Kissシリーズ・甘々のキス・13(1)

2017.07.20(01:52)

 あたしには幼馴染の男がいる。
 出来が良くて、格好良くて、モテる。
 …けど、あまりあたしはこの幼馴染が好きではない。
 同じ歳で、しっかりしすぎて、あたしの面倒まで見てくれる。
 でもいくら何でも、20歳を越えたら、ちょっと変わるもんじゃないだろうか?
 などと思いながら、あたしは食器を洗っている幼馴染に声をかける。
「…ねぇ、何か甘い物食べたい」
「今、夕飯を食べたばかりだろう? それにデザートにコーヒーゼリーを食べたし」
 …そう。つい30分ほど前まで、あたしはコイツと夕飯を食べていた。
 コイツは手料理が上手で、今日もクリームパスタとフルーツサラダ、コーヒーゼリーまで作った。
 美味しく頂いたけれど…。
「コーヒーゼリーってあんまり甘くないもん。生クリーム余っているなら、それ使ってなんか作ってよ」
「ったく…。太ったって知らないぞ?」
 そう言いつつ、冷蔵庫を見始めるから、作る気満々だ…。
 家が隣同士ということもあり、小さな頃からコイツとは一緒だった。
 幼稚園・小学校・中学校・高校に大学まできたら、流石に一緒にいることに飽きてくるんじゃないだろうか?
 コイツは精神的に成長が早く、いっつもあたしは面倒を見てもらっていた。
 でも流石に中学生ぐらいではそういうのもうっとおしくなって、離れようとした。
 …でも長年、コイツに頼りっきりの生活を送ってきたせいか、なかなか上手くいかず、結局今までズルズルと…。
 大学に入ってからは、マンションに一人暮らしするようになった。
 コイツの親戚が、大学近くに結構立派なマンションを持っていたので、紹介で住むことになった―までは良かった。
 けれどもれなくコイツまで、あたしの隣に引っ越してきたのは、どういうことだろう?
 まあ同じ大学に通っているから、不思議ではない。
 …問題は、何故毎日あたしの部屋に来ては、あたしの面倒を見ているか、だ。
 家事をしてくれるのはもちろんのこと、私生活のことでも面倒を見てくれる。
 不思議に思いつつも、受け入れているあたしもあたしか…。
「ほら、できたぞ」
 考え事をしている間に、注文の品はできた。
「フルーツ入りのクレープ。お前、好きだろう?」
「うん、ありがと」
 ナイフとフォークを使い、切り分けていると、アイツは紅茶を淹れてくれる。
 何と言うか、本当に甲斐甲斐しい。
 そう思いながらも、美味しいクレープと紅茶を食べて、満足。
 アイツは食器を持って、流し場へ向かう。
 なんのかんのと言いながらも、あたしのワガママは全部聞いてくれる。
 だから昔から、周囲には恋人扱いされてきた。
 でも…そういうのは一切なかったりする。
 けれどあえて否定しなかったのは、そう言うことで面倒な恋愛事を避けたかったから。
 恋愛なんてめんどくさい。
 それだったら、コイツに面倒を見てもらう生活を送る方が楽。
 出来がよすぎることに頭にきた時もあったけど、今はただ便利としか思えない。
 …でも流石に、何時までもこういうことは続けていられない。
 もう二十歳。
 そろそろお互いに本当に一緒にいたい相手を見つけたり、自立したほうがいいだろう。
 …まあコイツはとっくに自立しているけど。
 あたしは立ち上がり、アイツの背後に立つ。
「ん? どうかしたか?」
 食器を洗っている最中なので、顔だけこちらを向く。
 あたしは黙ってその背中に抱き着いた。
「ん~…。ちょっと甘えたくなった」
「そうか。もう少しで洗い物が終わるから、待っててくれ」
「うん」
 けれどあたしは離れない。
 ぎゅうっとしがみついたまま。
 アイツは拒まない。
 今まで一度たって、あたしのことを拒んだり、邪険にしたことはない。
 それが分かっているから、こうやって甘えられる。
 恋愛対象ではないのに、こうやるのって卑怯かな?
 そんなことをぼんやり思っている間に、洗い物は終了。

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