フリーのシナリオライターとして活動しています
「…何でしょうか?」
「動くな」
 なっ何事? 
 デスの行動は突発過ぎて、理解が追い付かない。
 戸惑っている間に、首元にチャラっと金属音がした。
「えっ…?」
 視線を自分の胸元に向けると、黒い十字架があった。
 金属音はチェーンの音だったのか…じゃなくて!
「えっえっ? 何ですか? コレ」
 十字架を手に取ると、ひんやり冷たい。
 けれど月の光に反射して、まるで彼の眼のような漆黒の輝きを放っている。
「持っていろ」
 そう言い放つと、今度は後ろから抱き締めてきた。
「あのぉ、プレゼントなら喜んで貰いますけど…そう思っても良いんですか?」
「ああ」
 間近で聞こえるデスの艶のある低い声に、背筋に甘い痺れが走る。
「めっ珍しいこともあるもんですね。最近頑張っているご褒美ですか?」
「それもあるな」
 それもってことは、まだあるのか。
 でも別に今日は特別な日じゃない。
 僕の誕生日でもないしなぁ…と言うか、誕生日にデスからプレゼントをもらったことなんて一度もない。
 いつもの彼特有の気まぐれだろうか?
 デスは僕の顔の近くで、ニヤッと笑う。
「嬉しいか? 主人からの贈り物は」
「まあビックリはしましたけれど、素直に嬉しいですよ」
 後ろから抱き締められているせいか、それとも気持ちのせいか、全身が温かい。
 気まぐれでも、こういうことをされるのは嬉しい。
「でも本当にどうしたんですか?」
「首輪のつもりだ」
 …これはまた、意外な言葉が出てきた。
 首輪…所有の印か。
 キスマークや痣はいくらでも隠せるしな。
「誰に見せつけるつもりで、こういうことをしようと思ったんです?」
「いろいろなヤツだ。お前は少し、無防備過ぎるからな」
 デスは暗にラバーのことを言っているんだろうか? 
 でもちゃんときっぱり断っているんだけどなぁ。
「仲間だと思うと、お前は気が緩むからな。少しは気を付けてみたらどうだ?」
「はあ…」
 と言いましても、幹部以外には滅多に人にも会わないのだけど…。
 たま~に会う仲間ぐらいは、気を許しても良いのではないかと思う。
 でもデスが嫉妬しているのが嬉しく思うので、言葉には出さない。
 執着心を見せてくれることなんて滅多にないし。
「ちなみにその、ラバーには?」
「アイツに何であげなくちゃいけない?」
「えっ、だってその…」
 ラバーも僕と同じで、デスと体の関係を持っている。
 彼の中で、僕とラバーは同じ位置だと思っていたからだ。
「…お前、気付いていないのか?」
 急に不機嫌な声が聞こえてきたので、顔だけ振り返る。
「何がですか?」
「……いや、何でもない」
 途中で止められると、非常に気になるんだけど…。
 でもそこで闖入者が現れた!
「マジシャン、デス! 何してんだよ!」
「わっ!」
「…ラバー」
 闖入者ことラバーは、僕とデスの間に割って入った。
 デスの眼が不機嫌そうに僅かに吊り上る。
「らっラバー? 突入は?」
「チャリオットとストレングスが今している。ストレングスは先の仕事が終わって、こっちに急遽参加することになったんだって」
 ラバーは僕の腕に絡み付き、デスを睨むように見ながら説明を続ける。
「それでオレはこっちに合流することにしたんだ。なのにいくら二人っきりだからって、仕事中に何してんだよ!」
「めっ面目ないです」
 夜の屋上に、ラバーのキンキン声が響く。
 ちなみにストレングスは『力』。
 チャリオットとパートナーを組むことが多く、ストレングスもまた戦闘部隊だった。
 現場から大きな爆発音と、複数の人間の悲鳴が響いてきた。
「っと、合図ですね」
「行くか」
「だね」
 僕とデス、ラバーは現場に視線を向けた。
 とそこで、ラバーが僕の十字架に気付く。
「あれ? マジシャン、その十字架どうしたの?」
「えっ! えっと…」
 僕は何と答えたらいいか分からず、ついデスに視線を向けてしまった。
 その行動を見て、ラバーの表情が引きつる。
「もしかして……デスに貰った?」
「あ~…うん」
「ムっ!」
 瞬時に怒りの表情になったラバーはデスを睨むも、彼の視線は現場に向かったまま。
「らっラバーには僕から買ってあげる」
「…それなら良いけど」
 そう言ってぎゅうっとしがみついたかと思うと、にっこり微笑む。
「どうせならペアの指輪が良いな。お互いの役名入りのとかさ」
 …ラバー、乙女なのは仕事のせい? 
 役職が私生活にまで影響しているんだろうか?
「いっいや~、それはちょっと恥ずかしいかも」
「え~? じゃあオレからマジシャンにプレゼントするから、絶対つけてよね?」
「…オフの日ならね」
「えっー!」
「いつまでしゃべっている。行くぞ」
 デスはコートを翻し、扉へ向かう。
 僕は助かったとばかりに話題を変える。
「だって。旅行の為にも頑張ろう?」
「そうだな。ちゃっちゃと終わらせて、マジシャンにいっぱい甘えよーっと」
 …いや、できればほっといてほしい。
 もしかしなくても僕の休日って、この二人から解放される日なのでは? 
 と思わなくもなかった。



【終わり】

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【2012/01/05 12:18】 | BL・<Fascinated by the darkness>
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