はじめてのキス

2011.09.25(00:27)

 いつも学校帰りに寄るコンビニがある。
 学校から駅までの道のりの途中にあって、よく電車の待ち時間潰しに利用していた。
 今日もまた、学校帰りに寄る。
 でも最近は買い食いが多くなっている。
 コンビニで最近発売されたばかりの新商品・『焼きスイートポテト』にハマっているからだ。
 棚に行くと…空だった。
 …いきなり売れたのか?
 にしても、新商品は他の商品よりもたくさん置いてあるハズだった気が…。
「あっあのっ…!」
 間近で声がした。
 もしかして邪魔になっていただろうか?
「あっ、すみません」
 避けようとして、気付いた。
 声をかけてきたのは他校の男子生徒。
 彼はココのコンビニの袋を持っていた。
 その中には…オレが食べたかった『焼きスイートポテト』がいっぱい…。
「ちょっと話しがあるんだけど…。きっ聞いてくれたら、コレ全部あげるから!」
 そう言って彼は真っ赤な顔で、袋を差し出してきた。
「…はあ」
 とりあえず、敵意は無さそうだ。
 彼に付いて行くと、コンビニのすぐ裏にある公園に来た。
 人気はあまりない。
 彼は振り返るなり、夕闇でも分かるぐらい真っ赤な顔で言った。
「すっ好きです! 付き合ってください!」
「………はい?」
 …何かの冗談?
 思わず周囲をキョロキョロ見回す。
 仲間らしき者達はいない。
「あの…オレ、男なんですけど」
「わっ分かってる! けど、キミが良いんだ! あのコンビニで見かけた時から気になってて…!」
 …あそこのコンビニは駅近くにあるせいか、学生が良く利用する。
 その中の一人なんだろうが…何て言えばいいんだろう?
「えーっとですね…」
 でもとりあえずは何か言わないと、間が持たない。
「あっ、そうだ!」
 …人の話を聞かない人だ。
「コレっ!」
 ズイッと袋を差し出してくれた。
「俺の話、聞いてくれたから…」
 ……返事はいいのか?
「はあ、どうも」
 とりあえず、受け取る。
「…良かったら、一緒に食べませんか?」
「えっ! 良いの?」
「はい。一人じゃこんなに食べられませんし」
 袋はズッシリ重い。
 たくさん入っているからだ。
 公園のベンチに二人で腰をかける。
 袋から一つ取り出し、彼に差し出す。
「はい、どうぞ」
「あっありがと」
 …って言っても、彼が買ってくれたものだが。
 二人で黙々と食べる。
 けれどノドが渇いた。
 さっきのコンビニで買ったお茶を開けて、飲む。
 そして彼に差し出す。
「あっ、良かったら」
「えっ!? でっでも…」
 あっ、口を付けた後はまずかったか。
「間接キスになるんじゃ…」
 …違ったか。
「いらないんでしたら、片付けますけど?」
「あっ、いる! 飲みます!」
 そう言ってペットボトルを持って、恐る恐るといった感じで一口飲む。
「ありがとう…」
「どういたしまして」
 オレはふと、袋を見た。
 棚にあるだけ買ってきたみたいだけど、オレがコレにハマっていること、知っていた…んだろうな。
 オレは今、好きな人も付き合っている人もいない。
 言わばフリーだけど…。
 改めて彼を見る。
 良く見れば、彼の着ている制服はここら辺では有名な高校のだ。
 …頭が良すぎると、どこかおかしくなるんだろうか?
「ねっねぇ」
「はい?」
「こっ恋人がいきなりダメなら、とっ友達からってのはどうかな?」
 おっ、向こうから妥協してきた。
「まあ友達なら…」
「ホント? じっじゃあケータイナンバーとメール教えて! 今、俺の出すから」
 声は弾んでいるのに、表情は複雑そうだ。
 …まあオレと何としても繋がりが欲しいと思うのなら、妥協してしまうだろう。
 いきなり恋人は…ハードル高い、のか?
 思わず首を傾げてしまう。
「あっ、アレ? どこに入れたかな」
 彼はカバンの中身を探っている。
 けれど、気付いてしまった。
 手が震えている。
 とても強く。
 考えてみれば、今日はじめて会話をした。
 そしてすぐに、告白。
 言われた方はただ唖然とするだけだが、言う方はかなりの勇気が必要だっただろう。
 そんな彼を見ていると…何となく、胸の辺りが熱くなる。
「ごっゴメン! ケータイ、学校に忘れてきたかも。悪いけど、このメモに書いて…」
 そう言ってこちらを向いた彼に、オレは―キスをした。
 ベンチに手を付いて、身を乗り出すようにして、彼の唇に触れる。
 ―『焼きスイートポテト』の味がする。
 思わず笑みがこぼれる。
「…えっ? ええっ!」
 彼はまた真っ赤になった。
 慌てている間に、オレは彼の手からメモ帳とペンを奪って、ケータイのナンバーとメールアドレスを書き込んだ。
「はい」
「あっありがとう…」
「早速で悪いんですけど、空いている日を教えてくれませんか?」
「あっ空いてる日?」
「ええ。一緒にいましょう」
「…それって」
 オレはニッコリ微笑んで見せた。
「はい。あなたのことを知りたくなりました」
 この気持ちが恋かはまだ分からない。
 けれどこの人のオレを好きだという感情は、一緒にいてとても心地よく思えてしまう。
「これから、よろしくお願いします」
「うん…うん!」
 彼は笑顔になると、いきなり抱きついてきた。
 だけどやっぱり、心地よかった。



<終わり>
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