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Kissシリーズ・お笑いのキス2(1)

2017.07.27(05:48)

 休日、アタシは駅前で恋人を待つ。
 恋人はアタシと同じ高校に通っていて、学年も同じ2年生。
 元々母親同士が親友だったこともあり、小さな頃から遊んでいた。
 でもお互い住んでいる家は遠くて、なかなか一緒にはいられなかった。
 しかし高校受験前に、彼の方から同じ高校に通わないかと誘われ、通学するのも苦じゃない距離だったし、レベルもそこそこだったのでそこを希望校にした。
 お互い見事合格して、高校の始業式で会えた時は喜んだものだ。
 ウチの高校は自由がウリで、制服はあるけれど私服でも可。
 アタシも彼も、私服で通っている。
 でもアタシはたまーに制服を着るけれど、彼は滅多に着ない。
 まあ入学式と卒業式は流石に制服着用が校則としてあるから、しょうがなくは着ていたな。
 そんなことをボンヤリ思い出していると、目的の人物がこちらへと走って来るのが見えた。
「ごめ~ん! 待ったぁ?」
 上擦った舌っ足らずの甘い声を出すのが、アタシの『恋人』で『彼』だ。
 ちなみに着ている服は、いわゆるゴスロリファッション。
 もちろん―女の子用。
「ううん。そんなに待ってないよ」
 だけどアタシは笑顔で接する。
「ホント、ゴメンねぇ。電車が遅れちゃって…」
「いいって。それより早く行こう。今日は洋服を買いたいんでしょう?」
「うん! 行こう!」
 彼は笑顔で手を繋いでくる。
 ちなみにちゃんと髪も可愛くセットしているので、見た目的には『可愛い女の子』だろう。
 …実際、こっちを見る男性達の視線が熱く彼に向いているし。
 彼に引っ張られて来たのは、これまたゴスロリショップ。
 正直言って、アタシには縁が遠い。
 平凡な女の子であるアタシにとっては別世界に見える。
 けれど彼は慣れていて、すんなり入って行く。
「わあ! やっぱり春物が一番可愛い♪ 小物も、お洋服も! そう思わない?」
 春色の新作の洋服を嬉しそうに彼は自分の体に当てる。
 彼は小柄で、アタシと同じぐらいの身長なので、こういう服が良く似合う。
 顔立ちも可愛いし。
「うん、良く似合うよ」
「ホント? どれを買おっかな?」
 店内にいる女の子達の視線も、彼に向けられる。
 でも本当の性別を知らないことを思うと、ちょっと不憫。
 …まあ元々、彼がこうなったのはアタシのせいなんだけどね。

 幼い頃、それこそ小学生に上がる前まで、彼は普通の男の子の格好をしていた。
 まあその頃から彼は可愛かったけど、こういう格好は一切していなかった。
 そんな彼に、ある日、こう言われた。
「あのね! ボク、将来キミのお嫁さんになりたいんだ!」
 …今思うと、ツッコミどころがある告白だったな。
 けれどアタシも幼くて、ただ単純に『結婚すること』として受け止めた。
 告白されたことは分かっていた。
 彼のことは確かに気になっていたから、アタシはつい、
「うん…分かった。じゃあ大きくなったら、アタシのお嫁さんになってね」
 ……と答えてしまった。

 その後、お互い小学校に上がると忙しくなって、会うことがなかった。
 手紙や電話、メールなどで連絡は取り合っていたけれど、お互いの成長した姿は一切見ないまま、高校で再会した。
 けれど入学式を終えた翌日、彼はこの格好で登校してきた。
 驚いて理由を尋ねたアタシに、彼はこう言った。
「え~、だってキミが『お嫁さんにしてくれる』って言ったじゃない」
 …そこでアタシは、十年前の自分の失言を思い出した。
 そして彼がずっと、アタシを思い続けてくれたことも知った。
 彼のご両親はこういう格好をすることに驚いたようだったけど、将来アタシと結婚することが決まっていると彼が言うと、
「それなら…」
 と渋々受け入れてしまったらしい…。
 まあ彼の母親とウチの母親は未だに仲良いからな…と遠い目をしながら思う。
 なのでアタシは高校入学と同時に、恋人婚約者がいる身となった。
 でもまあ今の世の中、こういうコがいることはテレビでも取り上げられているし。
 可愛いし似合っているし、アタシは彼を受け入れることにした。
 ―が、世の中そんなに甘くなかった。

 学校に行くと、アタシはいろんな生徒達から文句を言われる。
 その文句の言葉は、いつも同じ。
「何で彼にああいう格好をさせたんだ!」
 …ちなみに言ってきたのが男の場合、うっかり女装をしている彼に恋心を抱いてしまったパターン。
 女の場合、彼氏がうっかり女装した彼を好きになってしまったパターンと、女として敗北感を抱いてしまったパターンがある。
 何故こう言った苦情がアタシにくるのかと言うと、彼は自分が女装している理由を尋ねられた時、こう言っているらしい。
「だぁってボクの彼女が『お嫁さん』にしてくれるって、言ってくれたんだもーん」
 満面の無邪気な笑顔で、ハッキリと言っているらしい…。
 彼と付き合っているのは有名なので、いっつもアタシは苦情を受けるのだ。
 言われたアタシは遠い目をしながら苦笑するしかない。
 十年も前に言った言葉が、まさかこんな状態を生み出すなんて、予想もしていなかったのだから…。

「はぁ~。いっぱい買っちゃった♪ 満足満足」
 大きな紙袋を持ちながらも、空いている手ではしっかりとアタシの手を握っている。
「でもキミは何も買わなくてよかったの? せっかく似合いそうなのがあったのにぃ」
「アタシには似合わないわよ。あなたが着ている姿を見ている方が良いの」
「そお?」
 ちょっと拗ねたように言われるけれど、自分でも似合っていないのは分かっている。
「でもボク、キミとお揃いのワンピとか着たいなぁ」
「えっ!?」
「あっ、メイド服でも良いよぉ」
「そっそれは流石に…。あっ、お腹空かない? アタシ、何か食べたいな」
「そうだね。じゃあどっかに入ろうか?」
 上手く気がそらせて良かった…。
 時々彼はこういうことを言い出すから、心臓に悪い。
 流石に同じ服を着て二人並ぶというのはな~。
 …明らかに彼の引き立て役になってしまう。
 別に彼の女装姿がイヤなワケじゃない。
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