フリーのシナリオライターとして活動しています
 『人形』達は虚ろな笑みを浮かべながら、僕に近付いてくる!
 希更さん達に連絡しようと、ケータイを取り出すと、
「押さえろ」
 遊間の一声で、『人形』達が一斉に襲い掛かってきた!
「うっ…!」
 あっという間に、僕は地面に押さえ付けられた。
「彼に連絡してくれるなら良いんだけど。警察はカンベンだなぁ」
 僕の手から落ちたケータイを拾い上げ、遊間は操作し始めた。
「…ねえ、どれが彼に通じるの?」
 ケータイには門馬さんと希更さん、そして数人の情報しか入っていない。
「もしかして、シークレットにしてる?」
「さあ、ね」
 苦しい息の中、僕は笑って見せる。
 遊間の目が、僅かにつり上がった。
「陽日、俺はキミのことも気に入っているんだ。できれば傷付けたくない」
「こんなことをしといてっ、何を今更…」
「うん、そうだね。だから早く彼を出してよ」
 急に恐ろしい顔付きになった遊間は、僕の上に乗りかかり、首を締め上げてきた。
「がはっ!」
「彼に会いたいんだ。会いたくて会いたくて、仕方ないんだ」
 遊間の目は、苦しげに歪んでいる。
 まるで恋焦がれているように…。
「彼が俺のことを知らないのが、苦痛でたまらない。会わせてくれるだけでいいんだ。キミに迷惑はかけないと誓えるよ」
「イヤっ、だ!」
 それでも僕は頷かない。
「―そう。なら、仕方無いな」
 遊間は片手を外した。
 すると『人形』の1人が、遊間の手に、ナイフを持たせた。
「キミを傷付ければ、さすがに彼も出てこないワケにもいかないだろう? キミは彼に、大事にされてたんだし」
「やめっ…! ゆうっ、まっ!」
 そんなことしたら、本当にボクが現れてしまう!
 それだけは!
「最後のお願い、だよ? 彼に会わせて」
 僕は唇を噛んだ。
 それでも…それでも僕は!
「ダメだ」
 ハッキリと拒絶した。
「そっ。じゃあ仕方ないね。彼の怒りを買うのは予定外だけど、しょうがないもんね」
 そう言った遊間の手に握られたナイフが、僕に振り下ろされた…。



 ―しかし、ナイフが陽日を傷付けることはなかった。
「なっ!?」
 遊間の腕を、陽日の手がしっかりと掴んで止めたから。
「はぁ…。ヤレヤレ。ようやく出られたな」
 陽日の声なのに、陽日ではない。
 顔を上げた顔も、陽日のそれではない。
「ったく。ギリッギリで出しやがって…。後で説教もんだぞ? 陽日」
「…陽日?」
 陽日の変貌ぶりに、遊間は動揺する。
「あっ? ちげーよ。俺の名前は…」
 恐るべき力で、自分を押さえ込む連中を引き剥がしながら、彼は笑った。
「月夜だ」
 自分の腹の上に乗る遊間を蹴り飛ばし、月夜は身のホコリを叩き落としながら立ち上がった。
「随分出来の悪い『人形』を作りやがって…。お前、よっぽどオレに殺されたいらしいな?」
 そう言いつつ、月夜は戦闘態勢に入った。
 男女混ざっている『人形』達を、一瞬の躊躇いも無く暴力で地面に叩き伏せる。
 そこに、迷いや罪悪感なんてまるでない。
 陽日に傷付けた連中に、月夜は容赦しない。
 陽日を守る―それが月夜の存在意義だから。
「はっははっ…! まさか陽日が、ツキヤだったなんて…!」
 『人形』達が次々にやられていく中、遊間は狂喜の笑みを浮かべた。
「そうか…そうだったんだ! ツキヤ、キミは陽日が生み出した人格。陽日は二重人格だったのか!」
「何を今更。オレが誰よりも何よりも陽日を優先し、大事にしてきたことを知っているんだろ? なら、簡単に出せる答えだ」

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【2012/01/15 15:39】 | 【BL風味・ホラー/オカルト短編集】
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