フリーのシナリオライターとして活動しています
 最近の仕事具合の悪さから、かなり精神的に疲れていたんだろうな。
 その原因は僕にあるし、ここは頑張らないと!
「ととっ…。イザヤは今日、何かあるんですか?」
「ハーミットとの打ち合わせで出掛ける」
 ハーミット―『隠者』とか。
 ハーミットは仕事の作戦を担当している。
 つまりこの仕事はそろそろ大詰めに入ると言うこと。
 本気で今日頑張らないと、ここでポカしたらそれこそ罰が与えられる。
 …いや、そろそろ与えられる罰の種類ぐらいは決められたかもしれない。
「そっそうですか。じゃあレンは一人でお留守番しててね」
「分かった」
「じゃあ僕は学校の準備をしてきまーす」
 この場から逃げるように、僕は自室に向かった。
「…肝が冷えるなぁ」
 ハーミットまで動き出したとなると、もうゆっくりはしていられない。
 ―鷹近にはそろそろ動いてもらおう。
 制服に着替えた後、僕は救急箱を取り出した。
「両手首に包帯って、どんな言い訳しよう?」
 流石に隠さないわけにもいかないので、包帯を巻くことにした。
 長袖を着られる季節で良かった。
「火傷、切り傷、引っかき傷…やっぱりアレルギーかな?」
 もし包帯がズレたとしても、アレルギーだと言えば通るかもしれない。
 うっかり肌に合わないブレスレットでもしてしまったと言えば、何とかなるだろう。
「はあ…」
「ねぇ、ユウマ」
 包帯を巻いている途中で、レンがノックなしに入って来た。
 視線が僕の腕の痣に向く。
「………」
「…………………」
 沈黙が、流れた。
 ナニをされたか、レンは見ただけで分かったようだ。
 恐らく同じことをされた経験を持つからだろう。
「…それ、ケイトが?」
 レンは引きつった表情で、僕の痣を指さす。
「しかいないでしょ?」
 それに部屋にはセックスの跡や匂いが、まだ生々しく残っている。
「レンだって首筋にあるよ?」
「うっそ?」
 レンは慌てて首筋を押さえる。
 髪の毛に隠れてはいるが、キスマークがあった。
「お互い、相手に苦労させられるね」
「ううっ…」
 妙なところで親近感がわいてしまう。
「昨夜、鷹近とはどうだった?」
「とりあえず甘えるだけ甘えてみた。けど肝心の父親のことについては口が堅くって…」
 レンの色仕掛けでも、なかなか情報は引き出せないらしい。
 思わぬところで苦戦しているので、ストレスと疲れが溜まっているようだ。
「そっか。でもレンが甘えてくれた分だけ、機嫌は良くなっているだろう。口が滑りやすくなっている今がチャンスだね」
「それなら良いんだけど……」
 それでもレンは多少なりと悪いと思っているらしい。
 しょんぼりと肩を落とす姿が、いじらしくて可愛い。
 僕はレンの手を引いて、自分の近くに寄せた。
 そして安心させるように、笑みを浮かべて見せる。
「それでどうしたの? 僕に何か用事?」
「あっああ、うん…。昨夜もケイトの相手させられたみたいだし、ユウマの方こそ大丈夫?」
 心配させてしまったか。
 確かにどんどん僕の顔色は悪くなっているからなぁ。
 …誰かさんが毎日心身共にコキ使うから。
「大丈夫だよ。慣れているから」
 僕はそう言ってレンの頭を撫でた。
 相変わらずフワフワで柔らかい髪。
 撫でるこっちも気持ちいい。
「まっ、ハーミットとの打ち合わせが入るぐらいだ。そろそろ夜の仕事が入るだろうから、もうそんなに無茶はしてこない…と思うよ」
 確信はないが…。
 それでも一応、仕事に差し支えることはしないのがイザヤだ。
「そう…。何かさ、ケイトってユウマに情け容赦無いって言うか、遠慮しないよね」
 どっちにしろ、良い意味ではないな…。
 思わず遠い眼になってしまう。
「まあ付き合いも長いし、深いと言っちゃあ深いから」
 十五年間、ずっと一緒だったのだ。
 それでも知らないことの方が多いけど。
「…ずっと聞こうと思っていたんだけど」
「ん?」
 レンは真っ直ぐな瞳で、僕を見つめる。
「ケイトとユウマって、恋人なの?」
「………はい?」
 思いがけない言葉に、笑みが固まった。
 きっとおかしな表情をしているだろう。
「コイ、ビト? 僕と…イザヤ、が?」
 言葉の発音がおかしくなった。
 冷静になろうとするが、どうしても頭の中が真っ白のままで、上手く働いてくれない。
 しっかりしろ、僕! 
 マジシャンの名前が泣くぞ!
「うん。だってずっと一緒だし」
「それは仕事上、そうしなきゃいけないんだけど…」
「セックスだって、ユウマが一番多く相手しているんだろう?」
「それは一番手近…いやいや、身近に僕がいたからに過ぎないよ。それにレンだって相手しているじゃないか」
「でもたまにだけど」
スポンサーサイト

【2011/12/14 19:51】 | BL・<Fascinated by the darkness>
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック