【柘榴】・7

2017.06.19(06:17)

 キシは被害者の調査書を手に取った。
「…共通点と言えば、全員がベジタリアンであったことと、若いこと…でしょうか」
「ベジタリアンって言うか…お肉が食べられないって人もいたみたい」
 キシの背後に回り、アタシは被害者の写真を指差した。
「この女性はアレルギーでお肉全般が食べられなかったって。他のはまあ好みもあるんだろうけど、ほとんど肉が食べられなくて、野菜が主食だったって」
「まあ動物もそうですが、雑食よりはベジタリアンの肉の方が美味しいと評判ですからね」
 キシは含み笑いで、アタシを見上げた。
「…何が言いたい?」
「いえ、別に。それにしても…六歳の男の子まで、ですか。少し胸が痛みますね」
「ああ…」
 六歳の肉アレルギーの少年までも、犠牲者だ。
 他の人も十代や、年上でも二十代前半だ。
「…肉料理で美味しいと言われているのが、ベジタリアンで若いものが良いと言われていますが…。まさにそれをなぞっていますね」
 アタシは思わず、キシを後ろから抱き締めた。
 キシは何も言わず、資料から目を離さずに、アタシの腕をさすってくれた。
「アナタを誘き出すにしても、筋を通し過ぎですね。気に入らないやり方です」
「アタシの正体が…バレてるの?」
「もしくは最初から知っているか、ですね。しかも事件はくしくもアナタとボクが付き合いだした後から始まっています」
 そう言ってキシは資料を握り締めた。
「アナタへの招待と、ボクへの挑発ってところでしょうか?」
「アンタも犯人の視野に入っていると?」
「この料理を見れば、そう思いますよ。全部、ボクがヒミカに作ろうと思っていたものばかりですから」
 キシは少しイラ立っているようだった。
「いいじゃないですか。受けて立ちましょうよ。犯人の挑戦に」
「キシ…」
「犯人のアナタへの気持ちもムカツキますし、ボクへの挑発も腹が立ちます。二度と立ち上がれないよう、叩きのめさなければ」
 …アタシはもしかして、相談する相手を間違えた?
 しかしキシはそんなアタシの思いをよそに、一人燃えていた。
「さて…では行きますか。ボクらの学校に」


専門学校

「…徹夜で登校はキッツイわね」
「頑張ってくださいよ。犯人を早く逮捕したいでしょう?」
 それを言われると…。
 眠い目を擦りながら、アタシとキシは学校へ来た。
 街中にある7階建ての建物が、アタシ達の学校だった。
 どの階からも、美味しそうな匂いがする。
 朝食はここに来る前に、キシが作ってくれた。
 キシの得意な洋食料理、とても美味しかった。
「とりあえず、職員室から回りますか。ボクに料理教室を教えた先生を教えますから」
「何人ぐらいいるの?」
「5人ですよ。肉料理に詳しい人を尋ねましたから」
 …何だかイヤな尋ね方だ。
 職員室は3階にある。
 まるごとフロア全てが職員室。それに事務室も含まれている。
「まずはボクに肉料理を教えてくれるカミナ先生」
「カミナ先生ならアタシも知ってるわ。和食の方でも肉料理を教えてくれる先生だもん」
「ええ。女性ならではの繊細さと、彼女のアイディアから生み出される数々の肉料理はとても評判が良いですからね。今も有名所から声がかかっているぐらいですから」
 まだ30代になったばかりのカミナ先生は、明るくてハキハキしている。
 決して怒鳴ったりせず、ちゃんと生徒のペースで進んでくれる良い先生だ。
 お姉さんタイプで、アタシも懐いているけど…。
「アラ、二人とも。おはよう!」
「っ!?」

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