家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」7

2012.01.25(17:29)

 曇るクロームの表情。
 遠い異国の土地で囚われの身になっている六道骸のことを案じているのだろう。
「そっか…。でもいつか実際に会って、渡せる日がくるよ!」
 励ますように明るい声を出すと、彼女は少し微笑んだ。
「…ありがとう、ボス。優しいのね」
「いっいやぁ」
 照れて頭をかくも、通り過ぎる男子生徒達の視線が突き刺さっていることに気付く。
 クロームほど可愛い美少女は、ここにも並盛中にもなかなかいない。
 なのにダメツナと言われている自分が、義理とは言えチョコを貰っているのを見て、おもしろくないのだろう。
 余計な恨みを買わない為にも、この場は早く立ち去った方が良い。
「えっと、チョコ、貰っていい?」
「うん。頑張って作ったの。小さなチョコケーキ。でもいっぱい入っているから」
「へぇ、クロームの手作りか。おいしそう!」
「犬と千種にも作ったの」
「二人にも? 喜んだだろう?」
 尋ねるとクロームは困った顔で首を傾げ、後ろを振り返った。
「どうだろう…?」
 少し離れた壁に隠れて、二人がいた。
 こちらをチラチラと窺っている。
 どうやらクロームを心配して付いてきたらしいが、バレバレだ。
「あっ…はは。きっと喜んでいると思うよ。少なくとも犬は甘いもの大好きだし。千種だってクロームの手作りなら嬉しいはずだよ」
 口では悪く言っても、二人はクロームのことを信頼できる仲間だと、思っている。
 それに可愛いクロームからチョコを貰って、男なら嬉しくないはずがないと断言できる。
「ボスは…嬉しい?」
「オレ? オレはもちろん嬉しいよ。ありがとう」
 笑顔を浮かべると、クロームの頬が少し赤く染まった。
「ボス…」
 ふとクロームが近寄ってきたかと思うと、背伸びをしてきた。
「えっ…」
 柔らかな感触が一瞬、頬に触れる。
「ありがと」
 そう言って、犬と千種の元へ駆けて行った。
「えっ、ええっ!」
 驚いて頬に手を当てる。
 いきなりのことで、周りもフリーズしている。
 この空気をどうしようかと考えていると、校舎の方から怒声と駆け付けて来る足音が聞こえてきた。
「十代目ぇっ!」
「あっ、ヤバッ!」
 気付いた時にはもう遅かった。
 怒りもあらわな獄寺が、武器を両手に駆けてきたのだ。
「骸の女はどこです? あの女、一度ならず二度までも十代目にっ…!」
 体を震わせながら辺りを見回すも、クロームはとっくに逃げていた。
 が、獄寺の登場に、今まで固まっていた女性達が騒ぎ出した。
「あわわっ! とっとりあえず、獄寺くん! 逃げよう!」
 彼の手を掴み、走り出した。
「じゅっ十代目?」
「このままじゃもみくちゃにされちゃう! 一緒に逃げよう!」
 二人と離れる、という契約は並盛中の女子生徒達と交わした。
 校外の女性達にまで守る必要は無い。
 チョコを持ちながら追かけて来る女性達を振り切り、やっと二人きりになれたのは並盛公園に着いた時だった。
「もっもう追って来てないよね?」
「えっええ、気配もありません」
 二人で肩で息をしながら、辺りを窺う。
 そこでやっと、今自分がしていることに気付いた。
「あっ、ごっゴメン。ずっと手を掴んでた」
 握り合った手は、走ったせいか熱かった。
 慌てて放すと、獄寺は少し寂しそうな顔をする。
「ずっと繋いだままでも良かったのに…」
「えっ、何か言った?」
 口の中の呟きは、上手く聞き取れなかった。
 でも獄寺は笑って見せる。
「いえ、何でも。それよりやっと二人きりになれましたね。十代目」
「あっ、うん。そうだね。今日はオレが急に日直を代わることになったし、二人は女の子達に囲まれて大変だったもんね」
「ああ、そうでしたね」
 そう言うと、獄寺の表情が険しいものになる。
「あんな女共のせいで、今日は十代目と一緒に居られる時間が無かったんですものね」
「おっ怒らないでね? ホラ、今日はバレンタインだし。女の子の為の日でもあるからさ」
 思わず女の子側のフォローをしてしまうのは、やはり契約のことがあるからだろうか。
 再び罪悪感に悩まされるも、話すべきかどうか迷う。
「あっ、そういえば日本のバレンタインデーというのはチョコレートを渡す習慣なんですよね」
「うん。ああ、獄寺くんは帰国子女だから…」
 外国と日本のバレンタインデーのやり方は違うと聞いたことがある。
 昨年のバレンタインの彼の態度を思い出せば、受け取ったどうかも怪しい。
「はい。向こうでは少しやり方が違うんですが…」
 そう言って、カバンから綺麗な包装紙に包まれた箱を取り出した。

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