フリーのシナリオライターとして活動しています
 わたしがその依頼を受けたのは、夏も終わりの季節でした。
 わたしの家は代々強い霊能力を持つ者が生まれる為、家業は霊能力を使った仕事です。
 主に心霊現象と思われることを解決するのが、わたし達の役目だと思っていました。
 そういうふうに家族からも言われ、周囲の人達にも言われ続けてきたからです。
 わたしの師にあたるのは、実の母親です。
 その母から伝えられたのが、今回の件です。
 母の友人の、そのまた友人の娘さんが、ちょっと困ったことになっているとのことでした。
 実際、家を訪ねても良いと言われたので、わたしはその家に向かうことにしました。
 家は普通の一戸建て。
 しかしどこか黒く、重いモヤみたいなモノが家を取り囲んでいます。
 手首に巻いている水晶の数珠を握りしめ、わたしはインターホンを鳴らしました。
 出迎えてくれたのは、母の友人のそのまた友人さんと娘さんの二人。
 二人とも暗い表情で、居間に通してくれました。
 そして話を聞きます。
 まずはどんな現象に悩まされているのか。
 大学生だと言った娘さんは、重い口を開きます。
 何でも今年の夏休みに、サークルで飲み会があったらしいです。
 居酒屋で飲んだ後、みんなでカラオケに行き、日付が変わりそうになって慌てて解散をしました。
 ですが娘さんを含めた数人の学生達が、帰り道の近くに墓場があることを言い出しました。
 そこでちょっと肝試しみたいなことをしたらしいです。
 ですが聞けばそこの墓場には、少々問題があったみたいです。
 山々が重なる奥にあるという墓場は、長年放置されているお墓が多いと言います。
 管理者も問題のある方で、そこを放置しているそうです。
 すっかり荒れ果てた墓場の中を、酔った勢いもあり、娘さん達は大騒ぎしながら通ったそうです。
 しかも途中、コンビニで買ってきたお酒やおつまみを、そこで飲み食いしたのです。
 …よりにもよって、お墓の上に座って。
 どうやら余りにも草が生えすぎて、そこが墓石だとは分からなかったようです。
 まあ暗くもあったでしょうしね。
 娘さん達は酒を飲み干し、おつまみも食べ尽くしたところで、ゴミをそのままにしてその場を去ったそうです。
 その後は終電の電車で無事に帰って来たみたいですが、後日、心霊現象に悩まされることになります。
 まずは起きている時。
 常に視線を感じるも、誰も自分のことを見ていない。
 そして部屋の中にいる時、ラップ音が鳴る。
 外で歩いていると、誰も触っていないのに突然体が傾き、転んで怪我をしてしまう。
 体も疲れる理由がないのに、いつも気怠い感じがある。
 そしてそれは夜にも起こるそうです。
 夜、寝付きが悪い。
 金縛りによくあってしまう。
 目を閉じているはずなのに、自分の体が何故か見えて、黒いモヤに包まれるイメージが浮かぶ。
 そして最悪なことは、そのモヤは体に巻き付き、苦しく締めつけてくること。
 そのせいで、不安な日々を送っているとのことでした。
 その現象は肝試しに参加したメンバー全員の身に起こっているそうです。
 娘さんが話終えたところで、娘さんの母親がお茶を持ってきたので、一時中断することにしました。
 冷たい麦茶で喉を潤しながら、わたしは対処法を考えます。
 自分の目と娘さんの体験から、これは間違いなく心霊現象だと判断できました。
 問題はこの娘さんだけではなく、その時肝試しに参加したサークルメンバーの元へも行かなければならないことです。
 それにそこの墓場にも。
 娘さん達はそこの住人達から、お叱りを受けているのですから。
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【2011/08/28 14:36】 | 【ホラー/オカルト短編集】
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