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BL・<Fascinated by the darkness>・14

 最近の仕事具合の悪さから、かなり精神的に疲れていたんだろうな。
 その原因は僕にあるし、ここは頑張らないと!
「ととっ…。イザヤは今日、何かあるんですか?」
「ハーミットとの打ち合わせで出掛ける」
 ハーミット―『隠者』とか。
 ハーミットは仕事の作戦を担当している。
 つまりこの仕事はそろそろ大詰めに入ると言うこと。
 本気で今日頑張らないと、ここでポカしたらそれこそ罰が与えられる。
 …いや、そろそろ与えられる罰の種類ぐらいは決められたかもしれない。
「そっそうですか。じゃあレンは一人でお留守番しててね」
「分かった」
「じゃあ僕は学校の準備をしてきまーす」
 この場から逃げるように、僕は自室に向かった。
「…肝が冷えるなぁ」
 ハーミットまで動き出したとなると、もうゆっくりはしていられない。
 ―鷹近にはそろそろ動いてもらおう。
 制服に着替えた後、僕は救急箱を取り出した。
「両手首に包帯って、どんな言い訳しよう?」
 流石に隠さないわけにもいかないので、包帯を巻くことにした。
 長袖を着られる季節で良かった。
「火傷、切り傷、引っかき傷…やっぱりアレルギーかな?」
 もし包帯がズレたとしても、アレルギーだと言えば通るかもしれない。
 うっかり肌に合わないブレスレットでもしてしまったと言えば、何とかなるだろう。
「はあ…」
「ねぇ、ユウマ」
 包帯を巻いている途中で、レンがノックなしに入って来た。
 視線が僕の腕の痣に向く。
「………」
「…………………」
 沈黙が、流れた。
 ナニをされたか、レンは見ただけで分かったようだ。
 恐らく同じことをされた経験を持つからだろう。
「…それ、ケイトが?」
 レンは引きつった表情で、僕の痣を指さす。
「しかいないでしょ?」
 それに部屋にはセックスの跡や匂いが、まだ生々しく残っている。
「レンだって首筋にあるよ?」
「うっそ?」
 レンは慌てて首筋を押さえる。
 髪の毛に隠れてはいるが、キスマークがあった。
「お互い、相手に苦労させられるね」
「ううっ…」
 妙なところで親近感がわいてしまう。
「昨夜、鷹近とはどうだった?」
「とりあえず甘えるだけ甘えてみた。けど肝心の父親のことについては口が堅くって…」
 レンの色仕掛けでも、なかなか情報は引き出せないらしい。
 思わぬところで苦戦しているので、ストレスと疲れが溜まっているようだ。
「そっか。でもレンが甘えてくれた分だけ、機嫌は良くなっているだろう。口が滑りやすくなっている今がチャンスだね」
「それなら良いんだけど……」
 それでもレンは多少なりと悪いと思っているらしい。
 しょんぼりと肩を落とす姿が、いじらしくて可愛い。
 僕はレンの手を引いて、自分の近くに寄せた。
 そして安心させるように、笑みを浮かべて見せる。
「それでどうしたの? 僕に何か用事?」
「あっああ、うん…。昨夜もケイトの相手させられたみたいだし、ユウマの方こそ大丈夫?」
 心配させてしまったか。
 確かにどんどん僕の顔色は悪くなっているからなぁ。
 …誰かさんが毎日心身共にコキ使うから。
「大丈夫だよ。慣れているから」
 僕はそう言ってレンの頭を撫でた。
 相変わらずフワフワで柔らかい髪。
 撫でるこっちも気持ちいい。
「まっ、ハーミットとの打ち合わせが入るぐらいだ。そろそろ夜の仕事が入るだろうから、もうそんなに無茶はしてこない…と思うよ」
 確信はないが…。
 それでも一応、仕事に差し支えることはしないのがイザヤだ。
「そう…。何かさ、ケイトってユウマに情け容赦無いって言うか、遠慮しないよね」
 どっちにしろ、良い意味ではないな…。
 思わず遠い眼になってしまう。
「まあ付き合いも長いし、深いと言っちゃあ深いから」
 十五年間、ずっと一緒だったのだ。
 それでも知らないことの方が多いけど。
「…ずっと聞こうと思っていたんだけど」
「ん?」
 レンは真っ直ぐな瞳で、僕を見つめる。
「ケイトとユウマって、恋人なの?」
「………はい?」
 思いがけない言葉に、笑みが固まった。
 きっとおかしな表情をしているだろう。
「コイ、ビト? 僕と…イザヤ、が?」
 言葉の発音がおかしくなった。
 冷静になろうとするが、どうしても頭の中が真っ白のままで、上手く働いてくれない。
 しっかりしろ、僕! 
 マジシャンの名前が泣くぞ!
「うん。だってずっと一緒だし」
「それは仕事上、そうしなきゃいけないんだけど…」
「セックスだって、ユウマが一番多く相手しているんだろう?」
「それは一番手近…いやいや、身近に僕がいたからに過ぎないよ。それにレンだって相手しているじゃないか」
「でもたまにだけど」
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