フリーのシナリオライターとして活動しています
「フール、お久しぶりですね」
 フールも笑顔で手を振ってくれた、が。
「やあ、マジシャン。昨夜は仕事とデスの相手、疲れただろう?」
「…相変わらずですね、キミは」
 このキレイな笑顔で毒舌ぶりは変わっていない。
 だからこそフールと呼ぶに相応しい人物ではあるのだけど…。
「マジシャンの部屋に行ったら、デスがいてびっくりしちゃった。襲わなくて良かったぁ」
「キミは何を考えているんですか?」
 僕は思わず笑顔で低い声を出した。
 久し振りに会う同僚を『襲う』なんて、冗談でも言うことじゃない。
 ただでさえ僕らは、殺しを仕事としているのに。
「アハハ」
 フールはふざけてなのか本気なのか、分からない言動が多すぎる。
 しかしラバーではなく、フールが僕とデスを間違って襲撃しそうになったとは……想像しただけでも血の気が引く。
 一歩間違えれば、僕の部屋が戦場になっていたのか。
「マジシャン、コイツの相手するのやめた方がいい。疲れる」
 ラバーはイヤ~そうな顔で言った。
 ちなみにラバーとフールの相性はあまりよくない。    
 二人とも猫に近いタイプだが、性格が真逆だ。
 懐く人にはとても懐くのがラバー、フールは自由気ままで何モノにも囚われない。
 そんなフールを少し、羨ましく思う。
 けれどその思いを隠す為に、ラバーに微笑みを見せる。
「そうだね。でも四人も集まってどうしたの?」
「このバカが、ドジッた」
 ラバーはますます顔を歪めて、フールを顎で示す。
「ええっ? 仕事でミスったんですか?」
 流石の僕も眼を丸くする。
 いくら幹部とは言え、仕事上のミスはいろんな意味で命の危険があると言うのに…。
 フールはヘラヘラと笑っている。
「うん、ゴメンねぇ。だから悪いんだけど、早速仕事に入ってくれるかな?」
「はっ?」
 昨夜の今日で? 
 まだ先の仕事から二十四時間も経っていないのに?
「えーっ! 絶対イヤだ! マジシャンと遊ぶ約束してたのにぃ!」
 ラバーはソファーの上でじたばた暴れ出す。
「どっどういうことですか? デス、ハーミット」
 二人を見ると、相変わらずの無表情と胡散臭い笑みが返ってきた。
「そのままの意味だ。早速今夜から仕事をはじめる」
「ええっ!」
「エンペラーからの正式な命令だよ。その代わり、この件が片付いたら旅行OKだって」
 ハーミットの言葉を聞いて、ラバーの動きがピタッと止まる。
「マジで? どこでもいい?」
「そりゃあもう。でも十日ぐらいしか休ませられないからね」
「それなら良いや。マジシャン、仕事頑張ろう!」
 そう言って嬉しそうに笑顔で抱き着いてくるラバー。
「ハハッ…」
 僕は乾いた笑いをするしかなかった。…本当にどこまで人使いが荒いんだろう?
 と思っても誰にも通じないので、僕は諦めて仕事に入ることにした。
 ハーミットから書類を受け取り、フールから説明を受ける。
 ちなみにその間、ラバーはずっと僕の膝の上に座っていた。
 ちょっと体は辛かったけれど、ここでラバーの機嫌を損なうのは面倒だったので黙っていた。
「ねぇ、マジシャン。ここなんだけど…」
 ラバーが書類の一部分を指さしながら振り向いて、ピタッと動きを止めた。
「ん? どこ?」
 僕は首を伸ばして、ラバーの手元を見た。
「ああ、ここはね…って、どうかした?」
 ラバーの目線が僕の首元で止まっていた。
 するとだんだんジト眼になっていき、いきなり首に腕を巻き付けてきた。
「ラバー? どうか…」
 最後まで言い終わる前に、ラバーの指が服の襟にかかり、下に引く。
 そしてガブッと首に噛みつかれた!
「イッタ―!」
 思わず声を上げ、ラバーを押し離した。
「ん?」
「マジシャン、どうかした?」
 ハーミットとフールがキョトンとした顔をこちらに向けてくる。
「らっラバーに首噛まれました…」
 僕は涙目で首筋を手で押さえた。
 ジワジワと熱が湧いてくる。
 もしかしたら血が出ているかもしれない。
「ラバー、何している?」
「えへへ。マジシャンの首が美味しそうだったから、つい」
 デスの冷たい問い掛けに、ラバーは顔で笑って眼で笑わないまま答えた。
「…ちょっと失礼します」
 僕は書類をテーブルに置くとフラフラと立ち上がり、退室した。
 自室に入って洗面所の鏡で首筋を確認する。
 ラバーの歯形がくっきり残っていて、そこから血がうっすらと滲んでいた。
「うわぁ…血が出てる」
 リビングに戻り、部屋の備え付けの救急箱を使って手当てをするも、痛みがジンジン響く。
 手当てを終えた首を押さえながら、僕はラバーが何故あんな行動をしたのか考える。
 確かあの時、ラバーは僕の首を見て固まっていた。
 その次の行動が噛み付きとなったワケで、僕の首にはその時…。

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【2011/12/29 00:31】 | BL・<Fascinated by the darkness>
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