フリーのシナリオライターとして活動しています
「オレは動いていない。だから事件にも関係無い。だが…模倣犯だなんて笑わせるな」
 急に眼に野生的な光が宿った。
 その眼を見て、不安が胸に広がる。
「オレがしたことをマネるなんて、ふざけたヤツが出てきたもんだ」
「それはっ…! しょうがないだろう? 3年前、あんなに世間が騒いだんだし…」
「だがオレが動いたのには、訳があった」
 ボクは僕に向かって歩き出す。
 そしてすぐ目の前で立ち止まり、真剣な表情で見つめてくる。
 思わず心が揺れ動く。
「オレはお前の為に動いた」
 スッと両手が上がり、僕の顔を包み込む。
「…っ!?」
 びくっと体が竦む。
 冷たくも優しく触れてくるこの手を、僕は振り払えない…!
「お前を傷付ける全てのモノを消す為だけに、オレは動いたんだ」
「でもっ、あんな結末、僕はっ…!」
「分かってる。オレは少しやり過ぎたな」
 ボクは深くため息を吐き、僕を抱き締めてきた。
「あっ…」
「お前を守る為だったのに、お前を傷付けてしまったことだけが、唯一悔やむことだ。だから今回は動いていない。お前の為にならないことなんて、オレは絶対いしないからな」
 その言葉は…イヤというほど、心に染みる。
「じゃあ…心当たりは?」
「うん…。希更という刑事はオレの信奉者だとか言っていたが、オレはそんなヤツを側に置いたつもりはない。少なくとも、模倣犯なんてことは絶対にさせない」
「じゃあ…お前も知らないヤツ?」
「多分、な。でも気に入らないなら、オレが探し出して、消してやろうか?」
 途端にニヤッといつものイヤな笑顔を浮かべる。
「なっ!」
「それがお前の為になるというなら、オレは動くぜ?」
「結構だ! 僕に何かあったワケでもあるまいし!」
 ボクの腕を振り払い、ベッドに座った。
「とにかく、お前が動いていないならそれで良い! …このまま大人しくしててくれ」
「ああ、良いさ。それがお前の望みならな。だが…」
 不意に険しい顔になったボクは、僕の耳元に口を寄せた。
「お前に万が一のことがあれば、オレはお前の許可無しでも動く。それは分かってんだろう?」
「…ああ、分かっているよ」
 ボクは僕の為にしか動かない。
 僕がそう願ったから…。



 だが僕はどうしても気になった。
 何より『ボクの模倣犯』と『信奉者』という部分が、引っ掛かっていた。
 3年前、ボクは僕を守る為に、事件を起こした。
 それは世間を…いや、日本を揺るがした。
 だから僕はボクを封印することにした。
 僕を守る為だけに動いてくれたのは、正直嬉しかった。
 でも…だからと言って、ボクの罪を許してはいけない。
 大勢の人間を巻き込み、多くのものを傷付けたのは、まぎれも無く罪なのだから…。
 そんなボクの模倣犯、どんなことを仕出かしたのか、興味があった。
 だから学校が休みの日に、僕はアーケード街に来た。
 多くのお店が並び、若者が大勢集まる街。
 僕と同じ学生も、見渡す限りいる。
 フード付きのコートを着て、店の前で一人、ケータイをいじるフリをしながら、周囲を警戒する。
 …今のところは何もなさそうだ。
 ただ騒がしいだけの街。
 まあ…時折声をかけられるのは正直うっとおしいけど…。
 女の子達や男の子達、…時々怪しげな大人にまで声をかけてくる。
 …確かに店の壁に寄りかかって、1人でケータイをいじっていたら、声をかけられているのを待つ人に見られてもしょうがない気もするケド。
 朝10時から来て、場所を転々としていたら、もうお昼の2時過ぎていた。
「お腹、減ったな」
 どこかファーストフードで昼食を取るか。
 そう思って壁から背を浮かしたら、
「ねえ」
 …声をかけられた。

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【2012/01/11 18:00】 | 【BL風味・ホラー/オカルト短編集】
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