Kissシリーズ・甘々のキス・12(2)

2017.07.20(01:43)

「俺は24になったばかりの男」
 にしては、だらしない男だ。
「でもまあ考えてみたら、現実感ありすぎるし、ないか」
「まあ…何だ。そろそろ現実に戻って、自分が行くべき場所を思い出すと良い」
 と、言うしかないな。
「…ああ、そっか。行く所、あったんだ、俺」
 しかし思い当たることがあったらしい。
 不意に顔付きが変わったことに、思わず胸が高鳴る。
 うん、真面目な表情は悪くない。
 青年が立ち上がると、身長の高さにビックリした。
 私より頭二つ分、身長が高い。
 私は女にしては身長がある方だから、青年は男性にしても高い方だろう。
 青年は服を叩いて、歩き出す。
 ―けれどふと振り返り、私を見つめる。
「ん? どうかしたか?」
 真剣な眼差しを向けられると、不覚にも顔が熱くなってしまう。
「―一応、確かめておこうと思って」
 そう言ってきびすを返し、今度はこちらに歩いて来た。
「へっ?」
 突然のことに驚いている間に、青年はどんどん近付いて来て、とうとう私の目の前に立つ。
 そして両腕を伸ばし、私に抱き着いてきた!
「えっ…えええっ!」
 あまりに突然の行動に、呆然とし、抵抗することも忘れてしまう。
 そして固まっているうちに、青年は顔を上げて…私の唇にそっと口付けた。
「…えっ?」
「ああ…この感触は確かに人間だ」
 そう言って、ゆっくりと私から離れた。
 そして振り返り、また歩き出した青年の背に、
「ふざけるではないわあ!」

 どかっ!

 と飛び蹴りを食らわした。
「ぐおっ!?」
 青年は顔から地面に倒れ込む。
 その背中を今度は踏みつけた。
「いたたたっ!」
「何をしたか、分かっておるのか! 貴様!」
 いっいきなり口付けされるなんて思わなかった!
 しかも…甘く感じてしまうなんて…!
 恥ずかしくて、照れ臭くて、また情けなくて。
 頭の中が熱くなる!
「いっいや、だから。本当に人間かどうか、確かめたかったんだって!」
 顔をこちらに向け、青年は必死に言い訳をするが、踏み付ける力は緩めない。
「人間だと言ったじゃろうがっ! その耳は飾り物かっ!」
 ぎゅうぎゅう踏んでいると、ふと料亭の方から仲人がやって来た。
 そして私と青年を見て、ぎょっと眼を丸くする。
 仲人が慌てた様子で青年の名を呼んだ。
 その名に聞き覚えがあった私は、足の力を緩める。
 何せその名は、今日の見合い相手の名前だったからだ。


「…まさかと思うが、私が誰だか分かっていて、ああいうことをしたのかえ?」
「いいや。でもそうかな?って思ってはいた」
 部屋の中で、改めて私と青年は二人っきりになった。
 仲人が5分ほど紹介の時間を取った後、青白い笑顔で部屋を出て行ったからだ。
 その後、青年は私の隣に座り、髪の毛や頭、頬を触れたりしている。
「でもこんなに綺麗なコが嫁さんになるなんて、ちょっと信じられなくて…」
 そしての精かとも思って、口付けたのか…。
「うん、でもキミなら良いな。ねぇ、俺の嫁さんになってよ」
 …何つうアッサリしたプロポーズ。
 ロマンの欠片もありはしない。
 いや、あのの木の下で出会った時が、一番甘い空気が流れていたな。
 まあ…その後のキスも甘かった。
「ねぇねぇ」
 …人が考えている間に、今度は体にしがみついて揺さぶってくる。
 コイツ、見た目に反してガキだ。
 しかもタチの悪いガキ。
 でも、だけど、私に一目惚れしたらしい…し?
 堅っ苦しい旧家の生活から抜け出して、こういう男と夫婦となるのも楽しいかもしれない。
「…お前さん、私を大事にしてくれるか?」
「もちろん。何があったって、俺はキミのことを守るよ」
 そう言って優しく微笑む。
「ならしょうがない。結婚してやろう」
「ホント? やった♪」
 嬉しそうに笑うと、まぁた私にしがみついてくる。
 …やれやれ。
 退屈な結婚生活を想像していたのだが、破天荒な結婚生活を送りそうだ。

<終わり>


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