店を出て、細い路地を歩いて、表の世に出た。
外はすっかり夜だな。
さて、マカにはああ言ったが、とりあえずは夕食を食べたい。
焼肉でも行くかな。
近くに学生食べ放題の店があったハズ。
学生証は持ってきたと思ったけど…。
カバンの中をゴソゴソといじっていると、電器屋の前を通った。
ちょうど夕方のニュースを流している。
その内容を耳にして、アタシは立ち止まった。
…マカとさっきまで話していた事件のことをやっている。
今日、新たな犠牲者が出た、と。
「ふぅ…。…急いだ方が良いかな?」
それでもカバンから学生証を見つけると、足は焼肉屋に向かう。
栄養補給。
我が血族には、無くてはならない。
人成らざる力を使うモノだから。
例え摂取するものが普通の人間と違ったとしても、今は補給しなければ戦えない。
学生証を見て、アタシは苦笑した。
ヒミカ。アタシの名前だ。
専門学校1年生。十八歳。
本来ならば十代最後の青春を謳歌するはずだが、この身に流れる血に縛られ続けている。
「まっ、イヤではないけどね」
事件 アタシは食べ放題の店で、肉を味わっていた。
けれど…心なしか、人が少ない。
空席が目立つなんて、この店じゃありえない光景だ。
まあ理由は分かっている。
店にあるテレビからも、ニュースが頻繁に流れていた。
店員達も険しい顔で見ている。
このニュースを見た後、焼肉を食べに来るものなんてアタシぐらい神経が太くないとダメだ。
そう思いながら、ウーロン茶を飲んだ。
一人で食べる焼肉も悪くない。
元々一人でいることが好きだから。
だから…付け入る隙を与えてしまったんだろうか?
事件は今から三週間前に起こり始めた。
20代のOLの女の人が、死体で見つかった。
しかもその死体には、失われている部分があったと言う。
ところがその後…。
公園のテーブルとイスのセットが置かれているところに、料理が並べられていた。
その女性の肉から作られた肉料理の数々…。
報道規制があるとは言え、どこからか情報は流れるものだ。
その後、若い者達が犠牲となり、死体と料理の数はすでに5件以上にもなっていた。
おかげで肉市場は赤字炎上。
…まっ、その分、アタシが良い思いをしているってのも、気分が引ける。
猟奇殺人。
この事件が起こり、マカはすぐにアタシに目を付けた。
それと言うのも、アタシの栄養が血肉だからだ。
…動物、人間問わず。
だからマカはアタシに声をかけた。
……まあ半分は心当たりを聞く為に、だろうけど。
何でもマカの親友の子が怖がっている為、マカは動いているんだそうで。
振り回されているって気もしなくもないケド。
でもそういう存在がいるのは、いい。
アタシみたいに、無関心でいるよりは。
普通の人間らしいから。
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