眠りのキス

2011.10.06(19:59)

「ふわぁ~あ」
「おっきな欠伸だな」
「だって寝みーもん」
 大きな欠伸をして、オレはアイツに寄り掛かった。
 アイツの部屋で、二人でテレビゲームをしていたところだった。
「眠いなら、ベッドで寝ろ」
「ん~…」
 頷くも、オレはそのまままぶたを閉じる。
「…オイ」
 アイツの低い声が、心地良い。
 外は寒く、部屋の中があったかいっていうのも、眠気の原因だ。
 それに…アイツの部屋で、アイツの隣にいること。
 それがとっても安心する。
 アイツに寄り掛かり、寝息をたてる。
「…ったく。しょうがないな」
 オレより体格の良い幼馴染の男は、オレを抱き上げ、ベッドに下ろす。
 毛布をかけてくれて、頭や頬を撫でる。
 そして―唇にキスをする。
 もう一度頬を撫でて、アイツはオレに背を向ける。
 …全部気配で分かっていた。
 隣の家に住んでいるコイツとは、もう十八年もの付き合いだ。
 保育園から高校まで、ずっと一緒。
 一緒にいることが、空気のように当たり前に思っていた。
 それがいつの頃か…変化が起きた。
 気付いたのは一年前の夏だった。
 いつものようにコイツの部屋に遊びに来たオレは、部活帰りで疲れていた。
 だから冷房の効いたこの部屋に来た途端、気が抜けて、ベッドに倒れて寝てしまった。
 その間、アイツは飲み物を取りに行ってて、戻って来た時にはオレはベッドで眠っていた。
 でも…本当は寝ていたのは一時だけで、アイツが戻って来た時には意識があった。
 けれどふざけて眠ったフリをしていた。
 近付いてきたらいきなり起き出して、驚かせてやろうと思っていた。
 なのに…気配に気付いて目を開けた途端、アイツの顔が間近にあって…キス、された。
 突然のことで、オレは抵抗できなかった。
 そのまま寝たフリをし続けるしかなかった。
 そしてその後も…オレが眠ると、アイツは必ずキスをしてきた。
 オレはキスされることを分かっていて、あえて寝たフリをしている。
 もしかしたら…バレているのかもしれない。
 でも、起きてキスのことをオレが言い出したら、今の関係は…絶対に崩れる。
 良い方向に? …それとも、最悪な方に?
 分からないから、知らないフリを続ける。
 こんなこと、いつまでも続けちゃいけないと思うのに、もう一年以上続けてしまっている。
 ふと眼を開けると、アイツは黙ってオレに背を向け、座っていた。
 何考えてるんだろう?
 こんなに近くにいるのに、全然気持ちは伝わってこない。
 …ずっとこのままだったら、どうする?
 自然と終わるのか?
 終わらせられるのか?
 …何かだんだん考えるのが、めんどくさくなってきた。
 オレはがばっと起き上がった。
「…っ! どっどうした?」
「どうしたもこうしたもあるか! このバカ!」
 オレはアイツに抱きつき、キスをした。
「んっ…!」
「…いい加減、腹くくれよ」
 ぎゅうっと抱き締めると、同じ強さで抱き返してくれる。
「悪かった…。好きだ」
「…謝罪と告白、一緒にすんなよ」
「悪い」
 だけど嬉しい…!
 改めて、キスをする。
 きっとオレ達は、言葉よりも行動の方が、気持ちを伝えやすい。
 起きていれば、よりいっそう、な!



<終わり>
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