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「一年経った今でも…。いえ、彼の生い立ちを考えれば、少しは思い当たるのですけど…」
 …ハズミの生い立ち。
 彼は愛人の子供だった。
 社会的地位のある男性が、水商売の女性との間に作った子供がハズミ。
 しかし女性は病気により、ハズミが5歳の時に死亡。
 ハズミは父の家に引き取られたが、本妻との仲は悪く、また本妻の子供達とも仲が良くなったと言う。
 ―澄夜以外とは。
 しかし彼は暗い家庭の事情を感じさせないほど明るく振る舞い、大学生活も充実して過ごしていた。
 …はずだった。
 だがハズミは自殺した。
 ある日の朝、ベッドで冷たくなっているのを、澄夜が発見したらしい。
「ホントに、何でっ…!」
 澄夜は言葉に詰まり、泣き出してしまった。
 未だにハズミの死が、彼を縛り付けてしまう。
「…携帯電話に、遺言めいた文章があったんです」
 しかし澄夜は思い出したように言った。
「『ずっと好きだった。愛してる』と…。義弟はきっと誰かに恋をしてたんです。でもムリだと悲観して…」
 …それは、私が見た夢だ。
 いや、現実にあったことだったんだろう。
「あなたは知りませんか? 羽澄が誰を愛していたか!」
 彼の必死の眼が、怖かった。
 けれど…言うつもりは無かった。
「ごめんなさい。羽澄さんとは遊んだりするだけの仲だったので、彼の悩みとかは聞いたことがありません」
 そう言って首を横に振った。
「そう…でしたか。すみません、取り乱してしまって」
「いえ…。ところで澄夜さん、あなたは誰か交際なさっている方はいらっしゃるんですか?」
「わたしですか? …いえ、羽澄が死んでからは」
 澄夜は少し遠い目をして、墓を見つめた。
「羽澄が死ぬ前には、婚約していました。けれど彼の存在がどのぐらい大きかったか自覚してしまって…。解消してしまいましたよ」
「…そうですか」
 そこで会話を終わらせようと思った。
 私は澄夜に挨拶をし、その場を離れた。
 だがすぐには帰らなかった。

 浜辺を歩く。
 ケータイを取り出し、ハズミを見た。
「…満足か? お前が願ったことだろう?」
 ケータイの中のハズミは、泣き崩れていた。
『ちがっ…! こんなこと、望んだワケじゃっ』
「しかし狙いはあったんだろう? 己が死を以て、義兄の心を捕らえたかったんだろう?」
『うっ…!』
 …何となく、気付いていた。
 私は海を見た。太陽がオレンジ色に輝いている。
 けれど太陽は沈み、夜が訪れる。
 …同じように、いつまでも明るいままではいられなかったんだ。
 ハズミは。
「お前が愛していたのは、義兄の澄夜だったんだろう?」
『ふぅっ…』
「だが義兄はお前の気持ちに気付かず、女と婚約してしまった。お前に残された道は二つ。一つは良き義弟として死ぬまで振る舞い続けるか、もう一つは…」
 自らの死を以て、澄夜の心を自分のモノにするか。
 そしてハズミは後者を選んでしまった。
「…このサイトに自らを縛り付けたのは何故だ? お前、女はキライじゃないのか?」
『女は…苦手だったよ』
 ハズミは低い声で言った。
『母さんが苦手だった。派手に着飾った女が苦手だった。…そして義母が苦手だったよ』
「キライ、ではなかったのか?」
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【2017/07/16 14:38】 | ★マカシリーズ★
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