フリーのシナリオライターとして活動しています
 ビニールに入っていたのは、20代前半の若い男だった。
 しかし白目をむき、首には絞められた痕があった。
「おっ、良いじゃねぇか! アンタんとこ、良い仕事するな!」
「まあ本当だねぇ。奥さん、これならお子さんも喜ぶんじゃないかい?」
「そうね! 今日はせっかくだから、コレを頂くわ! 今すぐ捌ける?」
「モチロン! 肉屋の意地にかけて、上手く捌くさ!」
「ちょいと待っててね! 今、コッチに代金を払うから」
 精肉屋の妻が仕入れ業者の男に金を支払っているうちに、精肉屋の周囲には人盛りができてきた。
 みな買い物カゴを持った、奥さま達だ。
 制肉屋の夫が引きずっていくピニール袋を、興味津々に見つめている。
「アラ、活きの良いのが入ったわねぇ」
「これから捌くらしいわよ」
「じゃあ待ってようかしら?」
 ワイワイ華やぐ奥さま方を見て、精肉店の妻はにこにこ笑顔になった。
「ホント、アンタんとこは良い仕事してくれるから、嬉しいわ」
「ありがとうございます! これからもどうぞごヒイキに!」
 青年は代金を受け取ると、笑顔で車に乗って去って行った。
 しばらくして、奥さま達は大量の肉を買って、満足げに家に帰った。
 家に帰れば、子供達がすでに帰っていた。
「お帰り、お母さん。お腹空いたよぉ」
「オヤツのドーナッツ、置いてったでしょう?」
「もう食べちゃった。ハンバーグ、まだぁ?」
 子供2人に抱き着かれ、足元をフラフラさせながらも台所へ歩く。
「いっ今作るからね! それまで宿題と復習を済ませときなさい」
「「は~い!」」
 素直に返事をして、2人の子供は二階の子供部屋に行った。
 そして買ってきたばかりのものを、冷蔵庫と冷凍庫に次々入れていく。
「さて、とっとと準備しないと、今度は旦那にまで抱きつかれる」
 深く息を吐くと、エプロンをして、気合を入れた。
「よし! 今日は活きの良い赤身を買えたことだし、料理も頑張りましょう!」
 そして三十分後、美味しそうな匂いにつられて、2人の子供が下りてきた。
「お母さん、できたの?」
「できた?」
「もうすぐできるから、テーブル支度して」
「「はぁい!」」
 子供達はテーブルの上を拭いたり、準備をしたりした。
 そのうち、夫が帰ってきた。
「…そんなに強い匂いを放っているのかしら?」
 ちょうど料理が出来た時に帰ってきたので、妻は思わず辺りの匂いを嗅いだ。
「おっ、すぐに夕飯か」
「えっええ、アナタは着替えてきてくださいな」
「分かった」
 テーブルに次々と料理を並べる。
 メインはハンバーグ。その他にもフルーツサラダやパンを並べる。
「わあ! 美味しそうね、お母さん」
「やっぱりお母さんは料理上手だね」
「褒めてくれるのは嬉しいケド、お手伝いの手は止めないでね?」
 子供達がスープ皿を受け取ってくれるのを待つ間は、結構長かった。
「さあ! 食べましょう!」
 食卓には全ての料理がそろった。
 そして家族の人数もそろった。
「いただきます!」
 四人の声がキレイにそろい、まずはハンバーグに手が伸びる。
「うん! 美味しい!」
「本当だ! 美味しいね!」
「美味いよ、母さん。味付け変わった?」
「うふふ。お肉屋さんが、良い仕入先を見つけてくれたのよ。これからお肉が美味しく食べられるわよ」
「「わあーい!」」
「明日は焼肉な」
「はいはい」

―平和な家庭の食卓の光景が、そこにはあった―




材料を抜かせば。

【終わり】
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【2011/08/27 19:22】 | 【ホラー/オカルト短編集】
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