フリーのシナリオライターとして活動しています
「へっ? 私にも参加しろって?」
 それは12月のこと。
 私の通っている高校は共学で、キリスト教関係の学校だ。
 そのせいか、終業式後には学園ではパーティーを行う。
 まあパーティーと言っても、軽くオシャレをして立食をしながら話をしたり、ダンスを踊ったりするもの。
 堅苦しいマナーはなしで、揉め事さえ起こさなければ自由に楽しめる。
 私は二年で、パーティーを取り仕切る係の一人だった。
 なのにパーティーの目玉イベントである『聖夜までに恋人を作ろう!』という、いわゆる数人の男女が集まり、思いを寄せる相手に告白して、カップルになるというものに、参加してほしいと言われた。
 言ってきたのは、イベントを取り仕切っていた同級生達。
 何でも女の子側が一人、急病で来れなくなったらしい。
 まあこのイベントはそもそも、先にアンケートを取って、その中から選ばれた出来イベントでもあるんだけど…。
「でも私、別に告白したい人とかいないんだけど…」
 ウチは進学校で、一年の頃からそれこそ死に物狂いで勉強ばかりさせられる。
 だからこそ、こういうイベントが人気あるのだ。
 同級生達はとりあえず出てくれ、と頭を下げるばかり。
 イベントは互いに自己紹介をして、気になっている相手をスケッチブックに名前を書いて、みんなの前で公表するというもの。
 互いの名前を書けば、カップル成立ってわけだけど…。
「ちなみに男子は誰が出るの?」
 本当はイベントが始まるまでは、異性のメンツは秘密にされている。
 けれど緊急事態なので、同級生達はファイルを見せてくれた。
「…ん? 彼がいるのね」
 ファイルの中には、この学園で人気ナンバー1の彼がいる。
 いつも穏やかで成績優秀、女の子には特に優しいけれど、特定の相手がいないことでも有名。
 …妙に一線を引いているのが、ちょっと腹黒さを感じる相手だ。
 でもちょうど良い相手かもしれない。
 彼の名前を書く女の子は多いだろうし、その中の一人となれば恥もかかない。
 彼だってまさか、あまり話したこともない私の名前を書くワケがないしな。
「…分かったわ。出るだけ出るわ」
 ――こうして私はイベントに参加することにした。


 パーティーは終業式が終わり、午後からとなる。
 体育館を使うので、私達はそれこそ目が回るほど大忙し。
 何せ準備する時間は二時間ほど。
 その間にテーブルや料理や飲み物を並べたり、吹奏楽部にも演奏の準備を指示しなくてはならない。
 着替えは学校に持ち込んでいて、更衣室で後で着替えなきゃ!
 そしてパーティーが無事開催され、最初は立食と談笑が始まる。
 その間に着替えて、軽くメイクもして、体育館に出た。
 イベントが行われるまでは自由時間。
 私は友達と合流して、束の間の安らぎの一時を過ごす。
 …そして悪夢の時間が始まった。
 壇上に並べられたイスに座ると、向かいには同じ数の男子達が座る。
 …多くの視線が痛い。
 本当に突き刺さるようだ。
 けれど男の子も女の子もはしゃいでいるし、楽しんでもいる。
 落ち着いているのは私…だけじゃなかった。
 真向かいに座る彼もまた、落ち着いていた。
 …まっ、彼も頼み込んで出てもらったと言っていたし、あまり興味がないんだろうな。
 あっ、目が合った。
 私を見てにっこり笑い、軽く手を振る。
 なので仕方なく、私もぎこちなく笑いながら手を振った。
 そしてスケッチブックに名前を書く時間になった。
 コレでようやく終われる…そう思いながら、私は彼の名前を適当に書く。
 そうして全員がスケッチブックを見せ合った時、第二の悪夢が始まった。
 何故か彼は、私の名前を書いていた!
 しかも私は彼の名前を書いていたワケで…めでたくなく、カップル成立してしまったのだった…。


「何でアンタ、私の名前を書いたのよ?」
 カップルになった二人は、特別に教会で二人っきりになれる。
 今年は男女七名ずつ出たのに、カップル成立になったのは私と彼、そしてもう一組だけだった…。
 残りの女の子達は全員彼の名前を書いていたので、視線が真面目に突き刺さったのが痛かった。
「え~、だって壇上で合図しただろう?」
 私に締め上げられながらも、彼は笑みを絶やさない。
…ちっ。身長の高い男をしばくのは、こっちが苦労する。
「合図って…あの手を振ったヤツ?」
「そうそう。てっきりボクに合わせてくれるんだと思っていたんだ」
 あっ…。あの時、私は手を振り返したっけ…。
 まさか打ち合わせるわけにもいかなかったし、彼もまた、イベントには困っていたからな。
 彼は私がパーティーを取り仕切る役であることを知っていたし、そう思っても仕方ないか。
「…そう。まあ良いわ。これから冬休みになるし、その間に仲がこじれたって言えば、女の子達は喜ぶでしょうしね」
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FC2blog テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

【2017/07/30 12:35】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  短編  キスシリーズ  キス  恋愛  学園  クリスマス  告白  パーティー  
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