家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」5

「はい。あっ、でも女の子じゃないですよ! お兄さん…じゃなくて、笹川先輩からです。さっき、お昼まだだって言ったらくれたんです」
 慌てて拾い集め、袋に入れる。
「ふぅん」
 ヒバリはそう言って、テーブルに置いてあった購買部で売っているパンを手にした。
 そこからは二人とも食事を始めた為、会話は無かった。
 そのことに気まずさを感じながらも、何となく話しかけづらかったので黙っていた。
 黙々と食べ続け、最後にお茶を飲み干して立ち上がろうとした。
「そっそれじゃあオレ、そろそろ行きますね。今日はありがとうございました」
「あっ、待って」
「はい?」
 まさか呼び止められるとは思っていなかったので、中腰で固まってしまった。
 ヒバリは立ち上がると、壁の方に向かって歩き出した。
 ポットやコップが置いてある場所で、何やらしている。
 とりあえず座り直す。
 するとヒバリはすぐに戻って来た。
「はい」
 その手に小皿を持って。
「えっ?」
 わけも分からず受け取り、皿の上にあるものを見た。
 茶色くて丸い。そして甘い匂いが漂ってくる。
「これは…」
「チョコ大福」
「ええっ!」
 確かにトリュフチョコとしては大きいと思っていた。
 だが、彼から渡されたものとしては信じられない。
「ええっと…」
 思わず皿を持ったまま固まってしまった。
「キライ?」
「いっいえ! でもコレ、どうしたんですか?」
 まさか今日の貰い物というわけではないだろう。
 今頃、検査にかけられているはずだから…。
「間食用に買ったんだ。でも買いすぎてね。よければ食べて」
「あっああ、そういうことでしたか」
 ヒバリ自身が購入したものならば、安全だ。
 ほっと息を吐き、皿をテーブルに置いた。
「それじゃあいただきます」
 手を合わせ、楊枝で一口サイズに切り分けて口に運ぶ。
 柔らかな餅の食感に、甘すぎない生チョコの甘さが口の中に広がる。
「んっん~。おいしい! おいしいですね! コレ」
 素直に喜ぶと、ヒバリは笑みを浮かべた。
「そう、なら良かった」
 そう言って空の湯飲みを二つ手に取った。
「お茶のおかわり、いれてくる」
「あっ、ありがとうございます」
 チョコ大福の美味さに感激しながらお茶と共に味わっていると、あっという間に予鈴が鳴った。
「っとと。すみません、ゆっくりしすぎましたね」
 チョコ大福を食べている時も会話は無かったが、ヒバリはなぜか笑顔だった。
「いや、こっちから誘ったしね」
「じゃあ行きます。ヒバリさん、ありがとうございました」
 笑顔で頭を下げると、ヒバリも笑顔で手を振った。



 そしてその場を後にし、教室に戻って一変。
「ひっ!」
 教室内に溢れる女子生徒の姿に、驚いて一歩下がった。
 渦中にいるのはもう考える必要なく、あの二人だろう。
 予鈴がなったというのに、中々自分の教室に戻らないとはいい度胸だと思う。
 外に出ていたクラスメート達も、中の様子を見て困ったまま廊下に立ち尽くしている。
 さすがにこの騒ぎでは風紀委員達が動くだろうと考えていると、背後から声をかけられた。
「沢田さん」
「あっ、草壁さん。こんにちは。この騒ぎで来たんですよね」
 二人の風紀委員を連れて来た草壁は、騒ぎを見て苦笑した。
「ええ、流石に授業に影響するのでは止めないわけにもいきませんからね。委員長からも厳しく言われていますし」
 そう言って後ろにいる二人の委員に合図を送る。
 二人は頷き、教室の中へ入っていった。
 そして響く怒声と悲鳴。
 傍観を決めて、草壁を見た。
「今日は朝から大変ですね。昼食、食べれました?」
「ご心配なく。早めに取りましたから」
「そうですか。あっ、さっきヒバリさんとお昼一緒に食べたんですけどその時にチョコ大福をいただいたんですよ」
「チョコ大福?」
「はい。それが凄くおいしくて! アレ、並盛で売られているものですか? 売っているお店、知っているなら教えてほしいんですけど」
 安ければリボーン達にお土産として買っていくのも良いだろう。
 美味しさを思い出して、思わず笑顔になる。

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