【もう1人のボク】・11

2012.01.17(14:29)

「希…更さん」
 ぼやけた視界に映るのは、希更さんの戸惑った表情だった。
「ハルくん、なのね? コレは一体、どうしたの?」
「あっ、月夜が…」
「月夜くんが出てきたの?」
 びっくりする希更さんを見ながら、僕は軽く頭を振った。
「ええ、僕を助ける為に…。どうやら例の事件の首謀者は、遊間だったようです」
「やっぱり、か…」
 重々しい声で現れたのは、門馬さんだった。
「門馬さん…。気付いていたんですか?」
「何となく、刑事の勘でな。前々から怪しいとは思っていたんだが…」
「…その口ぶりだと、彼が怪しいと分かっていて、あえて僕と接触させてたってことですかね」
「えっ、それは…」
 口ごもる希更さんの様子を見て、僕は確信した。
 やっぱり…エサとされていたか。
「良いです。何も言わなくて」
「ハルくん…」
「事件があの日以来、ピタッと止まれば、怪しまれるのも当然ですもんね」
 遊間はあの日、僕と月夜が話しているのを聞いて、確信したんだろう。
 僕と月夜がまだ、切れていないことを。
 だから事件を起こさなくなった。
 目的は達成されたから。
「…月夜くんの方は?」
 門馬さんが不安そうに僕を見る。
 月夜の怒りの恐ろしさは、門馬さんでさえおびえさせる。
「今、引かせました。大分興奮していますが、僕の言うことを聞いてくれましたから」
「そうか…」
 安堵する門馬さんと希更さんの姿を見て、僕は複雑な思いにかられる。
 結局…事件解決の為に、僕は遊間と共に泳がされた。
 けれどここで怒りを出せば、また月夜が暴れてしまう…!
 胸元を押さえながらも、僕は落ちたケータイを拾った。
「…じゃあ、僕は帰りますね」
「あっ、送って行くわ!」
「いえ、結構です。僕のことより、彼等のことをお願いします」
 僕は2人に遊間達のことを頼み、学校から出た。



 結局、今回も月夜に助けられてしまった。
 月夜は徐々に出来上がった人格じゃない。
 ある日突然、僕の中から生まれ出た人格だった。
 どの人格障害の本にも、分裂してしまった人格は統合すべきだと書かれてある。
 でも僕は、月夜がいなければ何もできない。
 彼がいなければ、本当に生きていけない…!
 だから病院に通うことも拒否している。
 決して表に出さないのなら、という2人の刑事の条件で、僕は普通の学生の生活を送れている。
 だけど…僕は彼の存在を消すことはできない。
 分裂してしまった、もう1人のボク。
 けれど今、僕はたった1人なんだ。
 家族もバラバラ。
 友人関係だって、昔のことがあって、上手に作れない。
 心を許せるのは、月夜だけなんだ!



 ―ああ、そうだぜ、陽日。
 お前のことを分かってやれるのは、オレだけだ。
 オレとお前は『同じ』。
 お前の喜びは、オレの喜び。
 お前の怒りは、オレの怒り。
 全ての感情・記憶を共有するオレだから、お前を守っていられるんだ。
 ありとあらゆるモノから、お前を守ってやるよ。
 だからオレを消そうなんて、無駄なことは考えるなよ?
 そんなことしたら、お前は絶対生きていけないんだからな。
 オレと共に生きてくれんなら、お前の身も心も守り続けてやるぜ?
 なあ、兄貴?


<終わり>

スポンサーサイト

コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://hosimure.blog33.fc2.com/tb.php/508-6e4a0783