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ヒミカの秘密

 アタシは唇を噛んで、顔を背けた。

 一ヶ月前。
 専門学校の屋上で、アタシは一人夕暮れを見つめていた。
 陽が落ちる景色を、アタシは一人で見るのが好きだった。
 そして落ちるギリギリのところで、いつもする儀式があった。
 アタシの血族の者は、夜の眷属と言っていい。
 陽が落ちると、眠らせていた血が騒ぎ出す。
 それを抑える為に…。
 アタシはいつも服に小型のナイフを隠し持っていた。
 切れ味の良いナイフは、切った痛みを感じさせない。
 けれど血をたくさん出してくれる。
 マカに高校卒業祝いに貰った。
 アタシはそのナイフで、自分の腕を切り付ける。
 そしてあふれ出した血を飲み、理性を保つ。
 もし見つかっても、うっかり傷付いてしまったと言えば良いだけ。
 そして舐めていたら…気付けなかった。
 キシが見ていたことに…。
 とっさに言い訳をすることも出来ず、キシは笑顔で何も言わずに受け入れた。
 アタシが人の血肉を摂取する体であることを―。
 アタシもうろたえてでも、弁解すべきだったのに…。
 その後、キシは恐るべき情報網を使って、血族のことを調べ上げた。
 …その時点で、マカに言うべきだった。
 でもアタシは何も言えず、そのままキシと…。
 恋人の関係になった。
 それで気が済むならと、思ってしまった自分が憎い。

「…連続猟奇事件の首謀者はアンタだったのね」
「ちっ違いますよ!」
「じゃあこの料理は…」
「ボクではありませんよ!」
 ………え?
「じゃあじゃあ! 何でコレは…」
 …と、気付いた。
 ……フツーの動物の匂い、に。
 ……………。
 アタシはキシの顔を見て、大声で言った!
「紛らわしい上に、めんどくさい!」


誤解後…

「自分の恋人を疑うなんて…。ヒミカ、ボクじゃなかったら許していませんよ」
「今でも十分に疑っているわよ。てーか何で公園でフルコース?」
「たまには変わった趣向も良いかと思いまして。せっかくあなたの為に、肉料理を学んでいたのに」
 ………そのせいで連絡が無かったのか。
「アンタの行動自体が不審過ぎるのよ」
「全て愛が成せるワザですよ」
 カンベンしてくれ…。
 翌朝。一晩かけて誤解を解いたケド、何故か納得出来ない。
 アタシのマンションのリビングで、キシは頬を冷やしている。
 …コレはさすがに悪いかな?
 聞けばキシは、料理教室に通っていたらしい。
 アタシが血肉を好むことを知って、世界の肉料理を学んでいた、と。
 そして昨夜、野菜しか食べずに育った動物の肉料理を作って、アタシにご馳走しようと…。
 フタを開ければ、何とも情けない真実。
 でも昨夜、マカに連絡を取り、確認してもらったところ。
 料理教室に通っていたことも真実。
 そして事件の時、料理教室にずっといたのでアリバイも成立。
 ………マカが深夜に関わらず、大笑いしてたっけ。
 まあでも一般の人間であるキシに、血族のことを知られたのはさすがにマズイらしい。
 けれどその優れた情報網を持っていることや、アタシや同属への理解があることから、将来、アタシと結婚するならば、このままで良いと言われた。
 …コレって自業自得?

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【2017/06/19 05:49】 | ★マカシリーズ★
【タグ】 肉料理  カニバリズム  マカシリーズ  小説  オカルト  ホラー  
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