甘々なキス・1

2013.08.29(17:40)

「遅いぞ!」
「あっああ、ゴメン」
 …って、オレ、何で謝ってんだ?
 家を出たのはいつもの時間。
 なのにアイツは家の前で、本を読んで待っていた。
「…ちなみにいつから待ってた?」
「十分ぐらい前だ。待ち合わせはそのぐらい早目に来た方が良いんだろう?」
「えっ? いつ待ち合わせしてたっけ?」
 そう言うと、アイツの顔が真っ赤に染まった。
「いつだっていいだろう! それより行くぞ! 学校に遅れる!」
 叫ぶなり、オレの手を掴んで早足で歩き出す。
 …ヤレヤレ。今日も一日がはじまる。
 手をつないだまま、高校に到着。
 そのまま教室のある三階まで、連行されるカタチで連れてかれる。
「…じゃあ、後でな」
「ああ、うん」
 微妙な空気で、手を離される。
 オレとアイツは別のクラス…と言っても、隣だけど。
 朝別れると、次は昼休みまで会えない。
 そのことをアイツは悲しく思っているらしい。
 でもオレは…まあオレも寂しいケドさ。
 教室に入って、自分の席に座ると、深くため息をつく。
 …どうしてこうなったのか、振り返ること1週間前のことだ。


「好き…なんだ!」
「…はい?」
 放課後、いきなりアイツに呼び止められ、屋上へ行き、第一発声が告白の言葉だった。
「えっえっとぉ…。友達としての?」
「恋愛感情として、だ」
 顔を真っ赤にして、怒りながらの告白って…。
 そもそもアイツとは、あんまり接点がなかった。
 高校二年の今は、同じ図書委員。
 一年の頃は、オレがコンビニでバイトをしてた時に、常連として来ていた。
 だから顔見知りではあったし、話も少しはしてた。
 でも…惚れられる理由が分からない。
「あの…さ、オレのどこが良いの?」
 だから思いきって、聞いてみた。
「フツーのところ」
「…はい?」
「だから、普通のところが良いって言っている!」
 …普通って、褒め言葉だっけ?
 でもコイツから『普通』という言葉を聞くと、確かに別の意味に聞こえる。
 学校で有名な美少年だから。
 それでいて、とても気が強いから。
 ヘンなヤツにからまれたとしても、自分1人で解決できる強さを持つらしい。
 男女共々人気があるコイツが、『普通』のオレを好きになる。
 まあそういうことだってあるだろう。
「…で、どうだ? ボクとこっ恋人にならないか?」
「あっああ、そうだな」
 頭をかきながら、改めてコイツを見る。
 確かにキレイな顔をしているし、この性格もキライじゃない。
 付き合えば、いろんな一面を見れて、好きになるだろう。
 …って、オレ、付き合う性別を最初に考えるべきじゃないのか?
 ああ、でもそんなの関係ないのか。
 一目惚れって、そういうモンだろう?
 コイツを一目見た時から、何となく気にはなってたし…。
 改めて今、惚れ直したって、一目惚れって言えるよな?
「…じゃ、これからよろしくな」
 オレは笑って、手を差し出した。
「えっ…。いいのか?」
「ああ、オレは一目惚れだし」
 そう言うと、ボロボロ泣き出してしまった。
「わっ! おっ驚いたか?」
「嬉しいっ…!」
 泣いてオレの胸に飛び込んできた。
 だからオレは頭を撫でながら、ぎゅっと抱き締めた。
 しばらく泣いていたけれど、ゆっくりと顔を上げて、オレの顔をじっと見てきた。
 オレはアイツの赤い唇に、キスをした。
 涙に濡れて、少ししょっぱかったけれど、ぬくもりと気持ちが伝わってきた。
 唇を離した後も何だか嬉しくって、ハンカチでアイツの顔を拭きながらも、笑っていた。
 ああ…オレはコイツのことを、大好きなんだって、自覚した時だった。


 …今思い出せば、何ちゅー恥ずかしいことをっ!
 でも後悔はしていない。
 アイツのことは、一緒にいるたびに好きになっていく。
 何よりオレを本気で好きでいてくれることが嬉しくって…。
 …でもちょっと、抑えるべきか?
 周囲の視線を、最近痛く感じるようになった。
 皆はほとんど黙認しているけれど、本心としては、何でアイツがオレなんかを選んだのか、不思議でしょうがないだろう。
 オレだって、未だに不思議だ。
 だけどアイツがオレを好きって言うのは本気だし、そのことを他人にどうこう言われたって、別れるつもりは無かった。
 ―オレも本気になったから。
 絶対に諦めないし、別れたりしない。
 昼休みになると、アイツはすぐにオレのクラスに来る。
 だからオレは弁当を持って、すぐに教室から出る。
「今日も屋上?」
「ああ、あそこが1番人気が少ないし…」
 …意味ありげなことを、真昼間から言わないでくれ。
「じゃ、行くぞ」
 そう言うと、またオレの手を握って歩き出す。
 こんなことしなくても、オレはお前の側にいるのに。
 そう思うけれど、あえてオレは言わない。
 手をつなぐことを、嬉しく思っているから。
 でもコレはナイショ。
 言うと顔を真っ赤にして、怒鳴られそうだから。
 途中でお茶を自販機で買って、屋上へ行った。
 青空の下、屋上には人気が少なかった。
 そのまま裏の方に回り、二人で食事をする。
 2人っきりでいる時、ほとんど会話はない。
 家に帰って寝る前に、電話で話をする時ぐらいしか、コイツはしゃべらない。
 理由は本人が目の前にいると、緊張するからだそうだ。
 …まあまだ1週間だしな。
「なあ、今度の休みなんだけど…」
「うん」
「ゆっ遊園地にでも行くか?」
 男2人で遊園地か…。
 行くと逆ナンされそうだな。…主にコイツが。
「遊園地かぁ」
「ほっ他に行きたい場所があるなら、そこでも良いぞ? ボクはお前の行きたい所なら、どこだって良いし…」
 と言われましても。オレが良く行く場所はゲーセンとかボーリング。
 あんまりコイツのイメージに合わない。
「あっ、行って見たい場所があった」
「どこだ?」
 オレはアイツを見て、にっこり笑った。
「お前の部屋」
「えっ!?」
「次の休みはお前の部屋に行く。決定な!」
 そう宣言すると、アイツの膝の上に頭を乗せた。
「おっおい! 何を勝手に!」
「良いじゃん。どうせいつかは行くんだし、な?」
 オレは戸惑い顔のアイツの頬を撫でた。
「まったく…。しょーがないヤツだな」
「そのしょーがないヤツに惚れたお前が悪い」
 オレは手をアイツの後頭部に回して、引き寄せて、唇にキスをした。
 間近で見るアイツの微笑んでいる笑顔が、とてもキレイだった。


<終わり>
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