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【もう1人のボク】・4

 声をかけてきたのは、僕と同じ歳ぐらいの青年だ。
 でも見覚えが無い。
 男にしては、キレイな顔をしている。
 彼は1人で、僕の目の前にいた。
「もしかして1人? 俺、これから昼食べるんだけど、1人じゃ味気なくてさ。良かったら奢るから、一緒に行かない?」
 辺りに素早く視線を回すも、確かに彼1人みたいだ。
「う~ん…」
 でも危険そうな感じがする。
「あっ、警戒してる? 安心してよ。そこのファミレスなら、安全っしょ?」
 そう言って彼は僕の上を指さした。
 今まで背を預けていた店の2階には、確かにファミレスがある。
「それでもまだ警戒するなら、ホラ、身分証明」
 そう言ってポケットから、学生証を取り出し、僕の目の前に差し出した。
 某有名進学高校だ。顔写真と共に、名前も載っている。
「神代(かみしろ)…遊間(ゆうま)?」
「うん、遊間って呼んで」
 学年は2年…。
 僕と同じ歳か。
 まさか学生証は偽造しないだろうし、お昼に1人が味気ないというのも分かる。
「…まっ、オゴリなら嬉しいけど」
「なら、決まりだね。行こうか」
 そして僕は、彼と共に昼食を取ることになった。
 …警戒することも忘れて。



「そういえば、まだ名前聞いていなかったね。キミの名前は?」
「…真羅(しんら)陽日。高校2年生」
「あっ、同じ歳なんだ。陽日って呼んでも良い?」
「良いけど…」
 メニューを見ながら、僕はちょっと後悔していた。
 やっぱり断るべきだったか?
 彼の眼は好奇心に満ちている。
 それが居心地を悪くさせる。
「ねっ、何食べる? 何が好き?」
「えっと…。ミートソーススパゲティとドリンクバー頼んでもいい?」
「もちろん。デザートもどうぞ♪」
 彼は不気味なほど機嫌が良い…。
 とりあえず、頼むものを頼んだ後、僕は思いきって聞いてみた。
「ねぇ、何で僕を誘ったの?」
「強いて言うなら、目立ってたから。なぁんか雰囲気あるコがいるなぁって思ってたら、声かけちゃってた」
 …ソッチ系だったのか?
 いや、でもそういう視線じゃない。
 純粋に、好奇心を感じる。
「そっそう。あっ、僕ドリンク持ってくるから」
「どうぞ」
 彼はニコニコしながら手を振った。
 ドリンクを見るフリをしながら、考えた。
 …逃げた方が良いんだろうか?
 何だか彼からは危険なカンジがする。
 そう、まるで…ボクみたいな…。

がっしゃーん!

「えっ?」
 店の奥から、何かが割れる音がした。
 店内にいた人達も、驚いて店の奥を見つめる。
 すると、奥から1人のウエイトレスが、血の付いた包丁を持って出て来た。
 顔に満面の笑みを浮かべながら。

ぞわっ!

 背筋に鳥肌が立った。
 このコ…マズイ! 
 僕は慌てて彼の所に戻った。
「ここを出よう! 何だかヤバそうだよ!」
 小声で言うと、彼はキョトンとした。
「あっ、うん。でも何が…」
 彼の言葉は、女の人の悲鳴で消えた。
「きゃあああっ!」
 ウエイトレスの持つ包丁が、女性客の腕を切り裂いた。
 パッと辺りに血が飛び散る。
 すると店内が一斉にパニックになった。

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