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 わたしの幼馴染は、ちょっと変わったヤツだった。
 キレイな顔をしているのに、その表情は滅多に動かない。
 せめて笑顔を浮かべてほしくて、わたしは小学生時代、少ない知恵を出して、イロイロしてみたが…みんな失敗だった。
「ねぇ、何でそんなことするの?」
 と、ある日、アイツに聞かれた。
 それは手品を見せたら喜んでくれるだろうかと思ってやったみたが、仕込んでいたネタが地面に落ちて、気分まで落ち込んでいた時だった。
「だってお前…全然笑わないじゃないか」
 泣きそうになるのを必死に抑えて、わたしは真っ直ぐにアイツを見つめる。
「お前、せっかくキレイな顔をしているのに、笑わないなんてもったいないだろう?」
「…それ、女の子のキミに言われると、結構複雑なんだけど」
 そう言って遠い目をされた。
「わたしは笑うから良いんだっ! でもお前は全然笑わないじゃないか!」
 でも怒ったり悲しんでいるところは、見たことがあった。
 それはどん臭いわたしが、他のコにイジメられているのを知られた時だった。
「何で黙っていたの?」
 とても不機嫌な顔をされて、わたしはその表情を見るのが始めてだった。
 だから悲しい気持ちもふっ飛んで、嬉しくなってしまった。
「何で笑ってんの? イジメられるのが嬉しいの?」
「そんなワケないだろう。でも…お前のブスっとした顔を見れて、嬉しいんだ」
 正直に満面の笑顔で言うと、今度は哀れみの眼差しを向けられた。
「キミって…本当にバカだね」
「なっなにおー!」
「ったく」
 アイツはため息をつくと、悲しそうな顔になった。
「キミのこと、全部知っているつもりだったのにな…」
 そう呟くと、アイツはわたしを置いて行ってしまった。
「おっ怒ったのかな? それとも呆れたんだろうか…」
 わたしがイジメられても平気だったのは、アイツがいたから。
 昔から変わらず接してくれるアイツがいたからこそ、わたしは耐えられたのだ。
 だからもし、アイツまで離れてしまったら…悲しかった。



 けれど翌日、ケガをしたアイツを見て、その悲しみがふっ飛ぶほどに驚いた。
「おっおまっ…どうしたんだ? そのケガっ!」
「…別に」
 ふいっとそっぽを向いて、アイツは何も言わなかった。
 ―後から知ったことだが、アイツはあの後、わたしをイジメていた男の子達とケンカしたらしい。
 しかも三対一での圧勝だったという…。
「けっケガをしてたなら、寝てた方が良いんじゃないか?」
「…ちょっと聞きたいことがあってさ」
「ん? 何だ?」
 オロオロするわたしとは反対に、アイツは相変わらずの無表情だった。
「キミはボクが笑えば、嬉しいの?」
「えっ? あっああ、嬉しいが…」
「じゃあ…」
 アイツはわたしの両肩を掴み、顔を近付けてきた。
 そして…唇に唇を付けられた。

ちゅっ

「………えっ?」
 驚いて眼を丸くするわたしとはこれまた反対に、アイツは始めて微笑んで見せた。
「あっ、笑った…」
「うん。こうすると嬉しいから、ボクは笑えるみたい」
「なっならお前の笑顔を見たい時は、口を付ければ良いのか?」
 すると一瞬にして、アイツの顔が真顔に戻った。
「…キミ、キスの意味、知らないんだね」
「へっ? キス?」
 人よりどん臭かったわたしには、当時、キスの意味を全く理解していなかった。
 だから口付けのことも、手と手をつなぐようなものだと思っていた。
「まあいいや。キミも嬉しそうだし」
「そっそうか?」
 キスの意味は分からなくても、何となく胸がポカポカとあたたかくなっている。
 顔も熱くなっていくのが、自分でも分かる。
「アレ? 何かヘンかも…」
 鼓動もいつもより早くて、思わず胸に手を当てた。
「ふぅん。キミは考えるよりも、体で反応するタイプか」
「へっ? 何が?」
「ううん。その方がボクにとっては好都合だから」
 そう言ってアイツは笑い、再び唇に唇を付けてきた。
 口付けは甘くて、頭の中が熱くて、ぼ~っとしてしまう。



 …高校生になった今、思う。
 きっとそれは、キスに酔っていたせいなんだと。
 だ・け・どっ!
「お前、よくもファーストキスを奪いやがったなー!」
「何を今更」
 高校生になっても、アイツは変わらなかった。
 相変わらずの無表情で、わたし以外の人とはあまり関わろうとしない。
 それがちょっと悲しいけれど…正直、嬉しかったりもする。
「キミはイヤがらなかったし、ボクはしたかった。だから良かったじゃないか」
 相変わらずあっさりと言いやがる…。
「あの、さ。ずっと聞きたかったんだが…」
「なに?」
「あの後も…今もだがキスをし続けているってことは、お前……わたしのことが好き、なのか?」
 恐る恐る聞いてみた。
 あの後、唇へのキスは好きな人にしかしないことを知った。
 けれど直接、コイツに聞く勇気はなかった。
 だけど今なら…。
「はぁ…」
 意気込んで聞いてみたものの、アイツは呆れた顔でため息をついただけだった。
「なっ!? 違うのか?」
「―違わない。と言うか、今頃気付いたのにビックリしただけ」
 …お前の驚き方は、そうなのか。
「まあどん臭いキミにハッキリと言わなかったボクもいけないね」
 そう言って、わたしを真っ直ぐに見つめてきた。
「好きだよ。キミ以外のヤツとキスなんてしたくないと思うほどに」
「…何だか複雑な気分になるのは何故だ?」
 嬉しいはずなのに、言葉のチョイスがおかしい。
「だって本当にそう思うんだもの。だからこそ、昔からキミにキスしてたんだ」
「それって…昔からわたしのことを好きだったってことか?」
「うん。だってボクの為にあんなに一生懸命になってくれたのって、キミだけだからね」
 だってわたしは…お前の笑顔が見たくて、一生懸命だったんだ。
「だって……そんなの、当たり前だろう?」
「何が?」
 わたしは真っ赤な顔を、無理やり上げて見せた。
「好きなコの為に、一生懸命になるのは当たり前のことだろうって言っているんだ!」
 するとアイツはキョトンとした。
 けれど、すぐに。
「ぷっはははっ!」
 …大爆笑された。
 わっわたしの必死の告白だったのに…。
「いや、ゴメンゴメン。そういう告白をされるとは思わなかったから」
 まだ笑いつつも、わたしを抱き締めてくる。
「ぶ~っ」
「悪かったって。でもそんなキミだから、昔から好きなんだよね」
 それを言われると…怒り続けることができなくなってしまう。
「…これからはキスしなくても、笑うか?」
「そりゃあ笑いたい時は笑うけど…。でも一番笑える方法を、キミは知っているだろう?」
 そして意地悪く笑う。
 …こういう笑顔は、あまり見たくはないんだが…。
「…ああ、良く知っているよ」
 けれど笑顔に惚れたわたしが悪いんだろう。
 わたしはアイツの両肩に手を置いて、口付けをした。


<終わり>
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【2011/11/23 21:04】 | <Kiss>シリーズ
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