お蔵入りになったOP・1

2013.01.26(11:22)

 すでに辞めましたが、宵闇幻影奇譚でお蔵入りになったOPを掲載していきたいと思います。
 まあ何となーく、ただ闇に葬るだけでは勿体無いと思っただけなので、別に他意は全くござません。ええ、ありませんとも(目線そらし)。


タイガ警備保障心霊対策課

※このストーリーは【宵闇の者と業魂を救い出せ!】と【業魔を生み出す儀式を止めろ!】の続編となりますが、単品でもあります。


●奪われた魂命石
「イアーーーッ! 返してっ、返してよっ!」
 夜の入江地区で、若い女性の悲鳴が響き渡る。
 女性は少し離れた場所にいる黒いゴスロリ服を着ている少女に、厳しい声と視線を向けた。
 少女の白い髪は巻き毛で腰まで伸びており、黒く大きな眼は楽しそうに細められている。顔にはゴシックメイクがされており、十代に見える少女からは普通の人間ではない空気が漂っていた。
 その少女の手には、子供の拳ほどの大きさの青い石がある。
「業魂の魂命石を奪って、あなたは何をしようというの!」
 女性が必死になって叫ぶも、少女の視線は手の中の石に向いていた。美しい顔にぞっとするような、冷たい笑みを浮かべる少女はクスクスと笑う。
「別にぃ。アタシはただ、綺麗な物が好きなだ~け。だから魂命石って好きなのよぉ。まさに命がある石って感じの美しさがあるでしょう?」
 そう言って月の光に魂命石をかざす。しかしその石も手も、業魂の血にまみれていた。
「ああ、安心して。別に壊すつもりはないから。大事に大切にしてあげるわ」
「あなた…まさか人型業魔なの?」
 女性は少女と出会った時の事を思い出す。
 タイガ警備保障心霊対策課で働く宵闇の者である女性と業魂の少年は、見回りの為に入江地区に訪れていた。
 しかし少女に呼び止められて振り返った途端、少女は少年に襲いかかり、無理やり腹にあった魂命石を手でえぐり取ったのだ。少年の体はそのまま霧散してしまった為、女性は悲鳴を上げた。
 魂命石は業魂にとって、脳とも心臓とも言える。破壊されれば業魂は消滅してしまうので、女性は気が気じゃない。
「ふふっ、タイガも大したことないのねぇ。でもおかげで狩りが楽にできるわ。じゃあね」
 少女は手に持っていた傘を開いた。するとスゥッと浮かび上がり、そのまま空を飛んで行った。
「どっどうしようどうしよう…! 助けてっ…!」
 女性は戸惑いながらも携帯電話を取り出し、会社へ連絡する。


●私立タイガ病院 ロビー
「どういうことだっ! 魂命石を奪われるなんて!」
 深夜にも関わらず、大河アカリは誰もいない病院のロビーで芹沢千雨を怒鳴りつけた。
 女性は千雨に連絡を入れた後、意識を失い、駆け付けた千雨が救急車を呼んでここまで運ばせたのだ。そしてアカリに連絡を入れると、すぐにやって来てくれた。
「落ち着いてください、アカリさん。ここは病院です」
「あっ…、すまない。頭に血が上っていた…」
「お気持ちは分かりますから、とりあえず座りましょう。ああ、飲み物を買ってきますよ」
 千雨は自動販売機へ向かい、アカリは大河ヒナに支えられながらイスに座って大きく息を吐く。
「どうぞ」
 戻って来た千雨は、二人に紅茶が入った紙コップを差し出す。
「ありがとう」
 アカリはお礼を言って受け取り、ヒナも頭を下げて受け取った。
 千雨はアカリの隣のイスに座り、手に持っていた報告書を読み上げる。
「すでに今夜だけでも三件連続して起こっています。一件目は私が現場へと向かいましたが、その後立て続けに二件起こっています。宵闇の者には何もしませんが、突然業魂に襲いかかり、魂命石を奪って逃げている者がいます。どうやら人型業魔の仕業らしいです」
「人型業魔…と言うと、まさかあの連中か?」
 アカリの頭の中に、かつて宵闇の者と業魂を誘拐された事件、そして人型業魔を生み出そうとした儀式の事件が浮かんだ。
 だが千雨は困惑気味な表情をする。
「それはちょっと分かりません…。ですが可能性は高いと思われます。何せ被害者はウチの社員ばかりですから」
 ギリっと悔しそうにアカリは歯噛みした。かつて起こった事件では、タイガの者が狙われたこともある。
 人型業魔がいる邪教崇拝者達はタイガ警備保障心霊対策課を目の敵にしており、両者の対立は激しくなりつつあった。
「魂命石は業魂にとっても、そして宵闇の者にとっても重要な物です。早く取り戻さなければ、命の問題になります」
 今現在、宵闇の者がとりあえず無事なのは魂命石が無事である証拠だろう。しかしいつまでも無事なままではいられない。
「…しかし奪った魂命石をどうしたいのかが分かりませんね。敵であるならばすぐに破壊するでしょうし…。襲われた者の話では、『魂命石を壊す気はない』と言っていたらしいですけど、集めて何の得があるんでしょう?」
 千雨の疑問を聞いて、アカリは顔を上げる。
「それは本人に聞けば良いだけだ」
 アカリは紅茶を飲み干し、立ち上がった。
「まだ犯人は入江地区にいるだろう。そこで宵闇の者と業魂を向かわせれば、必ず出て来る」
「ですが危険です。被害者達が一体化する暇もなく、奪われたほどの実力者ですよ?」
「だがほっとくわけにもいかないだろう」
 今でも人型業魔の少女は入江地区にいて、業魂を狙い続けている。このままでは被害は増えるばかり。タイガの者達を引き上げさせても、入江地区には宵闇の者と業魂が大勢いる。何とかして止めなければ、とんでもない被害を出すことになるだろう。
 千雨は根負けしたように、深く息を吐く。
「…仕方ありませんね。人型業魔の少女の似顔絵がありますので、まずは私の方で探してみます。しかし相手は人型業魔ですからね。何が起こるか分かりませんし、今はとにかく魂命石を取り戻すことにしましょう」


●入江地区の廃墟ホテル 最上階の部屋
「うふふっ、やっぱり魂命石って綺麗ね。下手な宝石よりも綺麗。だって生きているんだもの」
 少女は満足そうに、黒い宝箱に入れた魂命石を眺めている。少女がいる部屋は元はスイートルームだが、今は彼女好みの黒いゴシックな部屋になっていた。
「マモン、楽しそうなのは良いけど、流石にいきなりタイガの連中を狙ったのはどうかと思うよ」
 かつて人型業魔を生み出す儀式を行おうとした人型業魔の青年が、少女の背後から声をかける。青年は今は仮面をかぶっておらず、素顔を見せていた。
「あら、ルシファーだってタイガにちょっかい出しているじゃなーい。お互い様よぉ」
「ボクはソレが仕事なんだってば。キミは趣味で襲っているんだろう? 同じだと思わないでほしいな」
 ルシファーと呼ばれた青年は心外だというように、肩を竦める。
 白々しい態度に、マモンと呼ばれた少女は眼をつり上げた。
「ふんっ。どっちにしろタイガを無力化したいのならば、こうした方がお互い良いじゃない。アタシは魂命石を奪うけれど、壊しはしないしぃ。業魂を奪われた宵闇の者はすぐに死ぬわけじゃないんだし、もし死にそうなら他の余っている業魂と魂約や結魂でもすれば良いだけなんだから」
「でも宵闇の者と業魂に危機があれば、タイガは必ず動くよ」
「あら、ヤダ。せっかく奪ったのにぃ。それにまだまだ欲しいのよ、足りないのよ」
 少女は貪欲・強欲で有名な堕天使マモンの名にふさわしく、財宝をこよなく愛している。だから欲しがる。この世に稀に存在する魂命石を。
「魂命石は業命石よりもよっぽど綺麗なんだもん。う~ん…。もっとイロイロ欲しいわぁ」
 マモンは窓の外に視線を向ける。
 その様子を見て、ルシファーはため息をついた。
「狩りに行くなら、せめて業魔を数匹連れて行きなよ」
「ああ、そうね。邪魔をされては何だし、足止めぐらいの役には立つでしょう」
 マモンが部屋の隅の暗闇に視線を向けると、ムカデ型業魔とサソリ型業魔、ハゲタカ型業魔がゾロゾロと出て来る。
「さあ、行きましょうか。業魂狩りに」
 マモンは楽しそうに傘を開いた。


<解説>
 タイガではシリアス戦闘ストーリーを、シリーズ化するつもりでした。
 上記のOPにも出てきましたが、幹部は七人いまして、いずれも悪魔の名前が付けられています。
 七つの大罪にちなんだストーリーを展開しようとしましたが……まあまあ。
 でも悪役キャラって、考えるのが楽しいんですよね。個性的なキャラを書くのはとても面白いです。
 このストーリーでは参加者に業魔達を倒してもらい、マモンを追い詰めてほしかったです。
 そしてマモンの危機一髪のところへルシファーが現れ、奪った魂命石と引き換えに…というストーリーにするつもりでした。
 ちなみにここではルシファーにもマモンには逃げられます。とりあえず、魂命石を取り戻すことが最優先でしたので。
 シリアス戦闘シーンは書きごたえがありますからね~。書くのを楽しみにしていましたが……。
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