【柘榴】・11

2017.07.04(08:16)

 ここで野菜を育てているのが、サガミ先生。
 恐る恐る扉を開けると、明るい照明の元には緑が一面に広がる。
「サガミ先生、いらっしゃいますか?」
 キシが声をかけると、奥からサガミ先生が出てきた。
「やあヒミカくんにキシくん。珍しい組み合わせだね。どうしたの?」
 柔らかい口調と物腰。
 サガミ先生は癒やし系の先生として人気だった。
 他が…個性が強過ぎるからなぁ。
「サガミ先生にこの間教えてもらった料理教室、とても良かったですよ」
「それは良かった。キシくんのご希望に叶ったかな?」
「ええ、それでですね…」
「あっ、もしかしてヒミカくんも興味を持った?」
 おおっと…。これは予想外。
 察しが早い人だ。
「えっええ」
「興味を持ってもらえて嬉しいよ。あいにくとチラシは今、手元に無くてね。まあ無くてもすぐ隣だから」
「隣?」
 サガミ先生が指差した方向には…隣のビルがある。
「あのビルの8階でやっているんだ。講師は僕の先輩夫婦。若い人向きの肉料理を教えてくれるんだ」
 …なるほど。接点はあったんだな。
 野菜料理担当という名前に、頭が回らなくなってた。
「ところでサガミ先生は、あそこの料理教室のメニューをご存知なんですか?」
「全部というワケではないけどね。ある程度なら知っているよ」
 キシの問い掛けにも、サガミ先生は穏やかに答える。
「そうですか…」
「うん。話は僕の方で先輩達に伝えておくから、いつでも行くと良いよ」
「はっはい」
 …やっぱり穏やかな人だなぁ。
 終始ニコニコ。
 でも、この温室の匂いは…。
「さっ、ヒミカ。用事は済みましたよ。行きましょう」
 キシがまたアタシの肩を抱いて歩き出す。
「あっ、サガミ先生! ありがとうございました!」
「はい」
 キシに強引に温室から引っ張り出された。
 嫉妬深いヤツだな、本当に。


専門学校 /結末へ向けて、動き出す真実

 ちなみにキシに儀式を見られたのは、この屋上の給水塔の上だった。
 この建物の一番上。だから気を抜いてしまっていた。
 ジッと見ていると、キシも見上げた。
「思い出の場所ですよねぇ…」
「忌まわしい思い出の、ね」
 トゲトゲしく言うも、キシは笑うだけ。
「…それで? 犯人は分かったの?」
「ええ、もちろん」
「うっそ?!」
 …実は半信半疑だった。
「まあ…大体は予想通りと言ったところでしょうか。後は証拠を見つけて、自白させるだけですね」
「…できるの?」
「ボク等の為ならば。それにきっと、犯人も見つけてほしいと思っていますよ」
 そう言ってキシはアタシを見て、にっこり微笑んだ。
「なのでボクは証拠を見つけてきます。ヒミカはここで待っていてくれませんか?」
「えっ! ここで? アタシも行くわよ!」
「ダメです、危険過ぎます。犯人はアナタの正体を知っているかもしれないんですよ?」
「それだったらキシだって…」
「ボクは独自のルートがありますから、大丈夫です」
 …確かにコイツ、そのルートでウチの血族のこと、知ったんだったな。
「だから大人しく、ここで待っててくださいね?」
「…早く帰って来る?」
「陽が沈むまでは、必ず」
 そう自身ありげにキシが言ったので、アタシは頷くしかできなかった。

スポンサーサイト

コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://hosimure.blog33.fc2.com/tb.php/1111-31b3b64e