フリーのシナリオライターとして活動しています
 夢の中で、僕はボクに出会う。
 僕と同じ姿、声をしながら、もう1人のボクは正反対の性格をしていた。

―よぉ。

 軽々しく声をかけてきても、僕は顔を背け、ムシをした。

―何だよ。つれねーな。昔はよくオレに泣きついてきてたのに。
―うるさいな。

 あくまで顔は背けたまま、僕は小声で呟いた。

―何か困ったことがあるたび、オレを頼ってきてさ。可愛かったのに。

 向こうを見ずとも分かる。
 きっとわざとらしく、肩を竦めているんだろう。

―…だがな。

 急に間近で声が聞こえて、思わず顔を上げてしまった。
 間近にあった、ボクの顔。
 ニヤッとイヤな顔で笑う。

―オレを避けてもムダだぜ? オレ達は『同じ』なんだからな。
―っ!? うるさいっ! 消えろ!

 手を振り上げると、ボクの姿は闇に溶け込み、消えた。

―おっと、危ない危ない。

 しかし声は相変わらず聞こえたままだ。

―気をつけろよ。お前に眼をつけているヤツは結構いるからな。
―お前だってそうだろう! 僕を不幸にしたクセに!
―それは心外だな。オレはお前を守る為に、動いただけなのに。
―黙れっ!
―はいはい。それじゃあ、兄貴。またな。



 目覚めは最悪だった。
 ボクの夢を見るなんて…。
 それでも朝はきている。
 僕は起きなきゃいけない。
 1人暮らしをしているからと言って、何もしないと生きてはいけない。
 シャワーを浴びて、歯を磨いた。
 着替えて朝食を作る。
 トーストとヨーグルト、それに目玉焼き。
 目玉焼きはトーストの上に置いて食べる。
 僕はこの食べ方が好きだった。
 ボクの方は別々に食べるのが好きみたいだけど…。
「って、ダメだ。あんなヤツのこと考えちゃ…」
 ボクのことを考えることは、心を許すことにつながる。
 もう心を許しちゃいけない。
 僕は自分1人で生きていかなきゃいけない。
 でないと…。

ピンポーン

 インターホンの音で、意識が現実に戻った。
 玄関先のモニターを見ると、顔見知りの男女がいた。
 僕はすぐに玄関に行った。
「お久し振りです、門馬(もんま)さんに希更(きさら)さん」
「久し振りだね、陽日(はるひ)くん」
「久し振り、ハルくん」
 50代の男性が門馬さん。
 30代の女性が希更さん。
 2人とも刑事で、昔…僕とボクがお世話になった人だった。
「ちょっといいかな?」
「伝えたいことがって、今日は来たの」
 2人は笑顔だが、どこか緊張感がある。
「はい、どうぞ」
 だから僕は不安になりながらも、部屋の中に入れた。
「マンションでの1人暮らしには慣れたかね?」
「ええ、何とか。いろいろと大変なことは多いですけど」
「あら、でもちゃんと朝食を作って食べているなんて感心だわ。アタシなんてめんどくさくって、しょっちゅう抜いちゃうから」
「あっ、すみません。今片付けます!」
 慌てて食器を下げて、コーヒーカップを二つ棚から取り出した。
「お2人とも、ブラックコーヒーでよかったんですよね?」
「ああ、すまないね」
「お願いね~」
 コーヒーを淹れながら、僕はいろいろな考えを巡らせていた。
 まさかまたボクが何かしたのか?
 …でもそんなことない。
 そう、信じたい!

スポンサーサイト

【2012/01/11 17:51】 | 【BL風味・ホラー/オカルト短編集】
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック