Kissシリーズ・甘々のキス・12(1)

2017.07.20(01:37)

 旧家の家に長女として生まれたのならば、人生は決まっている場合が多い。
 人も羨む豪華な生活を送れるだろうけど、結婚相手や将来の職業に関しては、自分の意志など何一つ通じない。
 それが分かっているからこそ、私も大人しく18になってお見合いをすることを決めた。
 相手は同じく旧家の長男。
 この見合いが上手くいけば、私は相手の家に嫁入りしなければならない。
 まあこういうのも、昔から代々続くものだ。
 だから覚悟はとうに出来ている……はずだった。
 少なくとも、私は出来ている。
 なのに…何故相手の男は何時まで経っても現れない?
 見合いの仲人は時間を過ぎても現れないことに焦り、今、連絡を取りに行っている。
 今日は当人同士の顔合わせということで、親も付き添い人もいなくて、私一人が部屋に残されてしまった。
「まったく…。遅れるとはどういうことじゃ」
 いつもの古臭い言葉遣いも、人がいないからできるもの。
 いい加減、痺れを切らし、私は部屋から出た。
 見合いの席として用意されたのは、会員制の高級老舗料亭。
 の木がたくさん植えられていて、とても美しい庭園がある。
 かく言う私が今日着ている着物も、お気に入りの柄だ。
 せっかくの見合いだから、一番良い着物を着て、普段はしない化粧までしてきたと言うのに。
「それとも相手にはその気がなく、破談にするつもりかえ?」
 ああ、そういうのもあるな。
 一度の見合いで上手くいくのは珍しい方。
 別に婚約者というワケでもないし、破談になったところで別に構わない。
「しかし顔も見せんとは、礼儀もしつけもなっとらんのう」
 まあ私もこういう言葉遣いをいくら言われても直さないけれど、時と場合では使い分ける。
「…来ぬなら来ぬで連絡ぐらいしてこれば良いものを」
 そしたら一人ででも、この料亭で食事をしたのに。
 部屋は庭が見える所だし、庭園を見ながら美味い食事はしたい。
 でも相手がいつ来るのか分からないままでは、注文もできやしない。
「はあ…。腹が……」

 ぐりゅりゅりゅ~

 …ちなみに私の腹の音では決してない。
「…どこか聞こえてきよった?」
 周囲をキョロキョロ見回すと、の木の下に、一人の青年が倒れているんだか寝ている姿を発見した。
 まさか腹を空かせて、倒れているとか?
 この料亭にいるってことは、不審人物ではないだろう。
 チェックは厳しいから。
 しかしもしかしたら、この料亭の関係者かもしれない。
 私はそっと近寄り、声をかける。
「おい、大丈夫か?」
「んっ…」
 私の声に反応し、青年は顔をこちらに向けた。
 …おっ、結構整った顔立ちをしているな。
 年の頃は25歳前後というところか?
「何故ここで寝ている? 具合が悪いのならば、人を呼ぶか?」
「…ああ、大丈夫。天気が良かったし、も綺麗だったから、つい昼寝をしてた」
 そう言って上半身を起こし、大きな欠伸をする。
「確かにここのは立派ぞ。こう見事なは、ウチにもないからのぉ」
 私は桜を見上げ、そっとその幹に触れた。
 しかし青年がじっとこちらを見ていることに気付き、改めて視線と声をかける。
「何ぞ?」
「いや、アンタさぁ…。もしかして桜の精?」
「……はい?」
 どーやらまーだ頭の回転が悪いらしい。
 寝ぼけなまこで私を見ながら、頭をボリボリかいている。
 せっかく立派なスーツを着ているのに、台無しにしている。
 なのに本人は全く気にしていないとは…大物なのか、バカなのか。
「何故そう思う?」
 が、一応理由は聞いておきたいと思った。
「ん~…。だって古い言葉遣いをするし、桜の着物を着ているし…」
 …コレはアレか?
 いわゆる電波とか、そういう次元とリンクしているのか?
「それに綺麗だし」
 ……まあ最後の言葉は良しとしよう。
 ちょっと機嫌が良くなったので、笑って見せた。
「残念ながら18になったばかりの小娘じゃ。そなたは?」

スポンサーサイト

コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://hosimure.blog33.fc2.com/tb.php/1145-2104c59e