オレ様とのキス

2011.11.02(02:58)

「あっ暑い…」
 ダラダラと絶えず汗が流れる。
「オーイ! 走るから、ちゃんとタイムとっとけよ!」
「分かってるわよ!」
「んじゃ、行くぞ!」
 そう言って構えるアイツ。
 わたしはストップウォッチを握り直した。
「用意! スタートっ!」
 わたしの声と共に、風のようなスピードで走り出す。
 そして目の前を通り過ぎると同時に、スイッチを止める。
「…良いタイム出すわね」
「当然だろ?」
 自信満々に髪をかき上げる仕種を見ると、イラッとしてくる。
 …これでも我が陸上部のエース。
 短距離走で高校記録を軽く抜いていくほどの、才能と実力がある。
 なのにこの自信満々で、オレ様的性格が、どーにも気に入らない。
「ねぇ、ちょっと休憩しましょーよ。暑くて眼が回る」
「何だ、女みたいなこと言って」
「生まれて十七年! 男だった覚えは無いわ!」
 怒鳴ってわたしはアイツに背を向けた。
 木陰に置いてある自分のペットボトルを手に持った。
 冷たい麦茶を飲んで、一息。
「ふぅ…」
「あっ、オレにもくれよ」
 わたしはアイツの荷物からペットボトルを取り出し、剛速球のごとく投げた。
「うをっ!」
 しかしきっちりキャッチされた。
「チッ」
「おまっ…エースのオレに何かあったら、どーすんだ!?」
「こんなことで何かあるなら、アンタなんて大したことなかったってことでしょ?」
 冷静に言って、わたしは再び背を向ける。
 あの顔を見ると、殴りたくなる。
 …なのに、アイツの自主練に付き合っている理由は…この後、アイスを奢って貰うからだ。
 うん、それだけそれだけ。
「でもマジであっちーなぁ」
 ちらっと振り返ると、汗を拭いながらスポーツドリンクを飲んでいる。
 …ふとした時に見せるあの顔は、キライじゃない。
 でも、言うと絶対に調子に乗る!
 黙って走っていれば、キライじゃないのにぃ!
 ……でも黙っているアイツなんて、それこそアイツらしくないしなぁ。
「なぁに黙ってんだよ」
「ぎゃああ!」
 いっいきなり背後から抱き付かれた!
 コイツは時々、こんなイタズラをしてくる!
「うわ~。汗くせ」

―殺意100%充電完了。

「何ですって!」
 振り返ると、アイツの顔が間近にあった。
 うっ…!
 この至近距離での笑顔は反則だ。
 …何も言えなくなってしまう。
「何、オレ様がイイ男すぎて、言葉が出てこない?」
「んなワケ…」
 ない、と言えない。
 でも精一杯の抵抗で顔を背けると、いきなり顔を捕まれた。
「んんっ…!」
 そのまま熱い唇と重なる。
「ん~!」
 胸をどんどんと叩くも、そんな抵抗なんてアイツには効かない。
 ―熱い。
 唇から、アイツの熱が伝わってくる。
「ふっ…」
 やっと離されたかと思ったら、アイツは唇をぺろっと舐めた。
「なぁっ!」
「今日の自主練、付き合ってよかっただろ?」
「どこがよっ!」
「秋の大会には、絶対に良かったって思えるぜ?」
 …それは新記録を出すことを言っているのか。
「待ってろよ」
 いきなりわたしを解放したと思ったら、スタートラインに走って行く。
「お前の方から『好きですぅ』って言うようになるからな」
「ななっ!」
「まっ、今はオレ様の方が夢中っていうのも、しゃくだから」
「はあっ!」
 何コレ! 告白!?
「今度はお前の方から、していーぜ?」
「誰がだぁ!」
 叫びながらも、顔が熱くなっていく。
「…わたしに惚れさせたいなら、ちゃんと優勝して、新記録出しなさいよっ!」
 アイツはニッと笑い、ガッツボーズを決めた。

<終わり>
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コメント
やっぱり……sidareさんの作品は、
どれもこれも続きが読みたくなります。

面白いです!
【2011/11/02 13:22】 | 【ダメ社員】 #mQop/nM. | [edit]
感想、ありがとうございます♪
作品数はまだまだありますので、どんどん掲載していくつもりです!
愛読してくださると嬉しいです。
【2011/11/03 18:11】 | sidare #- | [edit]
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