フリーのシナリオライターとして活動しています
「今日はどうしたんですか?」
 心境を隠し、僕は笑顔で2人にコーヒーを差し出した。
「ああ、ちょっとな」
 門馬さんが希更さんに視線を向ける。
 希更さんはコーヒーを一口飲んだ後、真剣な表情で僕を見つめた。
「ねぇ、ハルくん。最近、月夜クンが動いたことは無かった?」

ぞわっ!

 全身に鳥肌が立った。
 月夜(つきや)はアイツの名前だ。
 もう1人のボクの…。
「…いえ、最近は大人しく中にいますよ」
 震える声でそう言うと、二人は顔を見合わせた。
「実は最近、ちょっとおかしな事件が起きててね。こう言うのも心苦しいんだが…月夜くんが関係しているんじゃないかと思ってね」
「事件…ですか?」
「ああ。学生を中心に起きている事件でね」
「ちょっとコレを見てくれる?」
 希更さんがカバンからファイルを取り出した。
 ファイルの中身は、新聞の切抜きを集めたものだった。
 繁華街やアーケード街で同時刻、学生達が暴れだした。
 いきなりケンカをはじめたり、また万引きをしたりと様々に暴れて、街は一気に混乱した。
 これは一ヶ月前の出来事。
 次は十日後に事件は起こり、次は一週間後、そして今ではランダムに起こっている。
 短くて1時間後、長くて三日。
 時間も曜日もバラバラながらも、事件は必ず起きている。
「…コレ、同じ人が繰り返しているんですか?」
「ああ、だけど繰り返すヤツを捕まえてても、また別のヤツが暴れだす」
「そうして同じなのは、人数だけ。暴れる理由はバラバラだけど、人数だけは毎回ピッタリ同じなの」
 …確かに、記事を読むと数は合っているようだ。
「…コレが月夜と関係があると考えられているんですか?」
「まあ…そうだな」
「ええ、そうね…」
 2人とも歯切れ悪く答える。
 僕は少し考え、目を伏せ、ファイルを閉じた。
「―この事件、月夜には関係ありません」
 そう断言した。
「…それは確かかね?」
「ええ、絶対です」
 僕は門馬さんの目を真っ直ぐに見つめた。
「確かに月夜が起こした事件に、似てはいます。けれど模倣犯と考えた方が良いですね」
「模倣犯…。以前の月夜クンの起こした事件を真似するなんて…。月夜クンの信奉者かしら?」
 希更さんの言葉に、僕の目がぴくっと動いた。
 考えるよりも先に、体が反応してしまうなんて…情け無い。
「とにかく、この事件は僕達には無関係です。他を当たってください」
 僕は希更さんにファイルを差し出した。
「そっそう。分かったわ」
 2人は納得いってなさそうに顔を見合わせたが、立ち上がった。
「あっ、そうだ。念の為、陽日くんも気をつけて。何かあれば、連絡を」
「…分かりました」
「防犯ブザーを持ち歩いた方が良いわよ。じゃ、またね」
 僕は2人を見送った後、自分の部屋に戻った。
 するとボクがイヤな笑みを浮かべながら、ベッドに座っていた。
「…今の話、聞いてたんだろ?」
「ああ、もちろん。こんな近くで話されちゃ、イヤでも耳に入るさ」
 足を組み、頬杖を付いて、僕を見つめる。
「―で、オレに聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「無いな。あの事件、僕達は無関係だ。それは違いない」
「ハッキリ言うなぁ。何か根拠でもあるのか?」
「お前が動けば、僕は分かる!」
「ははっ。なるほど。そりゃ道理だ」
 ボクは楽しそうに笑い、手を叩いた。
「まっ、その強気に敬意を表して、教えてやるよ」
 笑いを引っ込めると、ボクは立ち上がった。

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【2012/01/11 17:56】 | 【BL風味・ホラー/オカルト短編集】
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