フリーのシナリオライターとして活動しています
 でもアタシにまで、可愛さを求めないでほしいというのが本音。
 サッパリ・アッサリしているのが、自分の良いところだと思っている。
 それは服装や格好なんかにも現れている。
 スカートとかワンピースを着るのは好き。
 でもやっぱりデザインはシンプルなのを選ぶ。
 彼が着るような、フリルとレースはご遠慮願いたい。
「はあ…」
 ファミレスに入ると、彼はトイレに行った。
 …もちろん男性用のに行くワケだけど、他の人に見つかったら声かけられないだろうか?
 そんな心配をしていると、不意に2人組の男に声をかけられた。
 2人ともアタシ達と同じ歳らしい。
 ファミレスに入って来たアタシ達を見て、どうやらナンパしようと決めていたらしい。
 …と言うか、彼を女の子と勘違いしているな?
 そして彼らの口ぶりから、どうやらお目当てはアタシではなく、彼の方らしい。
 まっ、男の子って可愛い女の子を好むみたいだし。
 どう断ろうか考えていると、彼が戻って来た。
「どうしたの?」
 そして男の子達に声をかけられているアタシを見て、ビックリしている。
 男の子達は戻ってきた彼に、嬉しそうに声をかける。
 話の内容は彼を褒め称える言葉や、どこかに遊びに行こうという言葉。
「えっ、あの…」
 彼は二人の勢いに押され気味。
 だけどどんどんその表情が暗くなる。
 男の子達はそれでも話し続ける。
 ―やがて、彼がゆっくりと顔を上げた。
「…いい加減にしやがれっ!」
 いきなり顔付きも声も『男』になったことに、二人はギョッとして彼から離れる。
「こちとらデート中なんだ! しつこいナンパ野郎共は引っ込んでろ!」
 …ちなみに彼が住んでいる地域では、ちょっと訛り言葉を使われる。
 彼は立派に、その言葉遣いを受け継いだらしい。
「はっ! いっいけない…。ボクったら…」
 周囲がし~ん…と静まり返ってしまったので、彼も我に返るのが早かった。
 アタシはため息を一つし、荷物を持って立ち上がる。
 まだ注文する前で良かった。
「じゃっ、お店の邪魔になっちゃうと悪いから、行きましょうか」
 しゅん…と落ち込んでいる彼の手を、今度はアタシが繋いで店から出た。

 とりあえず落ち着かせようと人気の少ない住宅地まで歩いて来た。
 その間、彼はしょんぼりしたまま無口。
「…気にすることないわよ。ああいうタイプにはガッチリ言った方が良いんだから」
「うん…。でもあんなところで男の子っぽいとこを見せちゃうなんて…ボクもまだまだだなあ」
 がっくりと肩を落とす彼だけど…。
「でもアタシは惚れ直しちゃった」
「えっ?」
「だってかっこよかったから。それにアタシを守ってくれたじゃない」
 そう、女の子の格好をしてても、ちゃんとアタシを守ってくれる。
 一緒にいて、楽しい気分にさせてくれる。
 だからアタシは彼の告白を受け入れたのだ。
「確かにアタシはあなたに『お嫁さんになって』とは言ったけど、『女の子になって』とは言わなかったでしょ?」
「うっうん…」
「まあ女装するのは良いけれど、中身まで女の子になられちゃ、流石にアタシの立場がないし」
 とは言え、彼は家事全般が得意で趣味。
 毎日、アタシにお弁当とオヤツの差し入れをしてくれるし、時には手作りの洋服やアクセサリーまでくれる。
 女の子として叶わない部分が多いけれど、変わってほしくない部分もある。
「ボク、さ…」
 不意に彼は立ち止まるので、手を繋いでいるアタシまで立ち止まった。
「小さい頃、あんな告白しちゃったでしょう? でもキミが言ってくれた言葉もあるから、こういう格好をするようになったんだ」
 そう言って髪の毛の先を指でいじる。
 可愛い仕草だなぁ。
「可愛くなれるように一生懸命努力してきたつもりだったのに……。やっぱりキミの可愛さには叶わないなぁ」
 …でも言っていることは、イマイチ理解できない。
「可愛いってアタシのどこが?」
「全部だよ!」
 彼には珍しく、声を荒げた。
「え~? でもアタシなんて地味じゃない」
「違うよ! 可憐なんだよ」
 その言葉は真正面から彼に打ち返したい。
 けれどこれまた珍しく、本気でムキになっているので、黙っておこう。
 いつもは可愛らしい仕草しか見ていないから、何か珍しい。
「派手に着飾ったりしない分、可愛さが滲み出ていると言うか…」
 それはきっと…彼にしか感じないことだな。
 だってアタシ自身、全く分からないことだから。
「だからキミの理想通りの人になりたかったのに…」
「アラ、アタシは充分、今のあなたがステキだと思っているわよ?」
「ほっホント?」
「うん」
 男の娘でも、可愛い姿を見れるのは嬉しい。
 ちゃんとアタシを大事にしてくれるし、文句なんて一つもない。
 だからそう思っていることを証明したくって、彼の手を引いて、キスをする。
「んっ!?」
 突然のことに、彼は眼を白黒させる。
 いくら人気の少ない住宅地とは言え、全く人がいないワケじゃない。
「ねっ? コレで安心した?」
「うっうん…」
 白い頬を赤く染め、夢見心地の顔をする彼を見ると、愛おしいと思える。
「ねっねぇ」
「ん? なぁに?」
「もう一回…良い?」
 上目遣いでねだられると、断れるワケもない。
 軽くため息を吐くと、アタシは再び彼にキスをした。
 周囲から戸惑いの雰囲気が伝わってくるけど、素知らぬフリで。
 まあ何も知らない人から見れば、女の子同士のキスシーンに見えるだろうな。
 苦笑しながら唇を離すと、今度はぎゅっと抱き着かれた。
「ボク…絶対キミのお嫁さんになるからね!」
「はいはい」
 でも結婚式では、彼もウエディングドレスを着たいと言い出すかもしれない。
 そしたら…アタシがタキシードを着ようっかな?
 お揃いでウエディングドレスを着るよりは、まだマシかも、ね?

<終わり>
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【2017/07/27 05:58】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  短編  キス  恋愛  婚約者  恋人  女装  高校生  
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