チャラ男とのキス・2

2011.10.30(21:02)

「はぁ…」
 ショーウィンドウに映る自分の姿に、ため息がもれる。
 あの大型犬のような男と付き合いはじめて、しばらく経った。
 アイツは相変わらず学校でも外でも、愛を口にする。
 だけど…何故こんなにも軽く聞こえてしまう!?
 アイツが本気なのは分かった!
 確かにアタシを好きなことも、理解できた!
 なのにっ!
 毎日「好きだ」と言われているせいか、言葉に重みを感じない。
 それでも毎日電話やらメールやらして、休日にはこうしてデートもする。
 そしてまあ…恋人らしい触れ合いもする。
 それで幸せを感じているんだから、アタシはアイツのことを…。
「おっ待たせ~! 待ったぁ?」
 …百年の恋も一瞬にして冷めるような、明るくはしゃいだ声に、アタシは再びため息をついた。
「今来たところよ」
「良かったぁ。いやぁ、途中で女の子2人組に声かけられてさ」
「良かったわね。そっちに行っても良かったのに」
「えっ。いやいやっ、オレはキミが良いんだって!」
「あっそ」
 アタシは素っ気無く答えて、歩き出す。
「わっ、待ってよ! …怒った?」
 しょぼくれた姿を見ると、犬が怒られて悲しげになる姿と重なってしまう…。
「別に。アタシにヤキモチ焼かせようとするのなんて、いつものことじゃない」
 コイツはアタシにヤキモチを焼かせたくて、わざと他の女の子に声をかけてもらう。
 …まっ、学校でも未だに遊びに誘われるみたいだし。
 お手軽な男として見られているんだろうな。
「あ~…でもホラ、オレの本命はキミだけだって、ちゃんと言ってるから!」
「はいはい」
 それでもコイツがモてる日々は変わらず、そして軽い雰囲気も変わらない。
 …でもコレって、アタシの影響力が少ないってことかな?
 普通、恋をすると人間変わるって言うけど…。
「ん? どうかした?」
 隣を歩く『彼氏』は、相変わらずチャラ男。
 告白してきた時から、あんまり変わらない。
 なら…。
「ねぇ、アタシって変わったと思う?」
「ん~。あっ、可愛くなった♪」
 …満面の笑顔でそう言われても、何故あまり嬉しくないんだろう?
「ねっねぇ」
「なぁに?」
「…オレと付き合うの、ヤッパめんどい?」
 急に悲しそうな笑みを浮かべて、顔を覗きこんできた。
「別に。そう思っていたら、付き合っていないって」
「うん…。でも何か楽しくなさそうだからさ。ムリしてほしくないし…」
 …コイツ、アタシがそんなヤワだと思っているのか?
「オレからムリ言って恋人になったようなもんだし。イヤならイヤって言って? オレ、キミに辛い思いさせたくないし」

ぶちっ!

 アタシの中で、何かがブチ切れた。
「…ああ、もうっ!」
 アタシは立ち止まり、アイツの髪をわしづかみ、引き寄せた。
「んっ!」
 人が多い街中で、立ち止まってのキス。
 …自分がこんな行動するなんて、思わなかった。
 けどグチグチ言うコイツの口を、塞ぎたかった。
「…アンタねぇ、少しは恋に自信を持ちなさいよ」
「えっ?」
「アタシはキライなヤツとは付き合わない。ましてやキスなんてもっての他なんだから…!」
 そう言って今度は首に腕を回して、顔を引き寄せた。
 アイツの手が、アタシの腰と後頭部に回る。
 視線を感じながらも、キスをした。
「こんなことさせんの、アンタだけよ?」
「…ははっ。そっか。オレって愛されてるんだ」
「ええ、そうね。アタシも観念するわ」
 深く息を吐き、アタシは微笑みかけた。
「アンタのこと、好きよ」



<終わり>
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