BL・<Fascinated by the darkness>・36

2012.01.05(12:18)

「…何でしょうか?」
「動くな」
 なっ何事? 
 デスの行動は突発過ぎて、理解が追い付かない。
 戸惑っている間に、首元にチャラっと金属音がした。
「えっ…?」
 視線を自分の胸元に向けると、黒い十字架があった。
 金属音はチェーンの音だったのか…じゃなくて!
「えっえっ? 何ですか? コレ」
 十字架を手に取ると、ひんやり冷たい。
 けれど月の光に反射して、まるで彼の眼のような漆黒の輝きを放っている。
「持っていろ」
 そう言い放つと、今度は後ろから抱き締めてきた。
「あのぉ、プレゼントなら喜んで貰いますけど…そう思っても良いんですか?」
「ああ」
 間近で聞こえるデスの艶のある低い声に、背筋に甘い痺れが走る。
「めっ珍しいこともあるもんですね。最近頑張っているご褒美ですか?」
「それもあるな」
 それもってことは、まだあるのか。
 でも別に今日は特別な日じゃない。
 僕の誕生日でもないしなぁ…と言うか、誕生日にデスからプレゼントをもらったことなんて一度もない。
 いつもの彼特有の気まぐれだろうか?
 デスは僕の顔の近くで、ニヤッと笑う。
「嬉しいか? 主人からの贈り物は」
「まあビックリはしましたけれど、素直に嬉しいですよ」
 後ろから抱き締められているせいか、それとも気持ちのせいか、全身が温かい。
 気まぐれでも、こういうことをされるのは嬉しい。
「でも本当にどうしたんですか?」
「首輪のつもりだ」
 …これはまた、意外な言葉が出てきた。
 首輪…所有の印か。
 キスマークや痣はいくらでも隠せるしな。
「誰に見せつけるつもりで、こういうことをしようと思ったんです?」
「いろいろなヤツだ。お前は少し、無防備過ぎるからな」
 デスは暗にラバーのことを言っているんだろうか? 
 でもちゃんときっぱり断っているんだけどなぁ。
「仲間だと思うと、お前は気が緩むからな。少しは気を付けてみたらどうだ?」
「はあ…」
 と言いましても、幹部以外には滅多に人にも会わないのだけど…。
 たま~に会う仲間ぐらいは、気を許しても良いのではないかと思う。
 でもデスが嫉妬しているのが嬉しく思うので、言葉には出さない。
 執着心を見せてくれることなんて滅多にないし。
「ちなみにその、ラバーには?」
「アイツに何であげなくちゃいけない?」
「えっ、だってその…」
 ラバーも僕と同じで、デスと体の関係を持っている。
 彼の中で、僕とラバーは同じ位置だと思っていたからだ。
「…お前、気付いていないのか?」
 急に不機嫌な声が聞こえてきたので、顔だけ振り返る。
「何がですか?」
「……いや、何でもない」
 途中で止められると、非常に気になるんだけど…。
 でもそこで闖入者が現れた!
「マジシャン、デス! 何してんだよ!」
「わっ!」
「…ラバー」
 闖入者ことラバーは、僕とデスの間に割って入った。
 デスの眼が不機嫌そうに僅かに吊り上る。
「らっラバー? 突入は?」
「チャリオットとストレングスが今している。ストレングスは先の仕事が終わって、こっちに急遽参加することになったんだって」
 ラバーは僕の腕に絡み付き、デスを睨むように見ながら説明を続ける。
「それでオレはこっちに合流することにしたんだ。なのにいくら二人っきりだからって、仕事中に何してんだよ!」
「めっ面目ないです」
 夜の屋上に、ラバーのキンキン声が響く。
 ちなみにストレングスは『力』。
 チャリオットとパートナーを組むことが多く、ストレングスもまた戦闘部隊だった。
 現場から大きな爆発音と、複数の人間の悲鳴が響いてきた。
「っと、合図ですね」
「行くか」
「だね」
 僕とデス、ラバーは現場に視線を向けた。
 とそこで、ラバーが僕の十字架に気付く。
「あれ? マジシャン、その十字架どうしたの?」
「えっ! えっと…」
 僕は何と答えたらいいか分からず、ついデスに視線を向けてしまった。
 その行動を見て、ラバーの表情が引きつる。
「もしかして……デスに貰った?」
「あ~…うん」
「ムっ!」
 瞬時に怒りの表情になったラバーはデスを睨むも、彼の視線は現場に向かったまま。
「らっラバーには僕から買ってあげる」
「…それなら良いけど」
 そう言ってぎゅうっとしがみついたかと思うと、にっこり微笑む。
「どうせならペアの指輪が良いな。お互いの役名入りのとかさ」
 …ラバー、乙女なのは仕事のせい? 
 役職が私生活にまで影響しているんだろうか?
「いっいや~、それはちょっと恥ずかしいかも」
「え~? じゃあオレからマジシャンにプレゼントするから、絶対つけてよね?」
「…オフの日ならね」
「えっー!」
「いつまでしゃべっている。行くぞ」
 デスはコートを翻し、扉へ向かう。
 僕は助かったとばかりに話題を変える。
「だって。旅行の為にも頑張ろう?」
「そうだな。ちゃっちゃと終わらせて、マジシャンにいっぱい甘えよーっと」
 …いや、できればほっといてほしい。
 もしかしなくても僕の休日って、この二人から解放される日なのでは? 
 と思わなくもなかった。



【終わり】

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