【柘榴】・12

 …と考えてみれば、今はもう昼。
 残りの時間の潰し方を考えれば、普通に授業に出ることしか思い浮かばなかった。
 けれど心ここにあらずで過ごす。
 …授業料のムダだな。
 深く息を吐いた。
 授業が終わると、アタシは教室を出て、屋上へ来た。
 例の給水塔の上にハシゴを使ってよじ登り、沈みゆく太陽を見つめた。

ぞくっ…!

 背筋が痺れた。
 真っ赤な夕日が、血の色を思い出させる。
 そしてあの味も口の中によみがえる…!
 強烈なノドの渇きを感じる。
 ああ…ダメだ。
 アタシは懐から、ナイフを取り出した。
 銀色の薄い刃が、夕日の赤に照らされ、妖しく光り輝く。
 そのまま刃を手首に当てた。

―が。

「また、血を飲むつもり?」
 声をかけられ、ハッと我に返った。
 この声はキシじゃない!
 聞いたことのある、この声はっ…!


真実

 アタシはゆっくり振り返った。
 ハシゴを上って来たのは―サガミ、先生だった。
 別の意味で、ノドが渇いた。
「サガミ先生…。今、何て…」
「キミは自分の血しか、受け付けないのかい?」
 サガミ先生は穏やかだった。
 全く動じる様子が無いのが、今は怖い。
 アタシは立ち上がった。
「どうして…」
「キシくんと同じ理由だよ。キミが自分の血を飲むところを、見たんだ」
 笑顔で返答してくる。
「でも僕はキシくんのような独自のルートは持っていなくてね。情報不足なんだ。だから、失敗してしまったのかな?」
 そう言って肩を竦めて見せる。
 …もしかしなくても、連続猟奇殺人事件の犯人は…。
「サガミ先生、あなた…だったんですか?」
「うん。僕だよ」
 またあっさりと返した。
「どうして…!」
「それはボクから説明しましょうか?」
 キシがハシゴを上って来た。
「キシ!」
「お待たせしました、ヒミカ。ようやく証拠を押さえられましてね」
 キシは向かいのビルを見た。
「ヒミカ、アナタは少し、注意力が不足気味だったようですね」
「それは…!」
 否定のしようが無い。無かった。
 まさかキシだけではなく、サガミ先生にまで見られていたなんて…!
「でもサガミ先生が、ヒミカの儀式を見たのはここじゃないんですよ」
「えっ?」
 アタシは思わずキョロキョロと辺りを見回し…そして気付いた。
 例の…料理教室のある場所から、ここは丸見えだ。
「まあ距離がありますし、一応逆光のことを考えてたみたいですけど、ちょっと頭の働く人なら分かってしまう行為ですからね」
 角度とかで…バレてしまう可能性を考えていなかった。
「サガミ先生、あなたがヒミカの儀式を見たのは、例の料理教室ですね?」
「うん。そうだよ」
 キシの問い掛けにも、サガミ先生は笑顔で答える。

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テーマ : 怪談/ホラー
ジャンル : 小説・文学

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