から教えてもらうことになる。
 クラスメート達は男と女の体の違いに、ざわざわするけれど…オレは冷めていた。
 今でも時々父さんや母さんと風呂に入るし、別に女の体に今更興奮するってこともなかった。
 けれど友達はそうじゃない。
 どんどん恋愛感情も育っていって、今では友達と遊ぶよりも恋人と遊ぶヤツもいるぐらいだ。
 そして取り残されたオレはと言うと…。
「従兄と遊んでいるなんて…寂しいよな」
「それ、本人を前にして言うことじゃないと思うよ?」
 と従兄は言うけれど、顔では苦笑している。
 従兄は大学三年生で、教師を目指しているらしい。
 父さんの妹の一人息子で、家が近所にある。
 そのせいかオレが赤ん坊の時から、よく面倒を見てくれていた。
 今もオレの部屋で、一緒にテレビゲームをしてくれる。
 なのでふと、聞いてみたくなった。
「なあ、他の友達と遊んだり、恋人とか作ったりしないのか?」
 オレに尋ねられた従兄は、これまた複雑そうな表情を浮かべる。
「う~ん…。俺って結構、人見知りなんだよね。だからキミといた方が楽なんだ」
 …そうだろうか?
 従兄はとても外面が良いことを、オレは知っている。
 何度も一緒に外に遊びに行ったりしたけれど、しょっちゅう女に声をかけられたり、男友達にも声をかけられていた。
 まあ多少…腹黒そうだけど、話しやすいタイプだ。
「キミこそどうなの? 好きなコとかできた?」
「うんにゃ。めんどい。今は遊んでいた方が楽」
 けれど友達は恋人と何かしら記念日とかあると、喜んで準備をする。
 …将来もああなんだろうと思うと、今はまだ恋人はいらないと思う。
「誰かと付き合うことで、生活ペース乱したくないんだよね。気を使うのもイヤだし」
「あっ、俺も俺も。やっぱり血の繋がった従兄弟だね。考え方が似ている」
 でもオレは無愛想だし、人付き合いも細かくする方じゃない。
 別に友達がいないわけじゃないけれど、この従兄に比べれば、な。
 けれどこの従兄、かなり顔立ちが良い。
 それこそ芸能界やモデル事務所に何度もスカウトされたり、逆ナンされるぐらいに。
 でもいっつも断っては、ずっとオレの側にいる。
「…なあ、女と付き合ったことあるの?」
 だからつい、そんな質問をしてしまった。
 従兄は一瞬きょとんとした後、意味ありげに笑う。
「気になる?」
 …この言い方だと、少なくとも大人の付き合いの経験はあるんだな。
 オレは何となく面白く無くて、つい従兄から背を向けてしまう。
「別に。いい歳して、何の経験もないと言ったら笑ってやろうかと思ってた」
「ん~。まあ確かにちゃんとした恋人はいないけどさ、好きなコはいるよ」
 …これまた初耳だ。
「へえ…。ならそのコに告白したのか?」
「言って嫌がられたらダメージ大きいから、言わない」
 肩越しに見た従兄の表情は、笑いながらもどこか苦しそう。
 人を愛するって辛いって言うけれど…従兄もそうなんだな。
 オレにはまだ分からない感情だ。
「でもお前に言われたら、大抵の女ならOKじゃね?」
「んんっ~。でもどうだろうね?」
 …そんなに難しい相手なのか?
 ハッ! もしかして、相手にはすでに恋人がいるとか?
 それならかなり難しいな…。
「あっ相手に恋人がいたりとか?」
「いや、そういうのはいないみたい」
 なら簡単だと思うけどなあ。
「オレにはよく分からないけどさ、『愛する』ってどんな感情なんだ? 友情をもっと強くしたようなもん?」
「うっう~ん。…コレばっかりは難し過ぎて、答えられないかも」
 今度は本当に困ってしまった。
「よくマンガとかで見るとさ、その…キスしたくなったら好きだとか言うよな?」
「ああ、それはあるかも。ボクも好きなコを前にすると、キスしたくなるし」
「ふぅん…」
 やっぱりオレにはよく分からない。
 普通に触るぐらいならば、別に男女気にせずだけど。
 誰かにずっと触りたいとか、キスしたいとか、あんまり思わないしなぁ。
「んっ…?」
 そんなことをぼ~っと考えていると、不意に従兄の顔が近付いていたことに気付く。
「…何?」
「キス、したい」
「へっ?」
 眼を丸くした瞬間、従兄の唇がオレの唇に触れていた。
 たった一瞬のことだけど、唇にはキスの感触がしっかり残った。
「なっ何するんだよ!」
 思わず枕を掴み、従兄に向かって投げつける。
「ごっゴメン…。何かやっぱり、近くにいるとガマンできなくなるみたい」
「キスは好きなヤツとするもんだろう!」
「うん、だからしたくなった」
 体に当たった枕を両手で掴みながら、従兄が照れて言った言葉が理解できず、オレは首を傾げる。
「…はっ?」
「うん、だから俺はキミが好きなんだ。生まれてからずっと見てきたせいか、何かキミ以外の人間に興味が持てなくて」
 いやっ、その言葉は怖いっ!
 鳥肌が体中に起こったぞ!
「だけどホラ、男同士だし俺は十も年上だし、言ったら気持ち悪がられるのもイヤだから…」
 …何やらブツブツ言っているが、それは顔を赤くしながら語ることなんだろうか?
「お前…小学生の男が好きなのか?」
「ちっ違うよ! 確かに教師を目指しているけれど、キミ以外は本当に子供としか思えないから」
 その言葉も怖いっ!
「…それでどうかな?」
「なっ何がだよ?」
「キス…してイヤだった? 俺のこと、嫌いになった?」
 …ああ、そんなことを言ってたな。
「突然のことで驚いて…何が何だか分からない」
 だからオレは正直に答える。
「じっじゃあもう一回して良い?」
 ぐっ…!
 表情を輝かせるなよ。
 オレが影る。
 でもまあ…イヤとかではなかったな。
「…別に良いけど」
 そう言ってオレは従兄に近付き、膝の上に乗る。
 そしてどちらかともなく、キスをした。
「…うん、やっぱりイヤではないな」
「もっとしたいと思う?」
 それは小学生に聞くことじゃないだろう。
 何だかオレの方が妙に冷静になっているな。
「…つうか、オレはめんどくさいのイヤだからな」
「恋人付き合いのこと? 別に今のままでも充分俺は幸せだよ」
「それならまあ、良いけど」
 今のままゆっくりまったり過ごすことが、オレと従兄の恋人としてのあり方ならば、悪くはない。
「ふふっ、嬉しいな。これからはキスしたいと思ったら、できるんだもの」
「いっいやっ! せめて二人っきりの時でな!」
「そうだね。人に見せるなんて、勿体無いしね」
 満面の笑顔で再びオレにキスしてくる従兄。
 …やっぱり恋人付き合いって、難しい。

<終わり>
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