フリーのシナリオライターとして活動しています
「ん~。でも家ン中、カラクリだらけだしなぁ」
 それでも迷いはあるらしくて、頭をかいている。
 僕はキョトンとし、首を傾げて見せた。
「そんなに複雑なの? 落とし穴があるとか」
「ああ、それもある」
 …手口は古いが、威力はあるな。
「そんなにカラクリがあるなら、小さい頃は危なかったんじゃないの?」
「いや、家の見取り図を持たされていたし、昔から仕えているヤツが常に一緒にいたからな」
 なるほど。
 それなら何とか無事に過ごせただろう。
「じゃあ設計図なんかもあるの?」
「ああ、でもそれは親父が管理している書斎の奥にしまわれているけどな」
 父親の書斎の奥、か…。
 いくら遊びに行っても、流石にそこまで深く潜入はできないだろう。
 やっぱり彼に持ってきてもらうしかないか。
 作戦は変更っと。
「ねえねえ」
 僕はニコニコしながら、鷹近の傍ににじり寄った。
「なっなんだよ?」
「その設計図、見てみたい」
「はあ?」
 怪訝な顔をされるのも、想定内。
「恋もさ、そういうの見るの好きなんだよ。鷹近、持ってきてくれない?」
「ムリムリ! 実家に戻るだけでも変な顔されるのに、大事な設計図を持ち出すことなんて絶対できないって」
「黙ってなら大丈夫だろう? お父さんの書斎には平気で入れるんだろう?」
「…まあ入るぐらいは、な」
「それに鷹近は跡継ぎ息子なんだし、黙って持ち出す権利はあると思うよ?」
 まっ、普通に考えれば、正式に受け継ぐまではダメだろう。
 でも鷹近はそう思わない。
「そう…かな?」
 ホラ、ね。
 本当に単純だ。
「そうそう。それに持ってきてくれたら恋、スッゴク喜ぶよ」
 レンのことを言うと、鷹近の表情がいくらか和らいだ。
 今度は惚れた弱みに付けこむ。
「そっそうか?」
 僕は心の中でレンに手を合わせた。
 ―ごめん、レン。
 ケーキ、三個買っていくから。
「そうそう。きっともっと鷹近のこと好きになっちゃうよ。人間、自分の好きな物を与えてくれる人のことは好意を持つだろう?」
「まあそうだよな」
 同意するってことは、気持ちが傾いてきた証拠。
 言葉も明るくなってきたし、もう一押しかな?
「持ってきてくれたら、すぐに返すよ。見るだけでいいからさ」
「うっう~ん、でもなぁ…」
 そこで僕はもう一度レンに心の中で謝った。
 これから言うことはレンが物凄く嫌がりそうなことで、鷹近がとても喜びそうなことだから。
 だけど仕事の方が今は大事。
 笑みを深くし、声をわざとらしく潜める。
「もし持ってきてくれたら……恋とお泊り、できるかもよ?」
「えっ、マジで?」
 鷹近の眼が、光輝く。
 今まではどんなに夜遅くとも、泊まることは絶対にしなかった。
 それは叔父であるイザヤがウルサイからと、レンは言っていたはずだ。
「叔父さんのことは僕が引き受けるから。恋とどこかに泊りに行きなよ」
「恋とお泊り、かぁ」
 ぼや~んと表情が緩んだ。
 きっと鷹近の頭の中では、レンとお泊りしている想像が浮かんでいるんだろう。
「週末だったら良いよ。親友である鷹近なら、安心して大事な弟を預けられる」
「遊真、お前…!」
「感動しているところ悪いけど、設計図と引き換えだということは忘れないで。そういうの見る機会滅多にないし、それだけ逃したくないんだ」
 抱き着いてきそうな気配を察知し、僕は先に言っておいた。
「うっ! まっまあ努力はしてみる」
「頑張って。恋とのお泊りの為に、ね?」
「おっおう!」



「う~ん。とりあえず報告書までとはいかないよなぁ」
「…て言うか、お泊りって何?」
 隣で不穏なオーラをまといながら、レンが三個目のケーキを食べていた。
 帰宅後。
 ケーキを買って帰ったら、レンは大喜びしてくれた。
 リビングで紅茶を淹れてあげて、ケーキを食べているレンに今日の報告をした。
「口約束だよ。どーせ叶うことなんてない」
 僕は笑顔でレンの頭を撫でる。
 カラクリ邸の設計図さえ手に入れば、鷹近に用はない。
 僕らの仕事は設計図を手に入れるまでで、終わればこの街からすぐに出て行くからだ。
「まあね。でもユウマって結構ヒドイよね」
「イザヤの教育のたまものじゃないかな?」
 あっさりと言い返し、僕はにっこり微笑んだ。
「そのケイトは今日、遅いの?」
「ハーミットとの打ち合わせだからねぇ。遅くなるかも。先に寝てても良いよ」
「ユウマが起きてるなら、オレも起きてる」
「待ってても別に良いことなんてないよ?」

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【2011/12/17 00:17】 | BL・<Fascinated by the darkness>
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