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 肝試しみたいな飲み会を、さすがにそこでやってはいけなかったのです。
 住人達は眠りを妨げられた上に、ゴミを置き去りにされ、しかも眠っている場所を荒らされたことに、ムチャクチャ怒りを現しているのですから。
 対処法としましては、現象が起こっている人達の家に一件ずつ回って、結界を作ります。
 そしてあの場へ行き、とりあえずゴミの回収と、謝りに行くべきでしょう。
 肝試しに参加したメンバーは、娘さん達と同じような目に合っていて、精神的に弱っているみたいですし、わたしの提案に素直に乗ってくれるでしょう。
 住人達も、誠意を見せればきっと怒りを沈めてくれるはずです。
 少し長丁場になりますが、それでも確実な方法なのです。
 仲介役にはわたしと母が入れば何とかなるでしょうし、心から謝罪の気持ちが娘さん達にあれば、そう難しい話ではなかった……はずだったんです。
 そう、『彼女』が帰ってくるまでは…。
「ただいま~。…って、アレ? お客さん?」
 居間に一人の女の子が入ってきました。
「おかえり。今、お姉ちゃんのことについて相談してたのよ」
 母親が女の子に説明します。
 そして次に、わたしに説明してくれました。
「このコは2番目の娘です」
「どーも、はじめまして」
 彼女はニコッと人懐こい笑みを向けてきました。
 でもわたしは驚愕して、微笑み返すことができませんでした。
 何故なら彼女は、喰われて、いたからです。
 彼女の全身を覆うように、ぽっかりと開いた口の中。
 彼女はまさに、口の中に入っていました。
 そしてそのモノは黒い顔、みたいなモノ。
 はっきりと言えないのは、口以外、顔のパーツが無いからです。
 目も鼻も耳もなし、体も無いんです。
 ただ彼女の全身を今にも喰らおうとする黒いモノ、それを背負いつつも微笑んでいる彼女に、わたしはぞっとしてしまいました。
「ん?」
 わたしの視線に気付き、彼女は自分の背後を振り返りました。
「…ああ、失礼」
 呟くように言うと、片手で自分の肩をパンパンと叩きました。
 すると黒きモノは、スゥ…と溶けるように消えてしまいます。
「えっ…?」
 呆然と呟くと、彼女は再び笑みを浮かべました。
「お邪魔になるのもアレだし、私は自分の部屋にいるね」
「ええ」
 母親に断りを入れると、彼女は部屋を出ていきました。
「あの…妹、やっぱり何かあるんですか?」
 今まで黙っていた娘さんが、不安そうに言ってきたので、わたしはようやく我に返りました。
「何かって…。妹さんは何かあるんですか? その、霊能力みたいなものが」
 だがあるのならば、わたしはここへ来ることは無かったでしょう。
「その、霊能力かどうかは分かりませんが…妹が側にいると、さっき言ったことがあまり起こらなくて…」
 それどころか、ラップ音がうるさい時、
「うるさいっ!」
 と彼女が怒鳴ると、ピタッとおさまったそうです。
「妹は何故か昔から、知り合いや親戚が死んだことが分かったり、ちょっとした事件が起こる前に忠告してきたりということが何度かあったんです」
「それじゃあ例の肝試しも?」
「それは…帰って来た時、でしたね」
 夜遅く、家に帰って来た時、彼女は玄関まで迎えに来てくれたそうです。
 でも家の中に入る手前で止まるように言われ、彼女は家の中から塩を持って来て、思いっきり娘さんに振りかけたそうです。
 その意味が分からず、娘さんが大声を出したことによって、母親が駆け付け、彼女を止めたそうです。
「でもその時、妹はこう言ったんです」
『まだ全部払えていないのにぃ』
 軽くむくれた表情で彼女は言って、自分の部屋に戻ったそうです。

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【2011/08/29 12:50】 | 【ホラー/オカルト短編集】
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