Kissシリーズ・甘々8(2)

「まあそうですね。私の友人の何人かも、高校を卒業すると同時に結婚するコがいますから」
 しかも中には出来ちゃった婚までいるんだから、生き急いでいるように思える。
 でも私はそこまで熱くはなれない。
「んで? やっぱ結婚はイヤか? 同棲を先にしたいか?」
「別に同棲も結婚もイヤではないですよ。先生のことは好きですし」
「なら何でちゃんとした答えをくれないんだ?」
 私よりも年上のクセに、拗ねた表情をしてくるのだから、可愛い人だ。
「金に不自由させないし、浮気もしないぞ?」
「知ってますよ」
 教師という安定した職業をしているし、私に夢中なのは充分身に染みている。
「じゃあ何で焦らすんだ?」
「焦らされている先生が可愛いから、と言ったらどうします?」
「…振り回すなよ、大人を」
「冗談ですよ」
 本当は半分、本気だけど。
 最後の一冊を入れ終えた後、私は先生に寄りかかった。
 そして間近にある先生を見上げると、微笑んだ先生に肩越しでキスされる。
「んっ…」
 もう数え切れないほど重ねた唇は、触れ合うたびに胸が高鳴って熱くなる。
 離れた後、私は思い切って疑問を尋ねてみた。
「…先生は何で、私と結婚したいと思うんですか?」
「何でってそりゃあお前…好きな女と一緒になりたいって言うのは、男として当たり前の願望だろう?」
 相変わらずストレートな人。
「女だって、惚れた男と一緒にいたいと思うだろう?」
「まあ否定はしませんけどね。もうちょっと、先生が冷静になってくれればと思いまして」
「それはムリ。俺、お前に夢中だから」
 あっさり却下した先生は、再び私を強く抱き締める。
「高校を卒業したら、今より会えなくなるだろう? ましてや大学には、俺より良い男がいるかもしれないし」
「案外寂しがり屋なんですね、先生」
「お前が相手だと、そうなるみたいだ」
 嬉しいことを言ってくれる。
 高校を卒業した途端、先生と結婚すれば、周囲の人達に在学中から付き合っていたことがバレて、騒がれること分かっているんだろうか?
 そうなれば先生は今のままじゃ、いられないのに…。
 私は大学に逃げられるから良いけれど、先生はそうもいかない。
 だから私は躊躇ってしまうのだ。
「高校を卒業したら同棲、私が就職したら結婚、というのはどうですか?」
「何で籍を入れるのをイヤがる?」
「イヤではないですけど…先生、教え子に手を出したという評判はよろしくないと思いますよ?」
 だからせめて、高校を卒業して数年後に結婚をすれば、ある程度は誤魔化せる。
「本当のことだから否定はしないが。まあでもお前が気になるんだったら、そういう風にしようか? 俺はとにかく、お前と一緒にいたいだけだし」
 ワガママな人。
 でもこういうところも、良いと思ってしまう。
「ああ、でもさ。ようは学校関係者に、結婚したことを知られたくないんだよな?」
「そうですけど…」
「ならさ、籍は入れて、結婚式とか披露宴をお前が就職した後にすれば良いんじゃないか?」
「それは…」
 確かにそれなら、二人の関係を表沙汰にしなくても済む。
「なっ? 良い考えだろう?」
「…先生、そんなに私と結婚したいんですか?」
「当たり前だろう? 愛してるんだから」
 至極真面目な表情で言われると……断ることができなくなる。
「…じゃあ、それで話を進めましょうか」
「おっ。プロポーズを受け入れてくれるのか?」
「はい。私も先生のこと、愛していますから」
 改めて先生と真正面から向き直って、今度は私から背伸びをしてキスをする。
「そりゃ嬉しいな」
「ですがとりあえず、大学入試が終わるまでは保留で」
「またかよ…。ああ、でも分かっているさ。じゃ、試験が終わったら、お前さんとこのご両親に挨拶に行かなきゃな」
 嬉しそうに笑う先生を見て、私も笑みを浮かべる。
 けれど心の中では、絶対に大学に受かろうと決意を固めた。
 これで落ちたりしたら、絶対に両親に結婚を反対されるから。
 前途は洋々とは言いにくいけれど、とりあえず先生との未来は明るいことが決定した。

<終わり>

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