フリーのシナリオライターとして活動しています
「俺は24になったばかりの男」
 にしては、だらしない男だ。
「でもまあ考えてみたら、現実感ありすぎるし、ないか」
「まあ…何だ。そろそろ現実に戻って、自分が行くべき場所を思い出すと良い」
 と、言うしかないな。
「…ああ、そっか。行く所、あったんだ、俺」
 しかし思い当たることがあったらしい。
 不意に顔付きが変わったことに、思わず胸が高鳴る。
 うん、真面目な表情は悪くない。
 青年が立ち上がると、身長の高さにビックリした。
 私より頭二つ分、身長が高い。
 私は女にしては身長がある方だから、青年は男性にしても高い方だろう。
 青年は服を叩いて、歩き出す。
 ―けれどふと振り返り、私を見つめる。
「ん? どうかしたか?」
 真剣な眼差しを向けられると、不覚にも顔が熱くなってしまう。
「―一応、確かめておこうと思って」
 そう言ってきびすを返し、今度はこちらに歩いて来た。
「へっ?」
 突然のことに驚いている間に、青年はどんどん近付いて来て、とうとう私の目の前に立つ。
 そして両腕を伸ばし、私に抱き着いてきた!
「えっ…えええっ!」
 あまりに突然の行動に、呆然とし、抵抗することも忘れてしまう。
 そして固まっているうちに、青年は顔を上げて…私の唇にそっと口付けた。
「…えっ?」
「ああ…この感触は確かに人間だ」
 そう言って、ゆっくりと私から離れた。
 そして振り返り、また歩き出した青年の背に、
「ふざけるではないわあ!」

 どかっ!

 と飛び蹴りを食らわした。
「ぐおっ!?」
 青年は顔から地面に倒れ込む。
 その背中を今度は踏みつけた。
「いたたたっ!」
「何をしたか、分かっておるのか! 貴様!」
 いっいきなり口付けされるなんて思わなかった!
 しかも…甘く感じてしまうなんて…!
 恥ずかしくて、照れ臭くて、また情けなくて。
 頭の中が熱くなる!
「いっいや、だから。本当に人間かどうか、確かめたかったんだって!」
 顔をこちらに向け、青年は必死に言い訳をするが、踏み付ける力は緩めない。
「人間だと言ったじゃろうがっ! その耳は飾り物かっ!」
 ぎゅうぎゅう踏んでいると、ふと料亭の方から仲人がやって来た。
 そして私と青年を見て、ぎょっと眼を丸くする。
 仲人が慌てた様子で青年の名を呼んだ。
 その名に聞き覚えがあった私は、足の力を緩める。
 何せその名は、今日の見合い相手の名前だったからだ。


「…まさかと思うが、私が誰だか分かっていて、ああいうことをしたのかえ?」
「いいや。でもそうかな?って思ってはいた」
 部屋の中で、改めて私と青年は二人っきりになった。
 仲人が5分ほど紹介の時間を取った後、青白い笑顔で部屋を出て行ったからだ。
 その後、青年は私の隣に座り、髪の毛や頭、頬を触れたりしている。
「でもこんなに綺麗なコが嫁さんになるなんて、ちょっと信じられなくて…」
 そしての精かとも思って、口付けたのか…。
「うん、でもキミなら良いな。ねぇ、俺の嫁さんになってよ」
 …何つうアッサリしたプロポーズ。
 ロマンの欠片もありはしない。
 いや、あのの木の下で出会った時が、一番甘い空気が流れていたな。
 まあ…その後のキスも甘かった。
「ねぇねぇ」
 …人が考えている間に、今度は体にしがみついて揺さぶってくる。
 コイツ、見た目に反してガキだ。
 しかもタチの悪いガキ。
 でも、だけど、私に一目惚れしたらしい…し?
 堅っ苦しい旧家の生活から抜け出して、こういう男と夫婦となるのも楽しいかもしれない。
「…お前さん、私を大事にしてくれるか?」
「もちろん。何があったって、俺はキミのことを守るよ」
 そう言って優しく微笑む。
「ならしょうがない。結婚してやろう」
「ホント? やった♪」
 嬉しそうに笑うと、まぁた私にしがみついてくる。
 …やれやれ。
 退屈な結婚生活を想像していたのだが、破天荒な結婚生活を送りそうだ。

<終わり>


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【2017/07/20 01:43】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  キスシリーズ  短編  キス  恋愛  お見合い  歳の差    
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