家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」3

2012.01.21(01:16)

「本当は咬み殺そうかとも思ったんだけどね。キミが渦中にいることを知って、止めといたんだ。まあ内容は検討ついたしね」
「すっすみません…」
 変なところで気を使わせてしまったんだと、少し申し訳なくなる。
「今日一日ぐらいはね。風紀委員も無粋じゃないし」
「あっありがとうございます」
 今日一日、鬼ごっこをする立場としては、ありがたい言葉だ。
 逃げている最中に、彼に捕まってはシャレにならない。
「ところでキミは誰かに貰った?」
「ぐっ! …まあ友達や家族からは貰う予定です」
 本命は無しとしても、貰えるだけありがたいと思っている。
「ふぅん…」
 じっと見られることに居心地の悪さを感じて、カバンを抱え直した。
「そっそれじゃあオレ、そろそろ職員室に行かなきゃいけないんで」
「うん。じゃあね」
 もう一度頭を下げて、校舎に向かって走り出した。
 途中、登校中の生徒達が物珍しげに自分のことを見ていることに気付いた。
 人が多い時間に彼と一対一で話せば嫌でも目立つことを忘れていた。
 最近では普通に挨拶や会話ができるようになっただけに、彼の存在の大きさと重さを忘れがちになりそうになっている。
 今日一日だけでも、できるだけ目立たないようにしようと、改めて心に決めた。
 教室に入ると、まだ人気は少なかった。
 けれどカバンを置くとすぐに職員室に向かった。できるだけ二人に会わないように、と。
 そして鐘が鳴るギリギリ前に、教室に戻った。
 すると登校してきた二人が駆けつけてきた。
「ツナっ!」
「十代目、今朝は済みません! お迎えに間に合わなくて…」
 周りを取り囲む女子達をかき分けてきた二人に、思わず日誌を前に突き出した。
「いっいいんだよ! ゴメン、急に日直代わることになったから…」
「それは小僧から聞いたよ。一応急いで追いかけたんだけど、間に合わなかったからさ」 

 ぐさっ。

「本当に済みませんでした…」

 ざくっ。

 心に深く罪悪感という名の剣が刺さる。
 二人の申し訳なさそうな表情に、土下座して謝りたくなった。
「いっいや、オレの方が悪いんだから、気にしないで。それよりもうホームルーム始まっちゃうから、もう座ろう?」
 棒読みの言葉を何とか言って、自分の席に座った。
 それでも二人は何か言おうとしたが、鐘の音と共に担任が教室に入ってきたので、渋々自分の席へ戻って行った。
 痛む心の傷を抱えたまま、ホームルームが始まった。



 ―その後、休み時間ごとに話しかけてくる二人に、「日直の用事があるから」と逃げまくり、ついに昼休みに入った。
「ツナ、お昼外で食べないか?」
「屋上に行きませんか? オレ、あったかい飲みモン買ってきますよ」
「ごっゴメン! ちょっと用事頼まれてて、一人で食べるから!」
 気を使わせていることをヒシヒシと感じるも、周囲の女子からはビシビシ殺気を感じている。
 なので弁当箱を持って、二人に手を合わせて頭を下げた。
「あっ明日は一緒に食べよう! ホント、ゴメンね!」
「あっ、ツナ!」
「十代目!」
 追いかけようとする二人だが、すぐに女子達に囲まれ、身動きできなくなる。
 二人に心の中で何度も詫びながら、いつもより人気の多い廊下を駆ける。
 今朝ヒバリが言った通り、風紀委員達は廊下を走っても咎めてこない。
 それどころが男子生徒達がどこか憐れみの視線を向けてくる。
 誰も何も言わずとも、何となく自分の行動の意味を察してくれているようだ。
 何気にフォローされているのも、少し悲しい。
 そんな思いを抱きながら靴を履き替え、外に出た。
 校舎裏に回り、クラブハウスが立ち並ぶ裏門の方まで走った。
 例え側にいなくても、二人の近くにいることは今日一日許されない。
 なので人気のない所を選んだのだが…。
「どっどこでお昼食べよう…」
 今日限りは、どこへ行っても誰かいそうだ。
 途方にくれながら歩いていると、とあるクラブハウスの扉が開いて、見知った人物が出てきた。
「あれ? お兄さん」
「沢田か? どうした? こんな所で。一人か?」
「ええ。お兄さんはトレーニングですか?」
 笹川了平は制服ではなく、ジャージを着ていた。
「ああ、早弁したしな。沢田はまだなんだろう?」
「はっはい。実は…」
 昨日の放課後から今までのことを簡潔に話すと、了平は苦笑した。
「そうか。大変だな」
「ええ、本当に…」
 実感を込めて言うと、思わず脱力してしまう。
 まだ午後と放課後が残っている。
 あの二人から逃げるには言い訳と心の強さを必要とすることが、しみじみ分かった。

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