【とある霊能力者の仕事】・1

2011.08.28(14:36)

 わたしがその依頼を受けたのは、夏も終わりの季節でした。
 わたしの家は代々強い霊能力を持つ者が生まれる為、家業は霊能力を使った仕事です。
 主に心霊現象と思われることを解決するのが、わたし達の役目だと思っていました。
 そういうふうに家族からも言われ、周囲の人達にも言われ続けてきたからです。
 わたしの師にあたるのは、実の母親です。
 その母から伝えられたのが、今回の件です。
 母の友人の、そのまた友人の娘さんが、ちょっと困ったことになっているとのことでした。
 実際、家を訪ねても良いと言われたので、わたしはその家に向かうことにしました。
 家は普通の一戸建て。
 しかしどこか黒く、重いモヤみたいなモノが家を取り囲んでいます。
 手首に巻いている水晶の数珠を握りしめ、わたしはインターホンを鳴らしました。
 出迎えてくれたのは、母の友人のそのまた友人さんと娘さんの二人。
 二人とも暗い表情で、居間に通してくれました。
 そして話を聞きます。
 まずはどんな現象に悩まされているのか。
 大学生だと言った娘さんは、重い口を開きます。
 何でも今年の夏休みに、サークルで飲み会があったらしいです。
 居酒屋で飲んだ後、みんなでカラオケに行き、日付が変わりそうになって慌てて解散をしました。
 ですが娘さんを含めた数人の学生達が、帰り道の近くに墓場があることを言い出しました。
 そこでちょっと肝試しみたいなことをしたらしいです。
 ですが聞けばそこの墓場には、少々問題があったみたいです。
 山々が重なる奥にあるという墓場は、長年放置されているお墓が多いと言います。
 管理者も問題のある方で、そこを放置しているそうです。
 すっかり荒れ果てた墓場の中を、酔った勢いもあり、娘さん達は大騒ぎしながら通ったそうです。
 しかも途中、コンビニで買ってきたお酒やおつまみを、そこで飲み食いしたのです。
 …よりにもよって、お墓の上に座って。
 どうやら余りにも草が生えすぎて、そこが墓石だとは分からなかったようです。
 まあ暗くもあったでしょうしね。
 娘さん達は酒を飲み干し、おつまみも食べ尽くしたところで、ゴミをそのままにしてその場を去ったそうです。
 その後は終電の電車で無事に帰って来たみたいですが、後日、心霊現象に悩まされることになります。
 まずは起きている時。
 常に視線を感じるも、誰も自分のことを見ていない。
 そして部屋の中にいる時、ラップ音が鳴る。
 外で歩いていると、誰も触っていないのに突然体が傾き、転んで怪我をしてしまう。
 体も疲れる理由がないのに、いつも気怠い感じがある。
 そしてそれは夜にも起こるそうです。
 夜、寝付きが悪い。
 金縛りによくあってしまう。
 目を閉じているはずなのに、自分の体が何故か見えて、黒いモヤに包まれるイメージが浮かぶ。
 そして最悪なことは、そのモヤは体に巻き付き、苦しく締めつけてくること。
 そのせいで、不安な日々を送っているとのことでした。
 その現象は肝試しに参加したメンバー全員の身に起こっているそうです。
 娘さんが話終えたところで、娘さんの母親がお茶を持ってきたので、一時中断することにしました。
 冷たい麦茶で喉を潤しながら、わたしは対処法を考えます。
 自分の目と娘さんの体験から、これは間違いなく心霊現象だと判断できました。
 問題はこの娘さんだけではなく、その時肝試しに参加したサークルメンバーの元へも行かなければならないことです。
 それにそこの墓場にも。
 娘さん達はそこの住人達から、お叱りを受けているのですから。
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