BL・<Fascinated by the darkness>・16

2011.12.16(18:54)

「ちょうど良かった、鷹近。ちょっと話があるから、午前の授業はサボらない?」
「ああ、良いぜ」
 元より不真面目な鷹近は、すぐに乗ってきた。
 僕達は朝のホームルームを終えた後、人気のない屋上へ来ていた。
 今日も太陽は眩しく輝いている。
 …いろんな意味で、眼に染みる。
「んで、話って? あっ、そういえば恋は?」
「恋は休みだよ。昨夜、休むぐらい激しくしたのは誰だろうね?」
 ジト目の笑顔で言うと、鷹近は顔を赤くしながら苦笑した。
「あっ、ははっ。だって恋、可愛くおねだりしてくるからさ」
 帰りにレンの好きなケーキを買ってあげよう―そう思った。
「でも今朝珍しかったよな。遊真が叔父さんに送られてくるなんてさ」
「出勤時間と合ったんだ。今日は朝から会議なんだって」
 物は言いようだ、と思う。
 嘘は何一つないのだから。
「遊真と恋って、叔父さんと一緒に住んでいるんだっけ?」
「そっ。両親が海外に行っちゃったから、日本に残っている叔父さんを頼りに越してきたんだ。僕も恋も日本が好きだから」
 ―という設定にしている。
 コレはハーミットが考えた設定だが、なかなか良いと思う。
 僕達みたいな男三人組が、一緒に暮らしている理由としては上々だ。
「そうなんだ。でも二人が日本に残ってくれて良かったよ。おかげでオレは恋に会えたんだし」
 そう言って天にも昇りそうな上機嫌ぶりを見せてくる。
 鷹近は今、春を味わっているんだろうな。
 もっともレンは氷河期を体感しているみたいだけど…。
 さて、そんなレンを助け出す為にも僕は頑張らないと。
 チャリオットはターゲットへの攻撃を担当しているが、他にもドジを踏んだ組織の者への仕置きも担当している。
 イザヤは暗に、苛立っていることを言ってきたといっても過言じゃない。
 仕事と夜の相手はまた別。
 それは嫌というほど実感している。
 声なく深呼吸をし、ニコッと微笑む。
「僕達も鷹近に会えて嬉しいよ。今度二人で家に遊びに行っても良い?」
「ああ、良いぜ。いつでも来いよ」
 人懐っこい笑みを浮かべる鷹近は、本当に良いコだと思う。
 …だからこそ扱いやすい。
「でも鷹近のお父さん、代議士だろう? 家の警備とか重要そうだよね」
「あ~まぁな。でもオレはマンションに住んでいるし、気にすんなよ」
「えっ? 鷹近、お父さんと住んでいる所、別なの?」
 前以って知ってはいたけれど、初耳だという表情を浮かべる。
「うん、まあ…」
 鷹近は言い辛そうに、僕から視線を背けた。
「ウチって代々実家住まいなんだけどさ。かたっくるしくて、居辛いんだよな」
「じゃあほとんど実家に帰っていないんだ」
「ここしばらくは帰っていないな」
 ―だけどそこは問題じゃない。
 組織が欲しがっているのは、彼の実家のカラクリだ。
 彼の実家は大昔に建てられた、古くて立派な和風の邸。
 住んでいる者を守る為に、昔ならではのカラクリ邸となっているらしい。
 その為、彼の血族に害をなそうと侵入してきた者は、そのカラクリによって失敗に終わっている。
 その確率、九十パーセントとかなり高い。
 今回のターゲットである彼の父親はその邸に住んでいる為、侵入するには住人だけが知るカラクリの情報が必要なのだ。
 正確にはカラクリ邸の設計図が欲しい。
 それを手に入れるには、彼を使わなければならない。
 外でターゲットを狙うには、こちらのリスクが大き過ぎる。
 家の中ならカラクリの力を信じきっている為、油断しているだろう。
 実際警備員は家の中にはあまり入れず、邸の外を重点にしている。
 後にカラクリ邸の主となる鷹近なら、設計図を持ち出すことは可能なはず―。
 幹部達はそう決定づけ、高校生になれる僕とレンに指令が下された。
 イザヤは今回、僕達のサポート役だ。
 レンは恋人として、僕は親友として彼に近付く。
 そして設計図を手に入れなければ、僕とレンは地獄を見ることになる。
 はあ…。
「でも代々って言うことは、古いおウチ?」
「かなーり古いぜ? 昔ならではカラクリもあるぐらいだしな」
 鷹近は軽く言ったが、そこは重要。
「へぇ、カラクリ邸なんだ。いいなぁ。僕と恋、そういうの好きなんだ」
「ああ、恋も言ってたな。変わっているよな、お前ら」
 まあ正確には好きというより、今回みたいに関わることは多い。
 ターゲットになる者は地位の高い者が多く、自分の命を守ろうと家に仕掛けをする者は少なくない。
「良いな~。実家の方に行ってみたいかも。行けない?」
「えっ? 実家の方?」
 流石に眼を丸くされた。
「うん。鷹近もしばらく帰っていないなら、顔見せに戻ったら?」
「けどなぁ、親父の小言はうるせーし」
 そうは言っているが、戸惑いは隠せていない。
 心の中では帰りたい気持ちがあるのだろう。
 ―僕はそこに付け込む。
「でも同じ学校の友達を連れて行けば、お父さんも安心するんじゃない?」
 少なくとも僕やレンは、親が心配に思うような人間には見えないだろう。
 そう振る舞うことぐらい簡単だ。

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