【とある霊能力者の仕事】・3

2011.08.29(12:54)

 その後、彼女は娘さんに絶対に部屋に入ってくるなとキツク言ってきたそうです。
「今思い返せばあの時、妹を止めなかった方が良かったのかもしれませんね」
 娘さんは目を閉じ、深くため息をつきました。
「あの…妹さんとちょっとお話をしてきても良いですか?」
「えっええ。妹の部屋は階段を上って、右端になります。でも妹は部屋に誰かを入れることを激しく嫌いますけど…」
「それはご家族に対しても?」
「ええ。母も父も嫌がります。昔からそうでした」
「そう、ですか。じゃあちょっと失礼しますね」
 わたしは作り笑みを浮かべ、居間を後にしました。
 言われた通り階段を上り、右端の部屋へと向かいます。
 …しかし部屋の扉の前で、立ち止まってしまいます。
 何故ならこの扉は、結界。
 神社にある鳥居と同じ雰囲気を感じ取りました。
 でもこんなこと、霊能力者にもできないことです。
 そう、一部の力の強い神職者ならば、個人的にも作り上げることは可能でしょうが…まだ高校生である女の子一人ができることではありません。
 わたしは固唾を飲み込み、緊張で震える手を上げ、扉をノックしました。
「―さっきの霊能力者さん?」
 返ってきた声に、心臓が嫌な音を響かせます。
「えっええ…。ちょっとお話があるんですけど、良いかしら?」
「どうぞ」
 彼女はアッサリと承諾してくれました。
 ドアノブを回して、わたしは彼女の部屋に入りました。
 部屋の中に入ってまず、その匂いに気付きました。
 コレは…ラベンダーの匂いです。
 部屋の中を見ると、ラベンダーのドライフラワーが置いてありました。
 そして窓際には、水晶などのパワーストーンとポプリがあります。
 それらが部屋を清浄化しているのでしょう。
 部屋は淡いクリーム色の壁紙に、机や本棚は柔らかな色で統一されていて、若い女の子のイメージは正直あまり感じられません。
 部屋の主である彼女は、ベッドに腰掛け、扉近くにある机と椅子のセットを、指さしました。
「どうぞそこへ。あまり床に座るとよくないみたいだし」
「…どうしてそう思うの?」
 わたしがそう尋ねると、彼女はまたニッコリと笑い、自分が座っているベッドの下を指さしました。
「っ!?」
 思わず目をそらしました。
 ベッドは4本の足があるタイプです。
 つまり下に空間があるのですが、その中に、いろいろな黒いモノが詰まっていて、蠢いていたのです。
 まるで虫かごに無理やり詰め込まれた虫達のように、ギッシリと。
「部屋に誰か入って来た時、コレでも抑えてはいるんだけどねぇ。中々大人しくしてくれなくて。いや、参った参った」
 と、全く参っていないように、彼女は笑い飛ばします。
「あっ、だから部屋には誰にも入らないように言っているの?」
「うん、そう。部屋の主無しでは、好き勝手しているから。それに私以外の人に入られると、せっかくの結界も効果が薄れちゃう」
「あなたは……霊能力者、なの?」
「ん~。半分正解、かな? 正確には私一人の力じゃないの。私の中で飼っているモノの影響と言った方が正しいかな? 多分コレがなきゃ、私には何の力も無いと思うし」
 彼女は自分の肩をポンポンと叩きました。
「ベッドの下にいるモノは、貴方に惹かれて来たの?」
「それも中のモノの影響ね。イロイロと引き寄せちゃうみたいだけど、抑えられるからヘーキ」
 …やはり彼女は、自分に何かよくないモノが取り付いていることを分かっているようです。
 しかし理解していながらも、平然としてそれを受け入れている……。
 普通の人間ならば、まずはありえません。
 アレほどのモノに取り付かれたならば、普通の人間はまず、正気ではいられないはず。
 疑惑に満ちた目で彼女を見ると、クスッと苦笑されました。
「あなたの仕事は、姉や例の肝試しメンバーに何かしているモノを沈めることでしょう? その他のことには首を突っ込まない方がいいわよ?」
「でも…貴方の中にあるモノは、とんでもないモノよ? それを理解した上で、何もしていないの?」
「別に何もしていないワケじゃない」
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