フリーのシナリオライターとして活動しています
「例の料理教室、確かに肉料理専門らしいですけど、あなたも野菜料理を教えているんですよね?」
「…うん」
 ふと、サガミ先生の表情が曇った。
「そこで被害者達を知ったんですね? 親子料理教室なんてものもやっていれば、幼い子供と出会うこともあったでしょうね」
「あっ…!」
 思わぬところから、被害者の接点が見つかった。
 そうだった。
 サガミ先生は野菜料理専門の先生。
 そして被害者達は皆、ベジタリアン―菜食主義者ばかりだった。
 肉料理のことばかり頭にあったけど、事件の角度を変えれば、サガミ先生が怪しい事が分かる。
「被害者達はまさか料理教室の先生が、殺人者だなんて思いもよらなかったでしょうね。しかも本職は野菜料理専門担当、事件が世間に明らかになっても、あなたは疑われなかった」
 アタシがポカンとしている間に、キシは笑顔で殺気を放ちながら話を続ける。
「そして例の料理教室が、料理した所なんですね? 料理教室ならば、それなりの設備に調味料も揃えているでしょうし。ましてや普段は肉料理専門ですから、料理をしてても疑われることもなかったでしょう」
「そうだね」
「そして料理を準備して、公園に準備をする。…そしてヒミカが来るのを、待っていたんですね?」
「でもヒミカくんは一度たりとも来てはくれなかったけどね。まさか生が好みだったとか?」
 サガミ先生は笑顔でアタシを見た。
「ヒミカは人を食いませんよ、サガミ先生」
「自分の生き血は飲んでもかい?」
「ええ。ヒミカは自分を傷付けることで、他人を傷付けずに生きてきたんですよ。―あなたが余計なことをするまでは」
 キシの眼に、鋭い光が宿った。
「どう…してですか? 先生」
 アタシの声はかすれていた。
 きっと泣きそうな顔をしているだろう。
「ヒミカはやっぱり鈍いんですね。アナタのことが、好きなんですよ」
「えっ…」
「最初から、言ってたじゃないですか? この事件はヒミカへの招待状であり、ボクへの挑発だと」
 確かにキシはそう言っていた。
 だけど本当にそうだとは、思っていなかった。
 アタシはすがるような気持ちで、サガミ先生を見た。
 先生はにっこり笑い、
「そうですね。恋に似ているかもしれません。ヒミカくんのことしか、考えられなくなっていますから」
 …と肯定した。
「ヒミカくんが自分の血を飲むところを見た時から、心奪われててね。それでもキミをどうこうしようとは考えていなかったんだ。ただ…」
 先生はキシに視線を向けた。
「キシくんと付き合いだしたことを知って、流石に冷静ではいられなくなった。だからせめて、特別な存在にはなれなくても、キミの為に何かしたかった」
「それが猟奇殺人事件の動機ですか? 何ともまあ、バカらしい理由ですね。ヒミカに料理を食べてもらいたいが為に、人殺しをするなんて」
「キシくんは簡単にヒミカくんに料理を食べてもらえる立場だから、そう言えるんだよ。だから僕はこんな方法しか、取れなかったんだ」
 先生は自分の両手を広げて見た。
「…でも流石は優等生のキシくんだね。警察なんか足元にも及ばない捜査力だ」
「そりゃ、ボク自身とヒミカの為なら。…ああ、ちなみに証拠は例の料理教室で見つけましたよ。殺された人間の残骸が、まだ残っていましたからね」
「ああ、それはしょうがない。人間って簡単には捨てられないからね」
 仕方無いというふうに、先生は苦笑いした。
「…それで、サガミ先生はどうするんですか?」
「何がだい?」
「これからですよ。警察に自首します? それともここから飛び降りて、死にますか?」
「キシッ!」
 冗談でもそういうことは言って欲しくなかった。
「そうだねぇ…。まあキミ達が僕を訪ねてきたところで、もう終わりだろうとは思ってたんだけどね」
 先生はポケットから、折りたたみ式のナイフを取り出し、刃を出した。
「このまま捕まったら僕はもう二度と、ヒミカくんと関われないだろうし、忘れられてしまうだろう」
「ええ、きっぱりすっきりあっさり忘れるでしょうね」

スポンサーサイト

FC2blog テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

【2017/07/04 08:29】 | ★マカシリーズ★
【タグ】 小説  カニバリズム  マカシリーズ  オカルト  ホラー  肉料理  
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック