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家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」14

―十年後―

「う~ん…」
「…本当に進歩の無いヤツだな。ダメツナ」
 悩むボンゴレボスを目の前にして、リボーンは呆れと感心が入り混じったため息をついた。
 場所はイタリアボンゴレ本拠地。若き十代目・ボンゴレボスの部屋。
 スーツに身を包んだツナは、テーブルに置かれた七個のプレゼントを前にして真剣に悩んでいた。
 時は二月十四日。バレンタインデーである。
 ちなみに七個のプレゼントの中身はチョコレートで、差出人はいずれも守護者達である。
 ソファーに座り、手を組み、ツナは悩みを隠しきれない。
 向かい側に座っているリボーンは足を組んで、コーヒーを飲んだ。
「十年前からオレがうるさいくらい言っただろう? 未だにそこがちゃんとできていないのは、お前の出来が悪いからだな」
「うるさいよ、リボーン。そもそもお前が変なことを言い出さなきゃ、こう毎年毎年悩むこともなかったんだよ」
 チョコを送ってくれた守護者達は、食べた順位を気にするような者達ではない。
 食べたか食べなかったかの方が重要視している。
 なので、食べる順番を悩むことは必要ないのだが、リボーンが十年前に言った言葉のせいで、毎年悩んでしまっている。
 いつもなら貰った順番に食べているのだが、何故か今年に限って全員同じタイミングで届いた。
 わざわざイタリアまで送ってきてくれた。
 ランボにいたっては、わざわざ白バラの花束まで送ってきた。
 十年前の悪夢が、そのまま再現されたようだ。
「まっ、十年来の付き合いだし、今更食った順番を気にするようなヤツ等じゃねーんだから、気軽に食え」
「そんなの言われなくても十分に理解しているよ」
「じゃ、適当に食えよ。食わなかったことの方が、アイツ等傷付くんだからな」
「それも分かってる。だけどな、う~ん…」
 と、悩みを延々繰り返し続けている。
「優柔不断を優しさとは言えないよな」
「…だからな、リボーン。誰のせいでこんなに悩んでいるだと思うの」
 変なおどしかけのせいで、毎年うなっている。
 固まった笑顔で言うと、リボーンは肩を竦めた。
「呪いみたいな言葉吐きやがって…」
「誰がだ。小さなことにグジグジこだわり続けるお前が悪い」
「う~…」
「食わなきゃいけないチョコは他にもあるんだから、とっとと腹くくれ」
 隣の部屋では、絶えず人の出入りする音がしている。
 若きボンゴレボスに送られた、バレンタインのプレゼントが次々と運ばれているのだ。
「いっ今、体の調子が悪いから、食べないって方法は?」
「医者を連れてくるぞ。守護者達が」
「ううっ」
 胃の辺りを押さえながら青い顔をするツナを見て、リボーンは深く息を吐いた。
 そしてスーツのポケットから、小さな箱を取り出した。
 手のひらサイズの小さな四角の箱は、可愛くラッピングされている。
 リボーンは無表情にラッピングを解くと、箱の中身は一粒のトリュフチョコだった。
「ツナ」
「ん? 何だよ、リボー…んんっ!」
 口を開いた途端、何かを入れられた。
 そのまま手で口を押さえられる。
「とりあえず、それ食っとけ」
 間近で言われ、とりあえず食べてみた。
 香り高いカカオと酒の匂いが口の中に満ち、甘さが舌に広がる。
 ツナが食べたことを確認して、リボーンは手を離した。
「コレで悩まずに済むだろ?」
「んっ…。コレ、チョコレートボンボン?」
「ああ、オレの行きつけの酒屋が特別に作ったもんだ。貰いもんだが悪くはないだろ?」
「うん! 美味しかった」
 悩みを解決したおかげか、ツナは笑顔を浮かべた。
「まったく…。他のヤツのを先に食べるって考えは無かったのか?」
「ううっ~ん…。でも守護者のみんなには、いつもお世話になっているから」
「いっつもお前の面倒を見ているのは、オレのような気がするが?」
「うるさいなぁ。文句言う前に、仕事、片付けてきなよ」
「はいはい。ボスの命じるままに」
 リボーンはうやうやしく礼をすると、イヤな笑みを浮かべながら部屋を出て行った。
「ったく…。チョコはやっぱり落ち着いて食べた方が、美味しいよな」
 そう言ってツナは唇を指でぬぐい、その指を舌に乗せた。
「にがっ…!」
 カカオの苦さに、思わず顔が歪む。


 沢田綱吉、二十四歳。
 まだ贈られてくるチョコの意味を、完全には理解していなかった。


〈完〉

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