フリーのシナリオライターとして活動しています
 手を横に振りながら、彼女は失笑しました。
「あんなのを身に付けているとね、時々そういう力が現れるだけ。でも自分自身でコントロールできるワケじゃないから、厄介なのよね」
 言わば昔のテレビみたいなものだ、と彼女は言いました。
 電波が良い時は調子が良く力が使え、しかしほとんど電波状況は悪いみたいです。
「でも…貴方なら、お姉様を心霊現象から守ることができたんじゃないの?」
 僅かに眉をひそめながら尋ねると、彼女はニッと笑いました。
 それはまるで、イタズラがバレた時の子供のような無邪気さと、恐ろしさを兼ねた笑顔です。
「私は身内だからって、甘やかさない主義なの。それにさっきも言ったけど、上手くコントロールできないからね」
 そう彼女は語りますが…明らかに彼女に取り付いているモノの方が古く、力も強いはず。
 彼女はわざと、放置したのでしょう。
 でもそれを咎めることは、わたしにはできません。
 何故なら彼女のお姉様のしたことは、やってはいけないことだからです。
 しかし普通に注意されても、あまり反省などしないでしょう。
 それはあの肝試しに参加したメンバーにも言えること。
 身をもって恐怖を体験することによって、ようやく自分達がしてはならないことをしたのだと、自覚するのでしょうから…。
「さて、私に話したいことは終わりかな? あまりこの部屋には長居しない方が良いよ。下では姉が待っているしね」
「…そうね。お邪魔したわ」
「いえいえ。『本物』の霊能力者と話ができて、楽しかったわ」
 彼女は笑顔で手を振り、見送ってくれました。
 下の階に降りて、わたしは彼女のお姉様に今後のことを説明しました。
 とりあえず身を守る為に水晶の数珠ブレスレットを渡し、家の中にも結界を張ります。
 そして後日、肝試しを行なったメンバー全員と会って、墓場へ行くというところで話を終えました。
 家を出る時、わたしはもう一度振り返ります。
 彼女の部屋の辺りを見ると、そこから何かが溢れ出しています。
 その『何か』とはハッキリとは言えませんが……ふと彼女の言葉を思い出します。
 あんな暗く重いモノを背負っている彼女が『ある』ことを。
 それは―覚悟。



 わたしは家に帰ると、彼女のことを母に話しました。
 すると母は慎重な面持ちで頷きます。
「彼女の言う通り、余計なことはしない方がいい」
「そう…なの?」
「アンタやアタシじゃ手に余る、そう思うんだろう?」
「うっうん…」
 わたしや母の2人でも、きっと彼女が背負っているモノには勝てないでしょう。
「呪術師が己の血に取り込んだモノって言うのはね。取り付いた人に重い運命を背負わせる代わりに、その人物の願いを叶える。まさに命と引き換え、だね」
 彼女の先祖は、身を守る術としてあのモノを飼うことを選んだのでしょうが……。
 それでも納得できない自分がいます。
「アレは彼女だけを犠牲に、成長しているとは思えなかったんだけど…」
「ああ、そりゃそうだね」
 すると母はあっさりと肯定しました。
「いくら何でも取り付いた人間一人分だけでは、補えないでしょう。そこは多分、別んとこから調達してくるだろうよ」
「調達ってまさかっ…!」
 母はスっと目を細め、低い声で呟きました。
「そのコ、自分の親戚や近しい人達の死期がわかるんだろう?」
「っ!?」
 あまりの言葉に、息を飲みます。
「でもっ、そんな…。まさかっ…!」
 言葉を失いかけているわたしを、母は冷静な目で見ています。
「―まっ、現代でもそういうのはいるってことさ。念を押すけど、くれぐれも自ら関わることはしなさんな。相談されたら、せいぜい大人しくさせる方法を教えてやればいい」
 どこか遠い目をしながら語る母は、過去にも同じようなモノを見たことがあるのでしょう。
 そして…結局、何もできなかったんでしょうね。
「でもあのままで良いのかな?」
「良いも何も…。とりあえず、今現在の持ち主は満足しているなら良いんだろう? そのコは覚悟があるようだし、自分の最期も分かりきって、取り付かせているんだ。アタシ達がどうこうしようなんて、はた迷惑な話と思っているだろうよ」
 確かにそれは彼女自身から言われたことです。



 そう―彼女はとっくに自分の最期を知っているんです。
 自分の願いが、あのモノを通して叶えられ続けたとしてもその最期は……
 あのモノに、身も心も魂すらも、喰い尽くされる最期を―。

【完】
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【2011/08/30 15:54】 | 【ホラー/オカルト短編集】
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