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「早く!」
 僕は彼の手を掴み、立たせた。
「ここにいたら、危険だって!」
 もう大声で怒鳴っていた。
「分かった。出よう」
 さすがに事態を悟ったのか、彼は僕の手を握り返し、真面目な表情になった。
 出口へ駆け込む客達。
 しかしウエイトレスはそこを狙って、次々と包丁を振り上げる。
 僕は店の奥を見つめた。
「…こっち!」
 彼の手を引き、出口とは反対方向のトイレの所に走った。
「どこ行くの?」
「こっちに非常口があったんだ。そこから逃げよう!」
 トイレの更に奥に、非常用の扉があったことを思い出した。
 ところが悲鳴が間近で聞こえた。
 振り返ると、ウエイトレスは僕達のすぐ側まで来ていた。
「なっ!」
 僕と彼の間を、包丁が切り裂いた。
 ギリギリで手を離したから良かったものの、繋いだままだったら、どちらかの手が傷付いていた。
「くっ…!」
 このままじゃ逃げ切れない!
 僕は思いきって、ウエイトレスに飛び掛った。
 包丁を持つ手首を押さえながら、床に倒れ込んだ。
 倒れても、笑みを崩さない。
 コレは3年前、ボクが起こした事件の加害者と同じ…!
「眼をっ…覚まして! キミは操られているんだよ!」
 大声で間近で叫ぶと、びくんっと体が動いた。
「陽日! どけて!」
 遊間の声で、僕は彼女から離れた。
 遊間は白い布で、彼女の全身を覆った。
 そして手際良く、紐で縛り上げてしまった。
 彼女はしばらくバタバタ動いていたけれど、やがて大人しくなった。
「えっと、遊間? 空気吸える所は空けてあるよね」
「口元までには布を覆っていないよ」
 遊間はそう言って、彼女の口元を手で上げると、確かにそこから息を吸っているのが分かる。
「そっ、なら良いけど…」
「どいたどいたぁ!」
 そこへ聞き慣れた声が飛び込んできた。
「暴れているウエイトレスはどこ?」
 続く女性の声は…。
「門馬さんに希更さん!」
 2人の刑事だった。
「ヤダ! ハルくん! まさか巻き込まれたの?」
 希更さんが心配そうに駆け寄ってきたが、僕らの足元を見て、立ち止まった。
「もしかして…」
「はい、加害者のウエイトレスの女の子です」
「まるで簀巻きね」
「ああ、俺がしたんですよ」
 遊間はそう言って、学生証を希更さんに見せた。
「神代遊間と言います」
「神代くん、ね。ハルくんのお友だち?」
「えっと…」
「俺が彼をナンパしたんです」
「はっ?」
 しっ正直に言わないでも…。
「希更くん、とりあえず今はこのコのことを先に」
「あっ、そうだった!」
 門馬さんと希更さんは、他の警察官の人と一緒に女の子に近付いた。
「ね、陽日。あの刑事さん達と知り合いなの?」
「あっ…。あの女の人、希更さんって言うんだけど、僕の従姉なんだ」
 コレはウソ。
 でも誰か知り合いの人に会った時には、こういうウソを言うことを希更さんと決めていた。
「ハルくん、神代くん。悪いケド、ちょっと署の方でお話聞かせてくれる?」
「あっ、はい」
「分かりました」
 …とんでもないことになったな。
 でもちょっと気になることがある。
「希更さん、その前にトイレいいですか?」
「ええ、どうぞ」

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【2012/01/11 18:08】 | 【BL風味・ホラー/オカルト短編集】
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