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Kissシリーズ・甘々のキス・11(1)

2017.07.18(01:32)

 世の中は『年の差婚ブーム』、らしい。
 テレビで見たけれど、女性は年上の男性を最初の夫として、抱擁力を求める。
 そして男性は年下の女性に、最後の女としての役目を求めると言う。
 …生々しい話だけど、そういうのもアリだと思う。
 そう思ってしまうアタシ自身、年上の男性と付き合っているからかもしれない。
「でも…本当に恋愛として、成り立っているのかなぁ?」
 大きなため息を吐く。
「どうかしましたか?」
 けれど背後からあの人の声を聞いて、背筋をピンッと伸ばす。
「いっいえ、何でもありません!」
 振り返れば、愛おしい恋人がそこにいる。
 今日も執事服が良く似合っていて、思わずニヤけそうになる顔を必死に抑える。
「このお邸は広いですからねぇ。メイドのあなたが掃除するのも大変でしょう」
 四十六歳の彼は、まだ二十三歳のアタシにとても優しい。
 …でもアタシに限ったことではないんだけどね。
「いえ、これもお仕事ですから」
 けれどアタシはニッコリ笑みを浮かべて、箒を持ち上げる。
 今、アタシは一人で庭の掃除をしている最中だった。
「ところで何かご用事ですか?」
「ああ、そうでした」
 あの人は柔らかな笑みを浮かべたまま、アタシの側に来る。
 そして耳元でそっと、
「…今夜、私の部屋に十時に来てください」
「はっはい…」
 低い声で囁かれ、思わず声が裏返ってしまう。
 けれどあの人はにっこり微笑んで、邸に向かう。
「ふぅ…」
 …あの人と恋人になって数ヶ月は経つけれど、こういうのは慣れないなぁ。
「まっ、相手が上手ってことだけど」
 アタシはメイドとして、あの人は執事として、ここに住み込みで働いている。
 大学を卒業したのは良いけれど、就職浪人となってしまったアタシに声をかけてくれたのが、あの人だった。
 最初はメイドなんて…と思っていたけれど、お給料が良かったので、今では自然な作り笑みも得意になってしまった。
 元々ウチの父親とあの人が友人同士で、小さい頃からあの人とは会っていた。
 その頃はまだ、ちょっと渋い感じがするけれど、優しくて気のきく人だなぁ~って思っていただけだった。
 それがこういう関係になったのは、あの人から告白されたから…。
「でも公にはできないしな」
 執事のあの人が、メイドのアタシと付き合っていることは内緒。
 広まれば、絶対よくない噂が流れる。

執事が下っ端の使用人に手を出した―

 何て噂が広まったら、あの人もアタシもここを辞めなくちゃいけない。
 ここのご主人様は世間的にも有名な人だから、悪評がついた後、再就職するのは難しそうだ。
「まあ内緒なのは良いんだけどね」
 あの人はとても人当たりが良くて、老若男女から人気が高い。
 けれど歳が歳だから、アタックしてくる女の子はあまりいない。
 それが安心するところだけど、やっぱり…秘密って辛いかも。
 仕事を終えて、お風呂に入った後、アタシは再びメイド服を着る。
 もちろん、洗ったばかりの綺麗なの、だ。
 寝巻きで邸の中を歩くことは禁止されているし、私服であの人の私室に入るところを見られては、妙な噂が立てられてしまう。
 だからあの人がアタシの部屋に来る時も、執事服。
 …まあそれはちょっと萌えるから良いんだけど。
「何てバカなこと考えている場合じゃないわね」
 もうすぐ十時になる。
 あの人の部屋もアタシの部屋も個室だけど、やっぱり執事であるあの人の方が立派な部屋を与えられている。
「アタシも出世したら、良い部屋を貰えるのかな?」
 そうすれば…あの人も堂々と部屋に来てくれるかもしれない。
 今のままじゃ、どうしたって仕事の延長戦みたいな感じだし。
 あの人の部屋の前で軽く身だしなみを整え、扉をノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
 礼儀正しく部屋の中に入る。
「あれ? まだ着替えていなかったんですか?」
 部屋の中に他に人がいないことを確認して、口調を和らげる。
「ええ。ですが時間はピッタリなので、気にしないで良いですよ」
 執事服を脱ぎかけって…妙に色気があって、参るなぁ。
 …でもアタシがメイド服を脱ぎかけた姿って、ただたんにだらしない感じしかしない。
「さっ、こちらにおいで」
 ベッドに腰掛けて、あの人が手招きする。
 高鳴る胸を押さえながら、アタシは前に進み出る。
 そしてあの人に手を掴んで引っ張られ、思わずその体に抱き着いてしまう。
 …見た目とは反して男らしい体、何度触っても、やっぱり緊張する。
「ふふっ。可愛いですね」
 あの人が浮かべる笑みはいつも見ているもの。
 …けれどその眼に鋭い光が宿っているのを見て、思わず体が熱くなる。
「あっ…」
 あの人の指がアタシの唇に触れる。
「さて、何か言いたそうな顔をしていますね?」
 …イジワル、だ。
 ここでお預けをくらわすなんて。

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