スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

演技のキス・2

 ―文化祭当日。
 控え室で、俺は彼と二人きりだった。
 すでに着替えを済ませ、後は本番を待つばかり。
 だけど…。
「カツラって重い…」
 腰まで伸びている長い髪のカツラをかぶせられ、俺はうなっていた。
「とってもキレイだよ。本当に奪っていきたいぐらい」
 女物の着物を着ている俺とは反対に、彼は男物の着物を着ていた。
 彼も長い髪のカツラをかぶっているけど、平気そうだ。
「あぁ…。本当にキレイだ」
 彼は俺をじっと見つめる。
 その熱っぽい視線がちょっと恥ずかしくて、俺は顔を背けた。
「あんまこっち見るな。どうせ舞台でイヤってほど見るだろ?」
「それも今日まで。明日になったら、着てくれないよね?」
「俺にはコスプレ趣味はないからな」
「もったいない」
 背後で彼が立ち上がった。
 そして後ろから抱き着いてくる。
「…じゃあ、二人きりの時なら良い?」
 耳元で熱い吐息を感じて、思わず身を小さくする。
「イヤだ…」
「なら、こっち向いてよ。眼に焼きつけといたい」
 コスプレを要求されるよりは、マシか。
 俺はゆっくりと振り返る。
「ああ…やっぱりキレイ。今日だけなんて、もったいないよ。本当に」
「お前、いい加減しつこいぞ?」
「うん、ゴメン。でも仕方ないよ。だってボクは…」
 頬にそえられるキレイな手。
 少し上を向かせられ、…重なる唇。
「キミの恋人なんだから」
「…どこで選択を間違えたんだろう?」
「ひどっ!?」
「だってそうとしか、思えないだろう?」
 同じ部活で、同じ歳で、しかも同じ性別…。
 いくら男子校だからって、恋人に同性を選ぶなんて…。
「でっでもボクは、今更別れる気なんてないからね!」
「大声出すな」
 声に怒気を含ませ、俺は軽く彼の頬を抓った。
「ひだっ」
「後悔は別にしてない。あの時、決めたのは俺自身だから」
 彼の俺を見る眼に、特別な感情が含まれていることに気付いたのは、この劇の練習をはじめてからだった。
 どこか熱っぽく、甘い感情。
 否定しようのない熱い感情に、俺は嫌悪を感じなかった。
 だから…受け入れた。
 彼の気持ちを。
「…ホラ、そろそろ本番始まるぞ」
「うっうん」
 そして幕は上がった―。
 劇場時間は一時間。
 講堂は立ち見までできるほど、満員。
 後は演技力にかかっている。
 脚本は部長が担当している。
 部長は俺や彼のことを良く理解してくれて、与えられた役もそう難しくは無い。
 だから自然に演じられるのが嬉しい。
 でも…演じている間にも、彼のことを考える。
 彼はいつも俺に、感情をぶつけて、愛情をくれる。
 俺もできる限りは返したいと思っている。
 彼を、愛しているから。
 でも演技はできるのに、本当の俺だとうまく相手に感情が伝わらない。
 それがもどかしい。
 彼だって、不安になっているだろう。
 どうやって伝えたら良いのか考えているうちに、ラストシーンになる。
 二人は国を捨て、親を捨て、全てを捨てて、添い遂げる為に逃げることを決めた。
 俺は彼と向かい合う。
 手を握り、俺は言った。
「―お慕い申し上げます」
「ええ、私も愛していますよ」
 そうして二人は熱い口付けを…するように見せることを、俺が決めた。
 でも…。
 近付く顔が、止まりそうになる。
 俺は目を閉じて、背伸びした。
「えっ…」
 一瞬だけど、確かに重なった唇。
「愛しています、貴方だけを」
 彼の眼を真っ直ぐに見て、伝えた。
「あっああ…! ボクも愛している!」
 彼は泣きそうな顔になって、思いっきり俺を抱き締めてきた。
 そして観客から沸きあがる。
 ああ…後が怖い。
 けれど彼の嬉しそうな顔が見られるなら、たまには…良いかな?



<終わり>
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

訪問者数
最新記事
カテゴリ
最新コメント
お手紙はこちらにお願いします
義援金募集
FC2「東北地方太平洋沖地震」義援金募集につきまして
同人誌を委託販売しています
CREATE うさぎ屋総本舗 CREATE CREATEの作品一覧
Kissシリーズ
アルファポリスランキング
BL風味・ホラー/オカルト短編集 うそでも良いから欲しい言葉 Fascinated by the darkness 空に月が輝く時 Boys Summer Love! SUN sweet poison 狂恋 甘い鎖 ハデな彼に、躾けられた、地味な僕 アルファポリス・ブログ
クラウドワークス
クラウドワークス
クラウドソーシング
クラウドソーシング「ランサーズ」
プロフィール

sakura

Author:sakura
 現在はフリーシナリオライターとして活動しています。活動記録を掲載していきたいと思っています。「久遠桜」の名前でツイッターもしていますので、よければそちらもご覧ください。仕事の依頼に関しては、メールフォールでお尋ねください。

私の作家としての活動の場です
検索フォーム
RSSリンクの表示
月別アーカイブ
ランキングに参加しています





にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ
にほんブログ村 小説ブログ 小説家志望へ
ブログランキング・にほんブログ村へ
ランキング
ニコッとタウン
絵本のような仮想生活コミュニティサイトです☆
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。