フリーのシナリオライターとして活動しています
「もしかして…」
 いや、もしかしなくても、そうなのだろう。
 思い当たることを考えていると、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「マジシャン、大丈夫?」
 入って来たのはフールだった。
「ええ。会議、退席してすみません。すぐに戻りますから」
「あっ、会議は中断したから急がなくてもいいよ」
「えっ?」
 ソファーから立ち上がった僕を、フールは両手を上げて止めた。
「ハーミットにエンペラーから連絡が入ったんで中断。多分他の仕事で、何かあったんだろうね」
 参謀役のハーミットは僕以上の多忙だな。
 でもそうなると、総括役のエンペラーなんて忙殺なみだろう。
 まとめ役も大変だなぁ~と思っていると、フールの視線に気付いた。
 ジッと見られている。
「ん? まだ何か?」
「いや、さっきのラバーの様子が変だったからさ。いくらマジシャンのことスキスキでも、噛みつくなんておかしいと思って」
 ぎくりっ。
 フールは固まった笑みを浮かべる僕に近付いて来る。
 琥珀色の眼に、好奇心に満ちた光を浮かばせながら。
 危険を感じて後ずさるも、足がソファーに当たってしまう。
「さしずめデスに付けられたキスマークを見つけられちゃった、ってところかな」
「ぐはっ!」
 核心をつかれ、ダメージを受けた。
 その場でソファーに倒れ込む僕を見て、フールは笑い飛ばす。
「アハハ。キミも苦労するねぇ」
 …しかしよく分かったな。
 僕はついさっき気付いたのに。
 ラバーに確認しなくても分かってしまった。
 あの時、ラバーはデスに付けられたキスマークを見つけてしまったのだろう。
 それで嫉妬心が出て、思わずキスマークの上から噛み付いたのだ。
「マジシャンが行った後、デスとラバーの間で火花がバッチバチ。どうしようかとハーミットと困っていたら、タイミングよくエンペラーから連絡が入って助かったよ」
「そっそうですか。…まあラバーが僕とデス、どっちに怒っているのかは分かりませんけどね」
 僕を抱いたデスに怒っているのか、それともデスに抱かれた僕を怒っているのか。
 どっちに嫉妬しているのか分からないのがアレだけど、確認する勇気のない僕は本当にヘタレだな。
「多分怒っているのはデスの方だと思うねぇ。デスの付けたキスマークに、上書きしたのが何よりの証拠でしょ?」
「…そうでしょうか?」
「マジシャンったら。あんなにラバーからアプローチされてて気付いていないの?」
 フールは呆れたように言いながら、腰に両手を当てた。
「いや、それは…」
 僕はフールから視線を外す。
 何となくは気付いているものの、分からないフリをしている負い目があった。
「ボクはさ、ラバーがデスと体の関係を持っているのって、彼から誘っていると思っているんだ」
 そう言ってフールは僕の隣のソファーに座った。
 ソファーの上に足を乗せ、言葉を続ける。
「デスは確かにラバーが幹部となるよう、彼を躾けた。けれどその後はセックスする必要がなかったし、デスは必要じゃないことは絶対にしないしキライだろう?」
「まあそうですね」
 僕もソファーに座り直し、フールを見た。
 彼は珍しく真剣な表情で語る。
「でもデスはマジシャンを抱く。しかしマジシャンはラバーを抱いてくれない」
「そっそれは…!」
 彼とは一線を越えたくなくて…それに僕はデスの物だ。
 彼の許し無しに、他人と体の関係を持っていいものかと悩んでいた。
 まあ彼以外の人間とは、今まで一度もないんだけど…。
 僕の考えに気付いたように、フールは苦笑した。
「デスは執着心が強いからね。マジシャンの迷いも分かるよ。それはさすがのラバーだって、気付いていると思うし」
「…で、しょうね」
「強引にキミとセックスすれば、デスに殺されるだろうね。ラバーは」
「僕だって殺されますよ? 所有物が勝手に動くのを、あの人快く思っていませんし」
「いやぁ、それはどうだろうね?」
 フールはニヤッと笑う。
 …何かイヤな笑い方だな。
「キミはせいぜいボッコボコにされるぐらいで、命までは取られないと思うけどなぁ」
 どっちにしろ、地獄を見るのか。
 背筋に冷や汗が流れる。
「ラバーはずっとデスとマジシャンの傍にいたから、そうなることは分かっている。だからマジシャンと唯一セックスできるデスと寝ているんだと思う」
「……あの、ちょっと理解に苦しむんですが」
 僕がデスとセックスしているから、ラバーはデスとセックスしている…何故? 
 頭の中にはてなマークが飛び散る。
「さっきの噛み付きと同じことだよ。追い求めているんだ。だからデスの中のマジシャンを求めて、誘っているんじゃないかな?」
「はあ…」

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【2011/12/30 18:59】 | BL・<Fascinated by the darkness>
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