フリーのシナリオライターとして活動しています
 呼び出した女子の一人がバレンタインに日直だった為、代わることで彼らから逃げる口実にした。
 逃げる、という言葉に罪悪感を感じるも、あんな大勢の女子を敵に回すことを考えれば、命の危機をさけられた安心感もある。
 パンを食べ終えると、今度は小走りに走り出した。
 いつも迎えに来る時間は決まっている。
 今朝は三十分も早く起きた上に、準備も前日に全て整えてあったからすぐに家を出られた。
 あまり急ぐ必要もないとは思うが、念には念を。
 追いかけられれば自分の足の速さではすぐに追いつかれてしまうからだ。
 しかし学校の近くまで来た所で、ふと甘い匂いに気付き、足の速さを緩める。
「ん? チョコレートってこんなに強く匂うものだっけ?」
 今はまだ、登校時間には少し早い。
 なのにチョコの甘い匂いが周囲に漂っている。
「それとも誰か大量に貰ったとか…」
 ふと友人二人の姿が頭に浮かぶも、それはないと打ち消す。
 だが、その考え自体は当たっていた。
 校門に流れ込むような女性達の姿を目にして、足が止まった。
「えっ? アレ?」
 しかし女性達は、並盛中の女生徒だけではなかった。
 他校の生徒や、私服の大人の女性も交じっている。
 全員手に綺麗にラッピングされたチョコを持っているので、誰かに渡しに来たことは分かるのだが、それにしても…。
「学校関係者以外の人が学校に入ってきて…、あの人が怒るんじゃないのかな」
 それともバレンタインだから、特別なのだろうか。
 そんなことを考えながら、人の波に交じって歩き出す。
 校門を通り抜け、風紀委員達の姿を目にした時、彼の姿を見つけた。
「おっおはようございます、ヒバリさん」
「ああ、おはよう」
 風紀委員達と話をしていた雲雀恭弥に、頭を下げて挨拶をする。
 すると輪の中を抜け、こちらに来た。
「今日は早いんだね」
「にっ日直なので」
「ふぅん」
 気のない返事のように聞こえるも、表情が心なしが柔らかい。
 風紀を一番とするヒバリは、乱す者には容赦ないが、守る者には寛大だ。
「ところで何か今日は人が多いですね」
 女性の多さのことを指摘すると、ヒバリは軽く周囲を見回した。
「うん、まあ今日は特別にね」
「バレンタインだからですよね? でも一体誰にあげているんでしょうね」
 友人二人が目的ならこんな朝早くではなく、放課後を狙って来るはずだ。
 しかし女性達の行動を見ているうちに、ふと気付いた。
 女性達はヒバリを見ながら、風紀委員達にチョコを渡しているのだ。
 そして風紀委員達は受け取ったチョコをダンボールに入れて、次々校舎の中へ運んで行く。
 …つまり。
「ひっヒバリさん目当てでしたか…」
 怖いもの知らずと言うか、何と言うか…。
「…ヒバリさん、学校外でもモテるんですね」
「まあお礼の意味もあるんじゃないかな」
「お礼?」
 首を傾げて見せると、ヒバリは軽く息を吐いた。
「街をパトロールしている時に、彼女達に絡んでくるバカな奴等を咬み殺したことがあるからね」
「ぶっ」
 つまり、彼女達はタチの悪い男達から救ってくれたヒバリに一目惚れした―ということか。
 確かにこの綺麗な外見に強さを交えた彼に救われたら、彼女たちの目には王子様のように映ったことだろう。
 …実際は魔王とも言えるようなタチの悪さを持っているのだが、一目見ただけでは理解できないだろう。
 彼は常に風紀委員の腕章を付けているから、そこから並盛中のことを調べたのだろう。
 そして朝、風紀委員として校門の近くに立っているので、そこを狙い目としてやって来たのか。
「そっそれにしても凄い量ですね」
 アリの行列を連想させる風紀委員達の姿に、軽く虚しさを感じる。
「まあ中には危険物もあるだろうから」
「きっ危険物ぅ?」
 思わずヒバリから離れた。
「風紀委員は感謝もされるが、恨みも買う。検査は厳重に風紀委員の方で済ませるから、安心して良いよ」
 危険物の正体について、聞きたい気持ちもあったが、安心して良いと言う彼の言葉を信じることにした。
 …今日はただでさえ一日鬼ごっこのような真似をしなければいけないのに、これ以上の心の動揺は抑えたかったからだ。
「ところでそろそろ校舎に入った方が良いんじゃないの? 今日はあの二人から逃げなくちゃいけないんだろう?」
「うえっ! どっどこからその情報をっ」
「昨日の放課後、屋上で女子生徒達と群れていただろう?」
「あっああ…」
 ヒバリはどんな理由であろうとも、群れることを嫌う。
 あれだけの人の数が屋上に集まれば、何事かと風紀委員が目を付けてもおかしくない。

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【2012/01/20 23:13】 | 家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」
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