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Kissシリーズ・懐きのキス(3)

2017.07.17(01:36)

「…ごめんなさい」
 素直に謝るけれど、離れはしない。
 だから背中に手を回して、頭を撫でてやる。
「…ねぇ、おねーさん」
「なに?」
 少年は不安そうな表情で、わたしを見上げる。
「おねーさんは何でボクのワガママ、聞いてくれるの?」
 『ワガママ』であることは、自覚していたか。
「…さてね。アンタのことは可愛いとは思っているから、母性本能かな?」
恋愛感情じゃなくて?」
「そこまではいかない」
「…むぅ」
「アンタもいい加減にしたら?」
 ポンポンと背中を叩きながら、言い聞かせるように優しい口調で言う。
「もうそろそろ新しい恋を見つけたら? アンタと同じ年頃の可愛い女の子、世の中にはいっぱいいるでしょう?」
「そりゃそういうコはいるけど、ボクの好きなおねーさんはここにしかいないもん」
 そう言ってぎゅうっと力強く抱き着いてくる。
「もしかしておねーさん、不安? ボクが年下のがイヤ?」
 急に顔を上げたかと思ったら、またツッコンでほしくない質問をしてくる。
「イヤって言ってもどーなるもんでもないでしょう? 確かにちょっと思うところはあるけど…」
 年の差だけはどうにもできない。
 同じ時代を生きているとは言え、やっぱり違いは出るものだ。
 その差を埋めることをしないわたしは臆病者。
 だから少年とは恋人にはなれない。
「…そっか。ボク、おねーさんが年上だから、もっと強い人かと勝手に思い込んでた」

グサッ!

 思いっきり言葉の矢を放ちやがって…!
「てっきりボクがまだ子供だから、断られたのかと思ってた。頼りなく思われたのかと思って…」
「そんなことは思っていない。3つも年上の女に告白してきた時点で、アンタは強いコだって分かっているから」
 でも相手のわたしが弱くちゃ話にならない。
 告白を断っても、少年を避けられないのが良い証拠だ。
「……うん、分かった。じゃあこうすれば良いんだ」
 少年はわたしの両肩に手を置き、顔を伸ばしてきた。
「んっ…!」
 そして小さな唇が、わたしの唇に触れる。
 一瞬の、触れるような甘いキスは、けれど全身の血がかけ上るのに充分な威力だった。
「なっ何すんのよ!」

ゴンッ!

 だからつい、少年の頭にゲンコツを落としてしまう。
「いったー! だっだから、こうすれば不安なんか感じないだろう?」
「身の危険を感じたわっ!」
 子供だと思って油断してた!
 やっぱり男なんだ!
 少年は殴られた部分を両手で抑えながら、それでも真っ直ぐにわたしを見る。
「おねーさんが弱い分は、ボクが強くなる。それで良いんじゃないかな?」
「はあっ!?」
「だからずっと一緒にいる。絶対に不安に思わせないぐらいに、傍にいるから! だから…ボクのこと、信じてくれない?」
 そう言ってわたしの両手を掴んでくる。
 …ヤバイ。振り解けない。
 少年が本気であることが、ビシビシ伝わってくるから…。
「ゴメンね…。もっと早くボクが気付けば良かった。ずっとおねーさんは年の差、気にしていたんだね」
「…それは年上女の勝手な被害妄想だから、アンタが気付かなくても良いことよ」
「良くないよ! だってそのせいで、おねーさんはボクの告白、断ったんだろう?」
 …ごもっとも。
「だからボクが強くなるよ! そうすれば、おねーさんは恋人になってくれる?」
 強気な表情から、一気にすがるような顔になるなーっ!
 心の中が妙にうずく!
「えっ、あのっ、それは…」
「不安に思うことがなかったら、ボクでも恋人になれるってことだろう?」
「…まあ、なくは、ないけど…」
「なら! ボクがおねーさんの不安を感じさせないぐらい、強くなるから。だから恋人になってよ」
 二度目の告白―。
 それでも触れている手が震えていることから、かなり勇気を使っていることが分かる。
 …わたしなんかに二度も告白をしてくる男なんて、きっとこのコ以外はいないだろうな。
 わたしは思いっきりため息を吐いた。
「やっやっぱり、ダメ?」
「ううん。もう堕ちたなって思っただけ」
「えっ?」
 キョトンとする少年の頬に、キスをした。
「ええっ!?」
「これからよろしくね。アンタが知っている通り、わたしはあんまり強くないけど」
「でっでもおねーさん、結構暴力強いよ?」
「…こういう時に、言う言葉じゃないってこと、分かってる?」
 思わず握り拳を見せると、少年はヒッと息を飲む。
「ごっゴメン! 悪気は無かったんだ。ただ…ちょっとビックリして」
 ぼ~っと夢見心地の表情で、キスした頬に触れる。
「何よ? ずっと恋人になることが夢だったんでしょう?」
「うん…うんっ! ボク、おねーさんの恋人になったんだ!」
 改めて少年は喜んで、わたしに抱き着いてくる。
 ああ、やっぱり可愛いな。
 まだ始まったばかりの関係だけど、少年がいつまでもこのままだったら良いのに…と思ってしまう。
 まっ、きっと大きく成長しても、少年はわたしに懐いたままなんだろうな。

<終わり>
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