BL・<Fascinated by the darkness>・24

2011.12.24(00:26)

「ん~まあそれなら良いかな」
 そう言って笑顔で僕の腕に絡み付いてくる。
 仕事が終わったことでほっとしたのか、身にまとう空気が柔らかくなっていた。
「もたもたするな。行くぞ」
「はいはい」
「はーい」
 僕は仕事が終わって、気が抜けていたんだろう。
 前を歩くデスが突然止まったのに対応できず、背中に顔から激突してしまった。
「ぶっ! デス、いきなり何で立ち止まるんですか?」
「…ラバー、つけられたな」
「はい?」
「えっ?」
 デスの視線は井戸ではなく、別の方向を向いている。
 僕とラバーは視線の先を追った。
 そこには鷹近がいた。
 片手にあの茶封筒を持ちながら、驚愕の表情を浮かべてこっちを見ている。
 きっと設計図を返しに来たところだったんだろうな。
 僕らと同じく正面からではなく、別の秘密の通り道を使ったんだろう。
 そしてラバーを見つけてコソコソ追って来た、というワケか。
「げっ! もう二度と見たくないと思っていたのに」
 ラバーは心底イヤそうに、僕の背後に隠れた。
「お前ら…遊真に恋? それに叔父さんまで…。何でこんな所にいるんだ? と言うよりその格好は一体……」
 そこで鷹近の携帯電話が鳴った。
 僕らに視線を向けたまま、鷹近は電話に出た。
「…もしもし? えっ…ウソ、だろう?」
 きっと父親の訃報を聞いたのだろう。
 みるみるうちに顔色が悪くなり、体も震え出す。
 そしてついには携帯電話を落としてしまった。
 僕はすかさず銃で携帯電話を破壊した。
 余計なことを言われる前に、壊しておくにこしたことはない。
 それを見て、鷹近は眼を見開いた。
「あっああ…! お前ら、なのか? 親父を殺したのはっ…!」
 鷹近は頭の回転は悪くなかったみたい。
 けれど心はあまり強くなかったみたいで、その場に崩れ落ちてしまった。
「―そうだよ」
 鷹近の問いに、ラバーが答えた。
「正確にはマジシャンが殺したんだけど」
「マジ…シャン?」
「あっ、僕のこと」
 僕は普段通りに笑い、手を上げて見せる。
「ゴメンね。仕事だったんだ」
「仕事…? 親父を殺すことが、か?」
「うん、そう」
 あっさりと認めると、鷹近はヒッと息を飲んだ。
 その様子を見てラバーはクスっと笑い、一歩前に出た。
「その為だけに、オレ達はアンタに近付いたんだ。でも悪い気はしなかっただろう? 良い思いさせてあげたんだから」
「れっ恋……」
 親友どころか恋人にまで裏切られ、鷹近はショックを隠せないでいる。
「マジシャン、ふざけるな。とっとと始末しろ」
「はいはい」
 分かってはいたけれど、デスはここで鷹近を始末する気だ。
 僕はスタスタと鷹近の前に進み、銃を額に当てた。
「ゴメン。デスの言うことには逆らえないんだ」
「ひっ! まっ待ってくれ! お前達のことは誰にも言わない! だから命だけは助けてくれ!」
 そう言って土下座をしてきた。
 僕は銃を鷹近に向けたまま、顔だけデスの方を向く。
「―だ、そうです。どうします? デス」
「そうだな」
 デスは腕を組み、眼を細めた。
 …絶対、妙なことを考えているに違いない。
 十五年も傍にいると、そういう考えは何となく伝わってくる。
「マジシャン、お前と引き換えなら良いぞ」
「……はい?」
 やっぱり言い出した。
「お前をここで捨てても良いのなら、そいつを引き取っても良い」
「………………」
 オイオイオイっ! 
 ツッコみどころがありすぎて、逆に何も言えない。
 つまりアレだろうか? 
 僕を捨てる代わりに、デスは彼を引き取ると…って、アレ? 
 そう言ってたよね? 
 僕、混乱してる? 
 まあ顔を見られたし、生かしておくなら傍に置いた方が…って、違う!
「えっと、僕はリストラでしょうか?」
「まあそうなるな」
 うわっ。
 組織からリストラされたら、どうなるんだ? 
 まあ上の決定なら後から始末屋に追いかけられることもないし、フリーなら自分で仕事を選べる。
 …って、いかんいかん。
 問題はそこじゃない。
「デス、僕を捨てる気ですか?」
「お前がそう望むなら、そうなるな」
 彼から……離れられる。
 それは今まで考えたことがないと言えば、嘘になる。
 彼の傍は暗くて冷たい。
 それでも一緒に居続けたのは、彼のことを愛しているから。
 けれど一生実ることのない感情を持ち続けるのには、かなりの精神力が必要なわけで…僕は多少なりと疲れていた。
 彼に秘めたる思いを打ち明けられないことや、レンと彼の関係についても、言いたくても言えないジレンマに悩まされ続けた。

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