フリーのシナリオライターとして活動しています
 やっぱり昨夜の噛み付きは、キスマークを見つけられたから、だったか。
 …もう乾いた笑いしか出てこない。
「マジシャンはデスの言うことやることには、一切逆らわないの?」
「うっう~ん。まあ、ね。何度も言っているけど、僕は彼のモノだし。それに本当にイヤだと思うことは強制されないし」
 とは言え、僕は彼絡みのことではいろんな感覚がマヒしてしまっているので、本当にイヤなことが何なのかは、自分でも理解していないんだけど。
 ラバーは僕を真っ直ぐに見ながら、可愛い顔をしかめた。
 相変わらず今日も天使のように可愛いなぁ。
「マジシャンはデスにはMだけど、オレにはSだな」
 …しかし言うことは、小悪魔だ。
「えっ? 僕、ラバーには甘いと思うけど?」
 『デスにはM』と言う部分は、あえて触れなかった。
 …確かにマゾな部分もあるしな。
「甘いところもあるけど、イジワルなところもある。アメとムチって言うんだっけ? そういうの、上手く使い分けている」
「そっそうかな?」
「そうだよ。…まっ、良いけどね」
 そう言ってラバーはロビーに向かって歩き出した。
「オレ、サドってキライじゃないし? 痛いのも苦しいのも、気持ち良いって知っているから」
「ラバー、朝から何言ってんの?」
「うん。だから気長に待つことにする。オレ、待つのは慣れているから」
 ニヤッと笑いながら、ラバーはロビーに入って行った。
「気長に待つって……」
 まさか僕がデスに捨てられるのを、だろうか? 
 いや…、多分、そう……なんだろう。
 僕は深くため息をつきながら、紙袋を持ち直し、自分の部屋に入った。



 最近よく思う。
 鷹近の選択の時、もし僕が自由の身を選び取ったら、休みも取り放題だっただろうな、と。
「そうなると勿体無いことをしたかな?」
「何がだ?」
 思わず呟いた言葉だったが、デスに聞こえてしまった。
「……いえ、何でも」
 僕はすかさず彼から視線を外した。
 今は深夜、僕とデスは街中にある高層ビルの屋上へ来ていた。
 フールの失敗を払拭する為に。
 今回の仕事内容はとある麻薬取引の現場に行き、そこにいる者達を全員殺すことだった。
 フールはまず麻薬を買う側を装い、大本を探り出すのが役目だった。
 ところが途中で相手に不信感を抱かれてしまい、情報を探れなくなったとのこと。
 なので僕とラバーがフールの役目を引き継ぎ、情報を集めた。
 大本を探った後は、今夜の取引についてのことを調べた。
 集めた情報はデスからハーミットへ渡り、そしてエンペラーの命が下った。
 そして仕事をしているわけだけど……何か最近、体の動きが鈍くなっている気がする。
 …いや、原因は分かっていた。
 再び三人暮らしをしているのだが、デスの夜の相手と、ラバーとの攻防戦を毎日のようにしているからだ。
 ラバーはあの一件以来、何かと僕を誘ってくるので、僕は逃げるのに必死。
 …あの小悪魔ぶりは本当に参る。
 デスの相手は肉体的に、ラバーの相手は精神的にキツイ。
 これがほぼ毎日繰り返されれば、いくら僕だって疲れは溜まる。
 まあラバーがデスの相手をしないだけ、マシかもしれないけど。
「旅行は温泉が良いですね。人が滅多に訪れない山奥の隠れ家的みたいな所で、ゆっくりしたいものです」
「ラバーに言え」
「言ったら年寄り臭いと言われましたよ」
 旅行の行先については、未だに決まっていなかった。
 ラバーはテーマパークを回るか、外国へ行きたいらしい。
 まあ彼らしいと言えばそうだけど、僕はゆっくり休みたかった。
「デスはどこがいいですか?」
「俺はどこでもいい」
 …そう言うと思いましたよ。
 でも本当なら僕とラバーだけだと思っていたのに、デスまでついて来るとは驚きだ。
「三人で旅行なんて久しぶりですね。デスまで一緒とは珍しい」
「そうか?」
「ええ。いつもなら僕とラバーの二人だけっていうのが多いですから」
 僕とラバーは滅多に会えない分、まとまった休みが取れた時は二人で旅行することが多かった。
「まあ同行するのがデスならば、ラバーも文句言わないでしょう」
「それはどうかな?」
 しかしデスはフッと笑い、メガネの奥の眼を細めた。
 あっ、バレてたか。
 デスが同行すると言い出した時、ラバーはかなり動揺した。
 けれどデスの一睨みで黙ったけれど……。
 僕と二人っきりで旅行できるのはかなり久し振りだと喜んでいた分、落ち込みも激しかったな。
「それにしても合図はまだですかねぇ」
 先鋒部隊はラバーとチャリオットが行っていた。
 僕達は取り引き現場の向かいのビルにいるので彼らが合図を出し次第、移動&攻撃に移る。
 小型の双眼鏡で覗くと、少し騒ぎ出したみたいだ。
「あと数分後って感じですね。準備を…」
 とそこまで言って、背後にデスの気配を感じた。
 僕の集中が逸れている間に、いつの間にか後ろに回っていたらしい。

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【2012/01/04 08:02】 | BL・<Fascinated by the darkness>
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